第434話 アホ
ショッピングモールの長い昇りエスカレーターで
俺の2段前に、乳繰り合う20代のカップルが乗っている
前が女、後ろが男だ
先ほどから男が、前の女の腕や服を引っ張っている
「もうーあーぶーなーいー」
と言いながらも、やめてよーとはならない
アホな男でも加減は知っとるだろうが・・・いちおう俺も、身構えて様子見している
ただあまりにもしつこく男が引っ張るものだから、女もようやく
「ほらー後ろに人がいるからー」と制しだす
えへへ、えへへとアホ顔で後ろに振り向き、俺を確認して少しはシャンとしたっぽい男だったが
じっとしていたのも束の間、また女にちょっかいを出し始める
振り向いた女が「もう、倒れたらホントに危ないから」と言うと
男は両手を拡げて「そら来い!」みたいな構えをする
こうなると流石に自分の彼氏のアホさ加減が恥ずかしくなってきたのか、女はそれを無視して無言で前を向く
スカされたのが恥ずかしかったのか男は、ちょっかいをやめ真顔になると
ズボンの尻ポケットから格好つけてシャキーンとスマホを引っ張り出そうとしたのだろう
しかしその右手が、エスカレーターの右手摺りに当たる
「あっ?!」
弾みで飛んだスマホが、昇りエスカレーターと降りエスカレーターの間のステンレスの坂を、急流滑りのようにザーッと落ちて行く
思わず俺も振り向いてスマホの行方を追う
すでに結構な加速度が付いていたスマホは途中、鉄の出っ張りにカーン!と当たり
2段ロケットのブースター切り離しの如く、大きいほうと小さいほうに分離して(折れて)、また落ちていった
女が小声で男に諭す
"もう~だから危ないって・・・私の代わりに落ちてくれたんだよ~"
"ヤバいどうし・・・は?代わりってなに?"
"もういいから~あとで拾っといでよぉ~"
"代わりってなに?なんか俺が悪いみたいじゃん?!もうぜ~ったい拾わねえ!!"
拾いにいけ・・・(´Д` )
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます