第1話 邪気を放つ教会

第二章 洗礼



 ニュウベラス県のピュク町の住人たちのほとんどは、


このダレム教会を忌み嫌っていた。



 なぜ、忌み嫌われているのか。



 世界的権威とされるキリスト教を笠に着た亜流だからなのか。


 それとも、忌み嫌われる理由が他にあるからなのだろうか。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ダレム教会は、朝の礼拝を終えると、いつものように洗礼をしていた。


 この洗礼は『楽園天国』と神父や教会関係者の間では呼ばれていた。


 そしてこの洗礼『楽園天国』が、ダレム教会が忌み嫌われる


最大の理由なのではないか、と思われた。



 ピュク町のダレム教会の教義によると、神が降りてきて合一できるのは、


神父と性交したときに絶頂に達した瞬間で、その瞬間から、恵まれない生活に


苦しむ信者の世界は一変するのだ。



 ダレム教会に初めて訪れて洗礼を受け信者になった時から、一切の悩み、苦しみ、


痛み、争いごと、経済的困窮などから解き放たれ、生活が幸福に満ちたものになる。



 信者になった後も同様である。


 日常の苦しみが増してきたときには、洗礼をして浄化することにより、


信者を取り巻く世界が一変し、幸福感に満ちた生活が再び始まる。



 しかも、絶頂を迎えた回数に、幸せの量と質が比例していくのだ。



 悩み、傷つき、苦しみに満ちた生活を送っている人々は、


信者となるための洗礼を受けたいと、次々とこの教会にやって来る。


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