第335話 得意分野

「聞いてるのかお前は!」


先ほどから森くん(23)を立たせ、説教するU部長


まあ怒られるのも尤(もっと)もだ、注意力散漫、同じ間違いを繰り返しているのだから。


U部長の説教は続く


俺は打合せテーブルで金城くん・宮里くんと企画中だったが


ドスン!


「おいっ森?!」


「何?何?どうした??」我々も立ち上がって近寄っていく


部長の脇で倒れ込んだ森くんが、ノロノロと体を起こす


「大丈夫か?!」


「はい・・・」


「おいっ!起きるな!寝てろ!!」


貧血だろうか


「頭、打ってないか?」


「大丈夫みたいやな」


U部長の説教に耐えきれず、気が遠退いたか


「応接に連れていって寝かせてやれ」


30分ほど寝かせて安静にさせておくことにした


「すみません・・・俺が怒り過ぎましたかね・・・」U部長が気を揉んでいるので


「いやいや、たかだか数分だし、いつも怒っているわけじゃないんだし。あいつの体調が良くなかったんだろう」


そこに坂下くん(29)が戻ってきた


「何かあったんですか?」


U部長に怒られていた森くんが倒れた、と状況を説明する


「怒られてるのに、聞いてる素振りもなくボーっとしてるから余計、部長に火が付いたんだよ」


「あ・・・ブラックの矢だ・・・」


ボソッと言った坂下くんが、バツ悪そうに下を向く


「なに?ブラックって?」


「すみません、あの・・・あいつ徹夜明けかも・・・」


「えっ?!」


聞けば


谷やん(34)・坂下くん・森くんが、とあるネトゲ(オンラインゲーム)でこっそりチームを組んでいて


谷がブラックエンジェル、通称B.A

坂下がレッドエンジェル、通称R.A

森がプリンプリン、通称P.P


そう名前を付けているそうだ


「今朝4時過ぎにブラッ・・・谷さんが『◯◯の矢、1,000本ほど集めといて。俺もう寝るわ』って通信が来て、僕も眠たかったからP.Pにお願いしたら『ではちょっと渓谷(収集場?)行ってきます』って引き受けてくれて」


俺とU部長と坂下くんで、今寝かせたところの応接の森くんを見に行ってみる


既にガーガーいびきをかいて寝落ちしていた


その後


業務に支障が出るほど夜更かししないことを、3人のみならず全員に固く言い含めた


余談だが、谷やん・・・ブラックの弓矢のスキルは相当高いらしく


城攻め?をする際には、ブラックが参戦すると他のユーザーから


「リアルホークアイ※が来た!!」


「みんな!持ってる矢を全てB.Aに渡せ!!」


となるらしい


しかしブラックには普段、プリンプリンという矢集めのプロ (しもべ)が存在することを、誰も知らないようだ


※ホークアイ・・・アベンジャーズの弓矢の使い手

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