第227話 着地

先日、車で信号待ちをしていると


自転車で横断する男子高校生のペダルが、急に不調になったようで


道路の真ん中で急遽、降りてチェーンをチェックし始めた


おいおい大丈夫かぁそんなところで・・・

信号変わるまでに間に合う?


ちょうど俺が先頭だったので、もしこの子が立ち往生したら発進は少し様子をみよう・・・


そう注視していたが、ものの数秒で不具合は直ったようだ


再び自転車にまたがり、横断の続きを始めたのだが


道路の真ん中で、一瞬でも注目を浴びたのが恥ずかしかったのだろう


渡り始めはハンドルを持っていたのに、余裕を見せようとしたのか?両手放しで運転をはじめた


歩道側の信号は赤点滅を始めている


そして彼は、渡り終える寸前で段差につかまり、絵に描いたように派手に転倒した


「あ~ぁ何してるんだよ・・・」


ちょうど信号が青に変わり車をスタートさせたので、彼の表情は判らなかったが


照れ隠しで格好つけるとロクな事がないよ?という典型だったな


しかしこれが、上手くいったパターンもある(ように見えた)


あるとき、神戸はJR三宮駅のホームから下りエスカレーターに乗ろうとしていると


とても急いでいたのだろう、左からスカートを履いた若い女性が、ガッと割り込んできて


ハイヒールなのに、ダンダンダンダン!とエスカレーターを走り降りて行く


3階から一気に1階まで降りるくらい距離のあるエスカレーターだ


"おいおい危ないぞお嬢さん・・・"

周囲の誰もがそう思ったであろう瞬間


バランスを崩したかと思うと彼女は、つんのめって前に両腕を伸ばした状態で


ドゴン!ドゴン!ドゴン!


縦横に回転しながら跳ねながら落ちていく


わわわ!やってもうた!


上り・下りエスカレーターに乗っている全員が「ああっ?!」という口のまま彼女を目で追う


彼女の前には誰もおらず、止まる術がない


ドゴン!ドゴン!ドゴン!

最下段まで落ちてゆく


ステップに巻き込まれでもしたら大惨事だ!


しかし次の瞬間、彼女は


伸身コールマンからツカハラでフィニッシュ!・・・といった感じでピタッと下の昇降口に立った


みな唖然


そしてそのまま歩みを止めるでもなく、平然と改札口へ消えていった


あまりにも鮮やかな着地に、もし手札を持っていれば全員が10点満点を掲げただろう

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