第361話 元レーサー??

普段使いのスーパーの、とても丁寧なレジのおばちゃん、石原さん


お年の頃は60前後か


例えばお惣菜とか汁物とか、どんなに列ができて忙しくても


ちゃんとビニール袋に個別に包んでくれて、なおかつスピーディー


他のレジではそんなことまでしてくれない


「はいすみません袋3円ありがとうございますねー」


「はいこれはこうしてね、こう入れましてね、はいこちらは3点いただきましてねー」


「これと、こちらと、ではお箸もつけましてねー」


「はいいつもありがとうございますー」


喋りながらレジ打ちする一連の流れがなんとも、川の流れのようで心地良い



先日、午後4時という、普段はありえないほど早い時間にスーパーに立ち寄った


買い物カゴに商品を詰め、さあレジに並ぼうとして石原さんを発見


あっ、こんな時間から入ってらっしゃるんだ・・・


当然、石原さんのレジに並ぶ


俺の番がきて、レジ台にカゴを置く


・・・と


「はいすみませんふくろありがとうございましてこれとこれとこうしていただきましてねこれとこちらとはいはいいつもありがとうございます」


はっや!早や過ぎん?!何言うてるか分からん!!


普段の1.5倍速くらいのスピードで一瞬にしてレジが終わる


あ~、普段立ち寄る19時前後は、3時間を経て疲れた状態のおばちゃんのクオリティーだったのか?


真の実力がこれほどとは。


凄すぎて・・・ん?


レジを通ったカゴを棚に置いて気付いた


いつもの、ビニール袋に入れてくれたり箸を入れてくれたり、さりげない気配りが抜けてる・・・


背後で「お箸くださいよ~」と聞こえる


「あっごめんなさいね右脳がまだ起きてなくて」


石原さんが詫びている


あ、右脳が起きてないんだ・・・笑


スーパーを出たところで、駐車場用のカートを整理していた最古参のおばちゃん・比嘉さん(68)に出くわす


「あっ比嘉さんはいさい!あのさ、斯々然々・・・石原さんってこの時間のレジめっちゃ早いんだね~びっくり」


「ああ。でも早すぎてよく釣り銭落としてるよ。ひっちー (しょっちゅう)店長にワジラれてる(怒られてる)」


「え。なんかイメージが・・・笑」


「レースタイヤみたいなもんだよ。1、2周はツルツル滑るけど、3周目あたりからタイヤ表面のゴムが剥けてさ、溶けて路面に引っ付いてグリップ力が増すでしょう?あれだよ」


あ~なるほど・・・


石原さんは後からグリップ力=正確さとか気配りが付いてくるってことね!



・・・比嘉さんなにその知識(゜д゜)?!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る