2着目
絵梨と梨香子
「高校に受かったらお揃いのセーター、買いに行こうね」
そう約束したのに、
中学3年生の冬。
迫り来る高校受験によって、校内はかつてない緊張感に包まれていた。蹴落としても仕方のない、ただ隣に座っただけの人のミスや堕落を願った。
「絵梨! 今日、図書館いく?」
梨香子が聞いてくる。
梨香子とわたしはいつも図書館で勉強していた。それだけじゃない。梨香子と私はいつも一緒にいた。
「もち! 今日は数学やろっかなー」
「え、私教えてほしいところあるんだけど、いい…?」
梨香子はよくこうお願いしてきた。
成績は私の方が良かったし、彼女はいわゆる甘え上手だった。お願いされたらなんとなく断れない。私はそんなタイプだったし、特に彼女のは難しかった。
「もっちろん!人に教えるのも勉強になるんだぞーって太田爺も言ってたしね笑」
太田爺は数学の先生で、ゆったりとした動きとのんびりした話し方が可愛らしいおじいさん先生だった。太田爺の後ろには、なぜかいつも縁側が見えた。梨香子には見えなかったみたいだけど。
梨香子にうまく教えられるように勉強するからか、自然と私の成績は上がり安定していた。
しかし事件は突然起きた。
受験直前、梨香子に急に男子を紹介された。
「彼氏なの」
そういう梨香子を見なくてもいいように目を伏せた。口だけはうまく笑って見えるように努めた。
受験勉強で苦しいときを支え合ったんだ、と彼らは身を寄せ合いながら言った。その手と手はずっと繋がれていた。
じゃあ、私は一体何だったんだろう。
わたしの頭を駆け巡った。
途端に全てがくだらないものにみえた。自分も勉強も梨香子といた全ての時間も。
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