見舞いに来た親友
事故ったときにスマホを無くしたから誰とも連絡が取れなくなっていた。
ロウにも連絡できないでいたのに見舞いに来た。突然のことで驚いたけど嬉しかった。
ロウはポーカーフェースなので感情がわかりにくい。でも本当は喜怒哀楽が激しくて、からかいやすく、おふざけにも付き合ってくれる。また悪ふざけが過ぎると、ちゃんと叱ってくれる友達想いのいいやつだ。
そんな親友によけいな心配をかけさせたくない。
ロウの前ではいつもどおりに振る舞うようにしていたら恐怖が消えて気持ちが楽になっていた。
あと不思議なことが起こった。ロウが病室に来てから幽霊の気配がなくなっている。ずっと視えてた
ロウと話すことで久しぶりに安心できて嬉しくて仕方がなかった。でもロウが帰り支度を始めてから不安になった。事故ったときに見た緑のモノが頭に浮かんだからだ。
カーブを曲がった瞬間に道路にいた緑のモノ――。
最初は斜面に生えていた木が折れて落ちたと思った。でもアレは木じゃなかった。
事故って車がスピンしていたとき、緑のモノは車の動きを確認していた。移動する車に合わせて動いてて、
緑のモノが意思をもっていると気づいたら、木の葉をまとっているナニカだとわかって、
ロウが帰ってからずっと胸騒ぎが止まらない。
しつこく俺にまとわりついていた幽霊たちの姿もなくて不気味だ。メッセージを送って無事を確かめたいけどスマホがないから連絡できない。腕に書いてくれた電話番号を何度も見て、電話をかけようか迷ってしまう。
落ち着かなくて廊下をうろうろしていたら看護師に見つかった。消灯時間を過ぎていると叱られ、ルールに従ってくださいと強く言われて仕方なく病室へ戻った。
ベッドに入っても気になって眠れない。
うっとうしい幽霊たちがいなくて快適な環境のはずなのに不安ばかりが募っていく。まったく眠れなかったけど、朝日を感じると安心してきた。急に眠気が襲ってきてそのまま眠りに落ちた。
朝食時に看護師に起こされたけどいらないと言って眠り、昼食の時間になって再び起こされた。またいらないと言って寝ようとしたら強制的に起こされた。あまりにも眠っていたから容態を心配してるようだ。
久しぶりにぐっすり眠れたので頭がすっきりしている。
テーブルに置かれた食事は中学まで食べてた学校給食より豪華だけど、から揚げとかバーガーやポテトが食いてえ。でも腹は減っていたのでとりあえず食べた。
面会時間終了ぎりぎりに母親が見舞いに来た。
母はにやにやしながら紙袋を差し出してきた。中の箱を取り出すとスマホだった。一番欲しかった物がこんなに早く手に入るとは思ってなかったから、めちゃめちゃ嬉しくて叫んでしまった。母には何度も礼を言い、箱から出して親の連絡先を登録した。
すぐに面会の終了時間となったので母は帰っていった。玄関まで送ったついでに外で電話をかけた。相手はロウで見舞いに来たときに教えてもらった番号にかけている。コール音はするのに出ない。せっかく驚かせようと思ったのに。
電話を切ると電話がかかってきた。弟からで、事故ってから会うどころか話もしてなかった。怪我の具合がもう少しよくなってから連絡する気でいたけど、弟は待てなかったらしい。
寂しかったようでずっと話してくる。聞き役に回っていたら、ばあちゃんが俺を気遣って長電話をやめるよう言ってるのが聞こえた。弟は
ほっこりしながら病院内にあるコンビニへ寄って病室に戻った。
今日は一度も幽霊を見てない。入院してからずっと俺に張り付いていたのに急に消えたのは気味が悪い。でも
スマホを無くすまでネットを見るのが日常だったから、スマホのない状況は不便だった。入院中の暇つぶしができたので、さっそくコンビニで買ったイヤホンをつけて好きなネット動画を見始めた。
動画を見ていると救急車の音が近づいてくるのが聞こえた。救急病院なので一日に数回は聞くサイレンだ。
これまで気にならなかったけど救急車の音がやけに響く。窓から赤色が入ってきて目を上げたが、再びスマホに目を戻してネットを見続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます