第433話 1分 が5分

谷やんと港に出かけようとして忘れ物を思い出し


「あっエレベーター止めといて!」と言いながら走って事務所に戻り、ホールに戻ってくると


開けて待っていてくれたようだ、「すまんすまん!」と飛び乗る


ところが中にはスーツ姿の男性が5名乗っているが、谷やんは居ない。


"このシチュエーション、前にもあったな・・・"

https://kakuyomu.jp/works/16816927860625905616/episodes/16816927860816117631



以前の場合は、谷やんが立駐のエレベーターに乗ろうとするのを見かけたので


「谷やん待って~♪待ってぇなぁ~♪」と歌いながら乗り込むと既に大勢乗っていて


肝心の谷やんは車を停めた階で降りず、他人を装ったまま上がって行ったという。



まあいいや。


持っている竿が皆さんに当たらぬよう、体を小さくしながら扉側に向きを変える


・・・あれ?


下ると思っていたエレベーターが上がっていく


"しまった・・・"


エレベーターは2基あるので、谷やんはもう片方に乗り込んで行ってしまったのだな


途中階で下りたかったが、ボタンの前に男性が立っているのでそのまま動けずにいた


俺は3階から乗ったが、エレベーターは最上階の6階で止まる


皆さんの邪魔にならぬよう竿を抱えたまま先に降り、脇に逸れる


下りた正面が受付となっており、5名の男性はその横にある従業員入り口から中に入っていく


と、背後で気の早いエレベーターの扉が閉まる


あっ!と慌ててボタンを押したが、無情にも階表示が5、4・・・と下がっていく


仕方ない、待つしかない・・・


改めて受付をそっと振り返ってみる


このビルの最上階に何の会社が入っているかなんて、深く気にもしていなかったが


どうやら経営コンサル会社のようだ・・・てかこんな会社、入ってたっけ?


洗練されたデザインの受付には、スーツ姿の女性が3名、静かに佇み


左右に設置されたソファーでは、やり手そうなビジネスマンが数名、モバイルを開いている


そしてエレベーター前には、黒のラッシュガード上下にオレンジのパーカーを羽織り、底物用の釣り竿を3本持った俺が立っている


突然、パーカーのポケットに入れたスマホから着メロが鳴る


・・・が、焦ってなかなか取り出せない


大物釣りに出発~♪仲間の船でパヤオへ(パヤオパヤオ)♪

天気良好テンションMAX3分後船酔い~♪

高級竿とリールと1万超えのルアーで~♪

狙え!あの憧れのマギーガーラかマグ~ロ♪

マンビカ~~♪マンビカ~~♪マンビカ~~♪マンビカばっかり♪♪(※)


「・・・はい。」


「Tさんどこ行ったんすかぁ?まだ事務所っすかぁ??」


エレベーター早く来て・・・


※「ちゃー釣りばっかり」/きいやま商店

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