第87話 プチプチ

2年前の2月に、下の娘が神戸から沖縄へと引越してきた


部屋は、土地勘も無いのでなるべく近くに住まわせた


ウチに居候したそうであったが、あくまでもそこは自立してもらう


これからしっかり働いて貰うけれども、全くお金の無い子なので


Amazonでの買い物は俺が面倒見ることにした


要らぬものをポンポコ注文されても困るので履歴は確認するが、それほど厳密にチェックしている訳でもない


なので娘の頼んだものは、一旦俺の部屋に届くことになっている


俺が居れば受け取るし、俺が不在の時に時間指定していれば


合鍵を持っている娘がウチで待機して、受け取る



さて、来て間もない3月の初めの話。


娘からLINEが届く


「Amazonでプチプチ頼んだ」

「プチプチ?」

「あるじゃん、緩衝材の」

「あ〜、押してプチプチ潰すやつ?」

「そうそう。着いたら教えて」


メルカリで要らない化粧品やら小物やら、発送するのに使うらしい


それから2日後。


馴染みのヤマト運輸の兄ちゃんが、Amazonからお届け物です、とやってきた


俺が玄関口で待っていると、共用廊下の奥からゴロゴロゴロ〜と台車を押す音が聞こえる


台車がウチの前で止まり、チャイムが鳴る


はいはい〜


扉を開けると目の前に、長さ1m・直径40cmほどのブルーの円柱を数本、台車に乗せた兄ちゃんが立っている


「あっTさん、今回は全部で6個口です。」


「えっ?これ・・・なに?」


「えーっと、エアクッションってなってますね」


「エアクッション?」


ひょいっと一本、渡された大きな円柱を両手で抱え・・・なんだ、めっちゃ軽いな。


・・・ってこれ、プチプチのロールか!


ひょいっ、ひょいっ、とリズミカルに渡されたものだから、素直に受け取りはしたが


余りにもの大きさに玄関口は満杯


「ありがとうございましたー」兄ちゃんは帰っていった


改めてよく見てみる

『プチプチエアクッション 1200×42』


ん?1200mmの?4.2M?


てことは・・・


幅1.2メートルの4.2メートル巻き・・・


ってアホか!!

それも6本て!!


高さ1.2m・直径40cmの円柱のロールが6本、玄関に並び立っている。


ここは港の倉庫か。


直ぐに娘に電話


「ちょっと!ウチまで来なさい!」

「なに、いきなり?」

「いいから来なさい!!」

「何?!・・・行くわよ!!」


20分後、娘がやってくる

玄関を開けるなり「うわっ何これ?!」


あんさんの仕業やがな


「よく見てみ」

「えっ?これ・・・あ!プチプチだ!」


いやアンタね

どんな頼み方したのだ


「えっ?確か・・・幅40センチ長さ1メートルのプチプチを、6枚シートまとめて買ったら1,800円で送料無料・・・だったと思う」


ほ〜う。

正解を見てみようじゃないか。


リビングに向かい、PCを開き、Amazonの購入履歴を見る


「1200mm×4.2Mのプチプチエアクッション、1巻1,800円のところ、6ロール纏めて買うとジャスト1万円で送料無料!」


お・ま・え・は・あ・ほ・か


「6個まとめて買う」のボタン押したな?


人間を巻いて発送しても当分無くならんわ


親の顔が見てみたい┐(´д`)┌

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る