『芝さんに告白できなかったら、即死亡!』④

「おかえりなさい」

「なんでここの家に僕より先に家に入っている人がいるんだよ! てかなんだよ。その恰好は!」


 ミライが部屋に帰ると、ラフな格好の査定人が深々とお辞儀をして、ミライを出迎えた。査定人はなぜか可愛いエプロン姿でお出迎えをした。

 つっこみどころが多くあり、ミライは肩に下げていたカバンを地面に落とした。



「管理人さんと仲良くなってな! ここ学生専用のアパートやろ。管理人さんに高級な酒のつまみあげたらな。一緒に酒飲んで、ほんならその流れで……」

「部屋に入るまでの過程を聞いてんじゃないよ! どうして、ここに来てるのって話!」

「で、どやった! 成功したか! どや?」

「…してないよ!」

「ん?」 


 よく見たら、査定人は少し酔っぱらっているように見えた。

 今度は査定人が困惑した。ミライは決まづそうに査定人に目を合わせることもせず、細い通路を通ってリビングに向かう。


「初めて会ったと思われてる人に、告白する人が世の中のどこにいるんだよ!」

「あんた、アホやな。まあ、出会って1分もせんうちにわかってたけども! せんかったら、死ぬんやで!」

 あきれたように頭を抱えて査定人はため息をついた。


「こっちは、初めて話して満足してるんだよ」

「……しゃあないな。なんか作戦考えたろか」

 カバンを置き、3人掛けのソファーに座ってテレビをつけた。

 ミライの横に座り、足を組んでうなりながら考え出した。


「作戦?」

「そうや。あんたに作戦クリアしてもらわな。俺の仕事も失敗におわるやん!」

「しらないよ。それにどんな仕事なんだよ」

「お! いい案考えたで!」

 急に立ち上がり、探偵が推理を語りだすようにソファーの周りを歩き始めた。



「俺が芝はんにしつこくからみにいく。その時にミライがきて助けるっちゅうのはどうや?」

 言い終わったタイミングでミライを指差し、ドヤ顔をしている。


「……古いよ。面白くない。それに気が進まない。」

「……そうか」

 査定人は初めてぎこちない表情をつくって作り笑いをした。その後しばらく話してこなかった。面白くないと言われてたことを気にしているようだ。



「あんたと話してたら腹減ったわ! なんか食べさせてや!」

「……なんかって。家にはなにもないし。……そうだ。学食にいこう!」


 意気揚々いきようようと査定人はミライの横を歩いていく。査定人の方には大きなバックを大事そうにかついでいた。途中でテイクアウトのたこ焼きを買ってほしいとダダをこねていたが、ミライは無視して大学に向かう。


 大学の学食は地下にあり、学生を200人は入れるのではないかと思うくらい大きなスペースがある。


「おう。ミライ!」

「あ! ミライ君さっきはありがとうね!」


 ミライに声をかける人はほとんどいないはずなのに声をかけられて、ミライは異常に驚いてうれしい気持ちになった。声の主はヒロだった。

 次に声をかけられたしかも女性の声だったので、声の方向を見るとそこに芝さんがいた。芝さんに声をかけられたうれしさと横にヒロがいたショックで相殺できずにいた。


「う……ううん。全然いいよ! 気にしないで」

「なんかうまそうなんたべてるやん! ちょっと頂だいや!」

 査定人はミライの反応もおかまいなしで、ヒロの食べていたピザを今にも食べそうになっていた。


「ミライ君も一緒に食べようよ!」

「い……いいよ、喜んで」

  きれいなひとみでミライを見る芝さんにミライはたじろいでいた。



「あ! ……せや。ミライなんか告白したいって言ってなかったか? 言ってたよな」

 隣のテーブルのイスに座るとすぐに査定人は急に話を振ってきた。予想外の発言にミライは思考回路が渋滞して、パニックを起こしていた。


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