第32話 お泊り会前日
「ねぇ
ベッドで寝転びながら漫画を読んでいる
突然の質問を疑問に思いながらも、明日の予定を思い浮かべた翔斗は返事をする。
「特に用事はないけど、なにかあるのか?」
翔斗の友人たちは花鈴と付き合いたてということを気遣ってか、嫉妬7日わからないが、そちらにせよあまり翔斗を遊びに誘わないようにしているようなので、基本的に用事はない。
「えっとね、明日
「そうだな……俺としてはいいんだけど、ちゃんと花鈴の両親に許可をもらえたらいいぞ」
さすがに付き合っている男女が二人きりで過ごすのは、流石に問題があると思った翔斗は花鈴に条件を出した。
正直、花鈴の両親は翔斗を気に入っているので、許可はもらえるはずだが、それでも義理を通すべきだと翔斗は考えたのだ。
「ふっふっふ、私を誰だと思ってるのかな?」
翔斗の言葉を聞いた花鈴は不敵に笑いながら、翔斗の考えはお見通しと言わんばかりにドヤ顔をして言い放つ。
「当然、翔斗がそう言うと思ってすでに連絡済みで、許可をもらっています。もちろん、愛華にも許可をもらってるよ」
花鈴の突発的な思いつきかと思いきや、すでに根回しは十分であとは翔斗の気持ち次第だったようだ。
「もしかして、前から予定してたのか?」
翔斗が問うと、花鈴が静かにというように唇に指を立てた。
「駄目だよ翔斗、そういうことは胸に秘めておくものだよ」
「そうだな悪かった。それじゃあ、明日の準備をしておくか」
泊まりに行くならば着替えなど準備が必要だろう。
家が近いとは言え、忘れ物を取りに行くのはめんどうなので、しっかり準備をしておくに越したことはない。
「何か持ってきてほしいものはあるか?」
泊まりならば当然夜も遊ぶはずなので、翔斗の持っているゲームなどを持っていくか花鈴に尋ねる。
「うーん、特に持ってきてほしいものはないかな。翔斗がやりたいものがあったら持ってきていいよ」
「わかった。荷物はそれでいいとして、朝から花鈴の家に行けばいいか?」
「うん、そうだね。夏祭りの浴衣をレンタルしに行くから、私の家に荷物をおいてから出かけようか」
翔斗の家と花鈴の家を行き来するのは面倒なので、花鈴の言う通りにするのが一番いいだろう。
その後も明日の予定を話し合い、大方の予定が決まってころにはすでに夕方になっていたので、今日はお開きにすることになった。
「じゃあ花鈴また明日な」
「うん、じゃあね」
花鈴を家まで送った翔斗は、別れ際に口づけを交わす。
最初は恥ずかしかったが、今では帰り際にするのが恒例になっていた。
「明日の準備をしたら、今日は早く寝るか」
翔斗は明日のことに思いを馳せながら、帰路を辿った。
そして翌日、いつもより少し早い目覚ましの音で翔斗は目を覚ました。
「よし、さっさと準備して花鈴の家に行くか」
少し早い時間だが、今から朝食を食べて荷物の確認をしてから家を出れば、丁度いい時間になる。
楽しみな気持ちを抑えながら、翔斗は支度をした。
「よし、行ってきます」
荷物の確認を終えた翔斗は、家を出る。
当然前日に両親に花鈴の家に泊まりに行くことは話しており、許可ももらっているのでなんの憂いもない。
今日は一日中花鈴と過ごせる最高の日なのだった。
「いらっしゃい翔斗」
花鈴に笑顔で出迎えられて、家に入っていく。
花鈴も気合が入っているようで、すでに服はデート用のもので髪型はポニーテールにしていた。
「やっぱ花鈴はどんな髪型も似合うな」
最近は結ばずに髪を流していた花鈴だが、違う髪型も似合うと翔斗は再認識する。
髪に見惚れている翔斗に花鈴は笑いかけながら、抱きついてくる。
「どうかしたか?」
戸惑いながらも翔斗は花鈴の背中に手を回して、しっかりと抱きしめる。
「私に見惚れてくれて、嬉しくなっちゃった」
「いつも見惚れてるよ」
恥ずかしくも正直に翔斗は伝えて、腕に力を少し込めて抱きしめる。
花鈴は自分の彼女だという独占欲と、愛しさが胸から溢れ出してくるのを翔斗は自覚する。
「はい、終わりだ」
「えーもうちょっといいじゃん」
頬を膨らませた花鈴から文句が飛んでくるが、抱きしめあっている場所は玄関なので、ひとまず荷物を置くために移動をする。
「荷物はどこに置けばいい?」
「リビングのどこかにまとめて置いといて」
「わかった」
荷物をソファーの近くにまとめて置くと、花鈴が隣にやってきたので二人でソファーに並んで座った。
「昼近くまで適当にぶらついて、お昼を食べたら浴衣をレンタルしに行くでいいな?」
「うん、それでいいよー」
時間がまだ早かったので、しばらく花鈴の家でのんびりした後に二人は、駅に出発した。
「何か美味しそうなものはないかなー?」
キラキラした目で周囲を見ている花鈴がどっかに行かないように、翔斗はガッチリと花鈴の手を掴んで離さない。
駅周辺は人で溢れているので、はぐれてしまうと合流するのが困難なので翔斗の判断は正しい。
「あそこのクレープとかどうだ?」
「んークレープも美味しそうだね。あっ!」
花鈴は何かを見つけたようで、翔斗の手を引っ張りながら目的の場所へ進んでいく。
「パンケーキか」
「うん! すごく美味しそうだったから。ここでいいよね!」
尻尾があったらブンブン振られていることがたやすく想像できる状態の花鈴を前にして、断る選択肢などない翔斗は頷いた。
「カップル専用パンケーキがあるのか」
店に入ってメニューを見ていると、カップル限定メニューと書かれたハート型のパンケーキが翔斗の目に入った。
値段は通常のものよりも少々割高だが、その分大きいので二人で食べるものなのだろう。
「翔斗それにしよ」
「わかった。すみません」
店員に声をかけてカップル専用のパンケーキを注文をする。
恋人の証明になることを要求されたが、ハグをしたらあっさり認めてくれたので無事注文することができた。
「おっ美味そうだな」
すぐにパンケーキは運ばれてきて、その大きさと漂う香りに二人の食欲がそそられていく。
「いただきまーす」
さっそくパンケーキを口に運んだ花鈴は幸せそうな笑顔で、感想を口にする。
「すっごく美味しいよ翔斗!」
「ああ、俺も食べるよ」
翔斗がパンケーキに手を出そうとするよりも先に、花鈴から口元にパンケーキを差し出してきた。
「ありがとう」
翔斗はお礼を言ってから食べる。
「これめちゃくちゃ美味いな」
想像していたよりも美味しく、花鈴のリアクションが大げさでないことを理解して翔斗は食べ進めていく。
翔斗は甘党なので、パンケーキやクレープなどが好きな花鈴とは好みがほとんど同じだった。
会話もそこそこに夢中で食べるとあっという間にパンケーキは皿の上から消失してしまい、二人の胃袋に収められた。
「ふー美味かったな」
「うん、すっごく美味しかった。また来ようね」
会計を済ませた二人は、店を出て再びブラブラと散策をする。
「思ったよりもボリュームあったね」
「そうだな。かなりお腹いっぱいになったな」
当初の予定では散策をした後に昼食を摂るつもりだったのだが、二人のお腹は満たされてしまったので予定を変更するべきだろう。
「うーん、かなり早いがもう浴衣を見に行くか?」
「そうだね、昼食が入る気がしないから私はそれでいいよ」
「じゃあ、決まりだな」
二人は浴衣屋に向かって行った。
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