おやつの時間

 結構時間経ってるなあ…。

1人になった店内で息を吐く。


さっきまでいたお客さんたちは、それぞれ手に持っていた服と雑貨を買っていった。

試着は諦めたようだった。


でもきっと2人ともよく似合うと思う。

なんとなくわかるのだ。お客が服を選ぶように、服も着る人を選ぶ。彼女たちと服たちは、受け入れ合っていた。


こんな風に試着室を独占されたら、普通は一声かけるものだろう。

が、この店は「私の好きなように」がモットーだ。


なんでか、言葉で説明することはできないけれど、お客さんがお客さんの出てくるタイミングまで待ちたい。今はそんな気分なのだ。


店を出るところも、試着室を出るところも見ていないから持ち逃げはしていないだろうし、試着したそうだったお客さん達も無事に購入までしてくれているから、こちらに損はない。


だから出てきたら、何をしていたのか聞いてみよう。そんな好奇心の方が強い。


店に来たのが15:00で、今は16:10。


まだまだ閉店まで時間はある。


今日はおやつもあるし、夜ご飯は遅くてもいい。カウンターでチャイティーを飲みながら、砂糖のいっぱいかかったドーナツを食べる。香辛料の匂いと甘い香りがが店内にふわっ、と広がる。この匂いにつられて出てきたりしないかしら、そんなことを考えて聴きたくなった曲に店内BGMに切り替える。


今日もほんとうにいい日だ。

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