第482話 伝わりかた

過日、肉の勉強会(品評会?)みたいなものが開催され


世界各国の様々な種の牛肉を食べる機会があった


その中の1つに、スコットランドの「ハイランド牛」という種が用意されていて


この牛の赤身がもう、美味くて!


事務所に戻ってからも若い奴らに「やっぱりステーキは脂身より赤身やな!」と吹聴しまくっていた


ちなみにこのハイランド牛、食べてから会場スクリーンに画像が映し出されたのだが


食べたことを悔やむほどの可愛さであった


さてそれから3週ほど過ぎた木曜に、客3名を連れて石垣の某有名ステーキハウスに赴いた


ここで食べるのは1ヶ月ぶりだ

この店は石垣牛のA4以上しか出さない


A4とA5のフィレを食べ比べてみる


我々庶民に違いなどわからんが、超絶に美味いことは確かだ


オーナーが挨拶に来られ、ワインまで差し入れてくださった


「ちょっとオーナー!こんな高いワイン戴いちゃって良いの?!」


「いえいえ、いつも有難う御座います」


その他、様々な部位も頂き3人の客も大満足、最高のディナーになった


客が〆の創作御飯に舌鼓を打っている間に、会計を済ませに行く


奥まったレジに向かうとオーナーが


「いや、本当に、またお越し頂けるとは思いませんでしたので、感激です」


「またまたぁ〜そんな大袈裟な笑」


「いえ、我々が至らぬばかりに・・・」


「いやいや!いつも以上に最高の肉、最高のワインまで戴いてるのに!何を仰ってるのですか〜!」


「じゃあ、また今まで通りお越し頂けるのでしょうか?」


「あ笑 ちょっと久々過ぎました?すみませ〜ん石垣遠征が中々、入らなかったもので御免なさい」


「いえいえ!お詫びするのは私どもでして、お気に召さない料理を提供しましたこと、深く反省しまして、今後も・・・」


「オーナー?何言ってるの?」


「いえ、ですから前回、当方が大変失礼なことを・・・」


「ちょっとオーナー、さっきからどうも話が噛み合わないのですけど・・・なんか私、言いましたか?」


噛み合わない理由を解明するのに、肉の勉強会の日まで遡ることになった


俺は事務所に戻り、ステーキは脂身より赤身だと言いまくった


その時、U部長が「(俺の好きな)石垣牛よりもですか?」と聞いてきたから


「赤身はええ勝負ちゃうかなぁ?」


「そんなにですか!!」


という、他愛もないやりとりがあった


その後、U部長が漁協で同業の船頭Aとの立ち話で


「やったー(お前ら)最近、石垣回っとる?」と聞かれ


「行ってないですね〜。あ、そういえばウチのT、この前石垣牛より美味い肉喰った!って興奮してました」


「石垣牛より?Tくんが?それは・・・◯◯のステーキハウスのオーナーが聞いたら火が付くな笑」


という、これまた他愛もない会話があったらしい


これを船頭Aが、石垣のとあるホテルの支配人(俺も普段お世話になってる方)に


「Tくん、石垣牛はもう食べないんだってさ〜」と言ったため


“そういえばTくん、1ヶ月ほど石垣回ってきてないが・・・もしや肉と関係あったか?”と勘ぐった支配人が


ステーキハウスのオーナーに「ちょっと伺いますが、(前回)Tくんと何かありましたか?」と聞いてしまった


オーナー「えっ、どうしてですか?」


支配人「う〜んそれが、最近Tくん石垣来ないし、どうやらもう、2度と石垣牛は食べたくないって言ってるらしくて・・・」


という流れを受けての、久々の来店だったらしい


噂が伝わるプロセスの怖さを知った・・・

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