第94話 産卵場所

数年前、釣り遠征で屋久島に行った時のこと


泊まった旅館の、道を渡って向かいの海側の岸壁の上に、宴会場がある


朝食も同じ場所なので、道を渡って岸壁の建物へと移動し、何気に右手窓から眼下を眺めると


夜は気付かなかったのだが、 2kmほど延びた砂浜を、海に向かって十数本


1m幅で長さ10mほどの距離に、砂を引き摺った後が付いている


他の客(女性が数名)もそれに気付き、「わあ、あれなんだろうね?」と話し合っている


配膳していた旅館の従業員の男性が「あれはアカウミガメが産卵して、戻って行った跡なんですよ」と会話に混じってきた


「えっあれウミガメの歩いた跡なんだ」


「はい〜あの一帯は保護区になってましてね」


「へぇ〜そうなんですかぁ」


「なので夜は、近寄って観賞会もやってますよ」


「わぁ〜見てみた〜い」

「ウミガメって産卵の時に涙を流すとかいうよね〜」

「月明かりの下、砂浜で産卵なんてロマンチック〜」


「私の子供の頃はね」

60過ぎの従業員の男性は話を続ける


「砂浜掘って卵見つけては、おやつ代わりにちゅーちゅー食べたものですよ〜はっはっは」


今それ言う?

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