第436話 金の話ばかりする男
神戸は三ノ宮にて。
生田神社から、ファッションに無頓着そうな30代のカップルが出てきた
「こういうとこに誰が、金を出すかやな」
神社の壁や柱に刻まれた、協賛者の名前を指差しながら男が言う
追随する、大人しそうな女は黙っている
「こんな鳥居なんかも、ここらの会社の奴らが(と周囲のホテルやビルを指差し)金、出しとるんやで」
女はそれを目で追う
「こういう警察車両も」
鳥居のすぐ右手にある、交番の前に停められたスカイラインを指差しながら、男は続ける
「どうせ、どっかから寄付された金で買っとるんやろうし」
2人はそのまま、東門街という通りに向かう
俺もたまたま、その後ろを歩いている
交番の向かいにゲーセンがあり、奥で若者数人がクレーンゲームに興じている
「あんなものに金注ぎ込んで、ムダ金使ってますよ、という」
蔑むような笑みを浮かべてゲーセン内を指差しながら、男の評論は続く
ふと、それまで黙っていた女が口を開く
「ホンマよう喋るね、貯金ゼロやのに」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます