女子高校生 Mの場合
シャワー中に思い出す
4つ目のパワースポットのビーチで願い事を済ませたあと、雲行きが怪しくなった。慌てて車に戻った途端に、大粒の雨が降り出した。すべてのパワースポットをめぐり終えていたので車を出すと帰路についた。
帰る途中でファストフード店に立ち寄って休憩したあと、車は再び帰路につき、マミとカノコは待ち合わせをしていたコンビニまで送ってもらった。
コンビニに着いたのは朝早い時間で、そのまま家へ帰ると怪しまれそうだった。そこでマミはカノコの家へ行き、数時間滞在してから家に戻ったところだ。
(お母さんに「友達の家に泊まる」って言って出かけたけど……。
嘘だとばれていないよね?)
免許を取ったばかりの人が運転手というだけで心配するに違いない。そのうえ同級生だけで深夜のドライブに出かけるなんて承諾するわけがない。だから親にはドライブに行くこと自体を内緒にしてきた。
玄関の扉を開けるのに
「勉強ははかどったの?」
「うんっ。お泊りの勉強会をやってよかったわ。
わたしではどうしても解けなかった数学の問題があったの。どうやったら解けるのか聞いてみたら簡単な解き方を――」
本当は朝まで出かけていたので疲れてて眠りたい。でも母親に怪しまれるわけにはいかないので調子を合わせて明るく話を続けた。
しばらく母親に付き合っていたけど話を切り上げた。すぐにでもベッドに飛び込んで寝てしまいたかったけど、夜の森で無数の虫に遭遇したし、海へ行って潮風も浴びている。年ごろの女子としてはお風呂に入っていないことが気になる。
(眠たいけど、べたべたしてて気持ちが悪いわ。
せめてシャワーだけでも浴びよう)
部屋へ行って着替えを用意するとシャワーを浴び始めた。体を洗っているとパワースポットめぐりのことを思い出してきた。
(夜のドライブに行けるなんて思っていなかったわ)
高校3年になると友人たちが進学や就職に向けて真剣に取り組むようになった。遊びに誘っても断られるようになり、自分だけ真面目に向き合っていない気がして、後ろめたく思っていた。そんなときにカノコから連絡がきた。
(あまり会わなくなっていたから連絡がきたときは驚いたわ。カノコの家に泊まりに行くのはいいけど、ぎくしゃくしないか心配だった。でも全然変わってなくて安心したわ。
お泊りはおしゃべりだけする、いつもの女子会と思っていたわ。だからカノコが恋の相談事をしてきたのは予想外でびっくりしたな)
カノコは親友だけどこれまで恋の話題はしたことがなかった。人見知りで奥手なのでこれまで言い出しにくかったのかもしれない。そんな彼女が勇気を出して打ち明けてくれたことが一番嬉しかった。
(カノコの恋を応援したくて、まずは自信をもたせようと『チチヌユ
久しぶりにわくわくしながら調べものをしたわ)
マミたちが通う高校で、いつの頃からか願い事が必ずかなう
(
手のひらに「人」の字を3回書いてのみ込めば緊張しなくなるとか、おまじないはたくさんあるけど、ほとんどが迷信だもの。おまじないを信じるのは子どものころまでと思っていたわ。
でも
積極的になっているカノコを見たのは初めてだわ。絶対にうまくいってほしい)
無事にパワースポットめぐりを終えたことに満足している。でも
(
「月が出ている夜」、めぐる場所は「城跡」に「湧水」、「獅子」に「ビーチ」とばらばらで、子どもだけで行けるような場所じゃなかった。それに願い事をする場所……あれは全部、
でもマミの家ではこれまで
(
わたしが知らないだけで
訪れたパワースポットでは願い事をする場所に香炉があった。
(
パワースポットをめぐっている間は、カノコが真剣に
(カノコは願い事をしていたけど、わたしは願い事がなかったから手を合わせただけ……。
あれ? よく考えてみると、この
体を洗う手が止まって鼓動が速くなってきた。
(わたしったら何を気にしているのかしら。
『チチヌユ
それに
これ以上考えると不安になりそうなので、素早く体を洗って浴室を出た。
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