第187話 追跡

大阪の北新地で飲み、店を出た時には午前1時


終電も終わり、宿泊は神戸の三ノ宮で取っていたため、タクシーに乗る


金曜夜なので、まあまあ列が出来ている


30分位待って、ようやく乗車


三ノ宮のホテル名を告げ、近くまでくればまた道を言うから、と運転手に伝える


結構飲んだのと、連日の接待でくたびれていたこともあり、すぐ眠りに落ちる


・・・どの位眠っていたのか


「お客さん、三ノ宮着きましたよ」と運転手に起こされた


「ん?」寝ぼけながらスマホを見る


午前2時40分だ


ホテルまでの詳細を伝え、ようやく到着


支払いを済ませ、領収書を受け取り、降りる


疲れた・・・ 

ホテルに入り、宿泊階まで上がり、部屋の前に到着


財布からカードキーを出して開錠し、部屋に入る


テーブルにカードキー、財布を置き、スマホを出し


・・・あれ?スマホは?どこいった?


鞄を持たぬ主義なので入れる場所はスーツしかない


スーツを脱ぎ、ポケットというポケットをひっくり返すが、無い


うっわマジか?

どこで落とした?


再度スーツを着て、戻ってきた道順を一階ロビーまでたどりながら、探す


ない・・・


外に出る


タクシーを降りた辺りまで行き、外灯に照らされた裏路地のアスファルトをくまなく探すが


ない・・・


いやマジか?


もう一度ホテルに戻り、部屋までの道順をたどる


部屋に入って床をくまなく探すが、


ない・・・


ちょっと待て・・・

記憶をたどる


タクシーで眠っていて、運転手に起こされて、そのとき時間を確認したよな・・・スマホで・・・


・・・ん?


あっ!

タクシーに置き忘れた?!


ちょっとまてちょっとまて

落ち着け・・・


財布から領収書を出す

タクシー会社と電話番号はわかるぞ


しかし本当にタクシーに置き忘れたのか?


・・・あっ!そうや!!


脳裏に閃いた

キャリーケースからiPadを出し、開く


俺の普段持ちスマホは2台あって、どちらもiPhoneだ


そして2台とも「iPhoneを探す」設定にしている


iPadからiCloudを開く


iPhoneでない方も、何かしらクラウドサービスを利用されていると思うが


要はデータ管理する、ネット上のサーバーのようなものだ


iPhone・iPadの場合は iCloudというネーミングだ


そこから、いま紛失して焦っているiPhone1号機を探してみる


地図が出た


俺のスマホは現在・・・

ん?凄いスピードで画面右に動いている


あ、そうか

阪神高速3号線を東に移動している最中なのだ


つまり、タクシーだ

やっぱりそうか!


今日はiPhone2号機を忘れて持ってきていないので、部屋の電話から領収書に書いてある番号に掛ける


時刻は午前3時20分

呼び出すが、誰も出ない


数回、かけ直すが誰も出てくれない

夜中だから仕方ないか・・・?


まあ、タクシーに置き忘れた事は判ったのだ、とりあえず朝、電話してみよう


シャワーを浴びたあと4時に寝ついたが、スマホが気になり結局7時に目が覚めた


目覚めてすぐiPadを開き、 iCloudを見る


俺のスマホは、大阪府堺市の新金岡というところで停止していた


ちなみにこの「iPhoneを探す」は、探される側のスマホの電池が無くなったら機能しない筈だ


なので悠長なことも言ってられない

早速タクシー会社に電話する


「はい、◯◯タクシーです」

電話が繋がった!よしっ!


昨夜の一部始終を説明する


「ああ、新金岡はウチの車庫兼配送センターなんですわ。ちょっと対象のタクシーに確認取りますので、折り返しお電話します」


ホテルの番号を告げ、部屋で待つ

そうだ、今のうちに・・・


神戸空港発・那覇行きの8時15分を取っていたのだ


iPadから午後の便に変更をかける


と、部屋の電話が鳴る

タクシー会社からだった


「お客様の携帯電話が見つかりました。つきましては、お手数ですが新金岡の配送センターまでお越し頂けないでしょうか?」


仕方がない。自分が悪いのだ。今から向かうと告げ、身支度を済ませてチェックアウトする


どうせまた三ノ宮まで戻ってくるので、駅のロッカーにキャリーケースを預けてJRに乗る


・・・ほぼ1時間掛け、新金岡に着いた


タクシー会社までは歩いていけそうだ


9時半に到着した

2階の事務所に向かう


扉を開け、名前を告げると


奥の紛失カウンターからトレーに乗せられて、袋に入ったスマホと、もう一つの袋は・・・何だ?


「こちらでお間違いありませんか?」

そう言って、対応してくれた男性が袋からスマホを出す


「間違いありません、あぁ助かりました」

安堵の表情で答える


「ちょうど助手席の下に転がってまして。無事ご返却できて何よりです。では、こちらの用紙に必要事項をご記入ください。あと、運転免許証などお持ちでしょうか?」


免許証を渡し、受け取り書に記入していく


「あと、これは・・・お客様のお忘れ物ではありませんよね?」


受付の男性は、トレーに乗っているもう一つの袋を指差す


「何ですそれ?」


紺色?黒?の薄手のものを無造作に丸めたような物体


「あ、いえ、違いますよねぇ?」


「何ですか?それは」


「いえ、同じく助手席の下にあったのですが・・・おそらく違います、何でもありません」


「はあ。まあ、スマホだけなので。」


「ですよね、ご確認ありがとうございました」


無事にiPhoneも返ってきた


今からまた1時間掛けて三ノ宮に戻るのは億劫だが、仕方ない


そんな事を考えながら階段を下りる途中、ようやく気づいた


さっきのあれ、パンストや


あーだから確認をためらったのか


どう見ても俺が、酔ってタクシーの中でパンスト脱ぐような性癖があるとは思えんものな


いや・・・


それは偏見や、履くかもわからんぞ?


2階に戻って「そのディオールの高いやつ!返して!」言うたろかな?


はぁ・・・はよ帰ろ。

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