友人からの便り
成人の日、友人からの手紙
成人式が終わった週の休日、ジョウは街のカフェでくつろいでいる。
ここ数日、成人式に参加するため島に帰ってきていた同級生と飲み会が続いていたからやや寝不足だ。眠気覚ましにコーヒーを飲んでいると、待ち合わせの時間どおりにマミが来た。
「ジョウにこのカフェは似合わないね」
席に座ったマミは大学生活を楽しんでいるようで、きらきらと笑顔がこぼれている。きれいにメイクし、流行りの服装をしていて高校生のときの幼さはない。
「この店、女子に人気のある店だろう?
男一人でいたら浮くに決まってる」
ジョウは高校生のときより筋肉がついて体格がよくなっている。派手な髪形に日焼けした健康な肌を見れば、こちらも日々を充実させているようだ。
高校卒業直後はクラスメートと一緒に何度か会っていたけど、だんだん疎遠になり二人は久しぶりの再会となっている。
互いに近況を聞き合い、ひとしきり雑談を楽しむとマミが本題を切り出した。
「あのね、カノコから手紙がきたの」
「えっ……」
「ずっと連絡取れなかったのに……。びっくりしたわ」
マミが困ったように笑ったのでジョウはあまりよくない報せかと予測し、心の準備をした。
「手紙にはね、高校のときにパワースポットへ行ったときのことが書かれていたの――」
カノコがマミに宛てた手紙にはいろいろ書かれていた。ジョウを呼びだしたのはパワースポットめぐりに関係する内容があったからだ。マミはカノコの手紙の内容をかいつまんで話しだした。
「ジョウは気づいていたけど、パワースポットめぐりはただパワースポットを見に行くだけじゃなかったの。
当時ね、『チチヌユ
「
「そうなの。おまじないはね、『月明かりが出ている夜』に『4つのパワースポット』を順番どおりに回って、『特別な場所』で願い事を祈るというものだったわ。
パワースポットへ行くまで知らなかったんだけど、『特別な場所』に指定されたところには香炉が置いてあったから
「あ――、たしかに香炉を見たな。
全部にあったのか?」
「4か所すべてにあったわ。
それで全部回ったあとに、チチヌユ
「それって、じーさん、ばーさんが
「わたしもそう思ったわ。
本格的に神霊へ祈願するのに似てるって」
「マミは何をお願いしたんだ?」
「わたしはとくに願い事はなかったから手を合わせただけ。
でもカノコは
ここでマミは話すのをやめた。
ふせている目からマミが後悔していることが伝わってくる。せかすようなことをせず、彼女のほうから話すのを待つことにした。
マミと話しているうちに高校生だったときの記憶がよみがえっていて、ジョウはパワースポットをめぐった日のことを思い返していた。
最初に訪れたパワースポットの城跡では、祭祀場跡でマミとカノコちゃんが手を合わせていた。祈っていた先は石が積まれただけに見えたけど、香炉があったことから
2つ目の湧水では、マミとカノコちゃんだけで林の中へ入っていったから実際に見たわけじゃないが、マミの話しぶりだと
3つ目は石彫りの獅子だった。最初は神社にいる狛犬を住宅地に設置したイメージをもっていた。ところが実際の獅子は、遠くから見ると石にしか見えない荒い彫り方をしていた。作業途中にも見えた獅子は神聖さより面白さを感じたが、そんな獅子にも香炉があったから
最後のビーチは小さいころに家族と何度も行ったことがあったから、林の奥に
マミの話では、それぞれの
(夜にパワースポットをめぐって願い事をすれば必ずかなう――。
マミが話した
それなのにマミはなんで深刻そうな顔をしているんだ?)
今の段階ではとくに問題がないのでジョウは不思議でならない。
うつむいていたマミが意を決した目をして顔を上げたので聞く体勢に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます