二人とも!? それ、おかしくねえか?
朝飯を食い終わってのんびりしていたらロウが来た。病院着を着ている。
「ロウ!?」
驚いて何も言えずにいるとロウが話してくれた。
きのう、俺の見舞いに行く途中で俺が事故った現場を見に行き、そのあとでバイク事故に遭った。肩を打撲しただけで大きな怪我はなく、念のため入院していたけど今日中に退院するという。
事故が気になった。ロウは一度走るとすぐにコツをつかんで、どんな道でも乗りこなすバイクのテクニックをもっている。そんなロウがバイクの運転で事故、しかも初めての道ではなく走り慣れた道でというのは変だ。
明らかにおかしいので詳しく聞くと、カーブを曲がろうとしたときにバイクに物がぶつかった感触を受けて事故ったという。バイクごとロウをはじき飛ばしたというのに、当たってきたモノの姿は確認できなかったと話してくれた。
事故の状況が異常でいろいろ聞きたいことはあった。でも事故後なのでロウには体を休めてほしい。そこでこれから検査があると嘘をついてロウを病室へ帰した。
ロウがいなくなってからネットで検索を始めた。
俺が視た緑の
なんか変だ。あの山はもしかしたら俺らが知らないだけで心霊スポットなのか?
ツーリングする山は俺らの間では「山」と呼んでるけど、ただ木が茂っている雑木林レベルだ。もちろん名前なんてついてないし、島にいる俺たちでさえツーリングをする以外は気にとめないところだ。そんな山に急に
頼りのネットに情報がなくて八方ふさがりだ。
知っていそうな友人に連絡を取りたいけど、連絡先は無くしたスマホに登録してて覚えていないし、入院していることはあまり知られたくねえ。そうなると連絡できるのはロウだけなので現状は打つ手がない。
よく考えると事故のときからおかしなことが続いている。
これまで
急に霊感のようなものがついたが能力は中途半端で、視えはするけど声は聞こえない。俺につきまとう幽霊はみんな怒ってて、口を動かして何かを訴えてるけど声が伝わらなくてわからない。
バイトしていたらたまにムカつく客が来るし、クレームを受けることもあるから人の対応には慣れている。でも知らない
それにしても……
なんで急に視えるようになったんだろう?
事故直後なので一時的なものだったらいい。
そうではなく、この先ずっと幽霊が視えるのが続くというなら最悪だ。
幽霊はやりたい放題なのにこっちは何もできない。対処できないことがこんなにつらいとは思ってなくて、精神的に参っておかしくなりそうだった。そこへロウが見舞いに来てくれて持ち直すことができ、おかげで今は冷静でいられる。
とりあえず対処法がわからないものは放っておくことにし、俺の現状を把握して情報を整理していくしかない。
病院に現れる幽霊と山で視た緑の
でもいくら考えても何が原因で視えるようになったのか、なぜ幽霊につきまとわれるのか理由がまったくわからない。
因果関係がつかめないから解決方法がわからない。それにロウが事故ったのも俺のせいじゃないのかと気になる。
ロウは何かに突き飛ばされたと言っていた。
見えなかったナニカとは
やっぱり俺が関係してるんじゃないのか?
ロウに忠告しておいたほうがいいかもしれない。俺に起こっている奇妙な現象を言っておこう。
ロウの病室へ向かっていると、廊下でロウの家族に会った。
せっかく家族が来てるんだから邪魔はしたくない。挨拶して、少し話をしたら自分の病室へ戻った。
ロウと話せなかったのは残念だが、俺が来たことを伝えておくように頼んだから急ぐ必要はない。ロウをからかう要素ができたし、ゆっくり待つことにした。
ロウから連絡を待っているけどなかなかこない。
まめではないが必ず返事はするので気になった。こっちから連絡しようかと考えたが家族と過ごしているのを想像して遠慮した。それに俺の連絡先は知っているんだ。何かあれば連絡するだろう。
夕方になってもロウから連絡がこない。
退院するって言ってたから、さすがに気になってロウの病室へ行ってみると何やら騒がしい。
ベッドをのぞくと空っぽで、サイドテーブルにメモが置いてあった。大きな文字で『出かけてくる』とあり、下に『退院手続き よろしく』と小さく書かれていた。
同室のじいさんが「兄ちゃん、友達かい? 先生と看護師が怒っていたと伝えてあげて」と笑いながら言っていた。
ロウは家族と一緒に出て行ったらしいから心配ない。……けどなあ、俺には連絡しろよ!
ちょっと腹が立ったのでメモに『連絡しろ! J』と付け足した。見るかどうかはわからないけど、ロウが反省している様子が浮かんで少しすっきりしたので病室に戻って寝た。
翌日になって俺の病室にひょうひょうと現れたロウは連絡しなかったことを謝ると去っていった。心配しながら待っていた時間を返せと思ったけど、珍しく余裕のないロウを見たから、なんか得した気分になった。
結局、1週間入院した。理由はわからねえが、ロウが最初に見舞いに来た日以降、俺にまとわりついていた
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