第186話 疑惑の裏付け

ある大きな問題が発覚したとして


下っ端担当者は「上から口頭で指示を受けた」と言い


上司は「そんな重要な決定を口頭で指示など、ありえない」とうそぶく


政治やドラマの世界でよくあるパターンだ



先日、とあるラウンジで


女の子「◯◯さんが、金額高いんじゃないかって仰ってますが」


ママ「これほら、前回のワイン入ってるから」


以下、続く


「え、あれはママが私からのサービスだからと」


「はぁ?そんなこと言う訳ないじゃないあんな高い物」


「いや、そう言っといてとママが私に」


「言う訳ないでしょそんなこと」


「え、でも確かにママが私にこれはサービ・・・」


「言う訳ないじゃん!!」


「・・・わかりました。」


彼女が不満顔で去ったのち、ママがカウンターの俺の前に来て「言う訳ないじゃん、ねえ」と言う


俺「言ってたよ」


「・・・え?言ってない言ってない」


「前回俺の目の前で、私からの誕生日プレゼントって言っといてって、言ってたよ」


「ちょっとTさんまで!わたし言ってないってそんなこと!」


「いや、ママ相当飲んでたやん、だからあの子も(サービスで出したことを)書いといてくださいねって念押ししてたやん」


「ええっ?そんなの書いてないよぉ?!」


ママはカウンターのそこらじゅうのメモや紙を見たり探したりするが


「無いよ?・・・ほら無いじゃん!」


「いや、俺も書いたか書いてないかまで、いちいち見てないから」


「わたしそんな大事なこと言ってたら、書いてるよ絶対!」


「そうか、うん、まあ俺もそこまで見てないから」


人は得てして自分を正当化するが・・・


この話も、言った言わないで有耶無耶に済んでしまうのだろう


だが一旦崩れた人間関係は、そう簡単には戻らない


俺が自分の机の引き出しを引いて中を見ながら


「いつの間にかペンだらけやなぁ・・・」と、誰に言うでもなく呟いていると


どれどれ?と皆が集まってきた


「あっこれ俺のペンじゃないすか」


「私のカッターだ・・・」


「なんでTさんハサミ3つもあるんです?」


いやいや別に借りパクした訳じゃないよ?


ちょっと貸してなーって言ったし、そのあと忘れてただけで・・・


「俺はこれと、これと・・・これも俺のですね、貰っていきます」


「じゃあすみません、カッターと、たぶんそのピンクのハサミも返してもらいますねー」


「その計算機ってTさんの?」


「もう少し引き出し整理した方が良いのでは・・・」


俺は犬か。

好きなもの小屋に貯める犬か。


俺が悪いのか。

悪いですね。


でも人間関係は崩れないぞ

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