第102話 撮影

3年前の話


成人式を迎える下の娘の、アルバム撮影に付いて行った時のこと


その日はヘアメイク→着付け→撮影の流れで、ウチの娘は予約の3番目


全体で7人の予約があるみたいだ


1人で来ている子もいれば、母親やお婆ちゃんと来ている子もいる


父親が付いて行って場違いだったかなぁ〜と思っていると


どうやら前の女の子が父親と母親を連れて来ていたみたいだ


ヘアメイク・着付け・写真撮影は、1フロアをパーテーションで区切っているだけなので


娘の着付けの間、丸椅子に座って待っている俺の背後では、まさにスタジオ撮影が行われていて


はい、イイよ〜

もっと笑おうか!


という、カメラマンの声が丸聞こえなのだ


で、女の子メインの撮影が終わったのだろう


「では、お父さんお母さん、横に立ってもらいましょうか」


という声が聞こえてきたので、あぁ父親も来てたんだと分かった次第


そのうち着付けの終わった娘が奥から出てきて、隣に座る


すると丁度、背後のスタジオからカメラマンの筒抜けの注文が聞こえてきた


ん〜お父さん、まだ硬い!

もうすこし笑おうか!

もっともっと!

お父さ〜んそれ全力じゃないでしょ〜

もっと笑って!

いいよいいよ!

もっと口角上げよう!

いいよ!もっと頂戴!

いい!いい!お父さん!いいよ!

いい笑顔!最高だよ!!


「・・・あんなの言われて大丈夫?」笑いをこらえながら娘が聞いてきた


次の番よな・・・

口角上げて娘にサムアップしたら


「不気味すぎる」と引かれてしまった

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