第13話 熱を奪う波

先を行くユリカは砂浜にゼロの足を触れさせるとそのまま停止シークエンスを行い、ゼロは両膝を着いた。

コクピットから飛び出たユリカは海に一目散に駆け出した。


俺はCIORを砂に触れさせること、ましてや塩水に吹きっさらしにすることを躊躇ったが、仕方なくビーチの上で停止シークエンスを行った。

靴を脱いで裸足になり、銀色の膝を滑り落ちると、ひんやりとした滑らかな砂が爪先に触れた。


その冷えた薄い層を指が突き抜けると、今度は暖かな砂が俺の足を飲み込んだ。


先程まで暖められていたビーチは夕暮れになるに従い、上層から徐々に熱を奪われているらしい。

この足先が掘り起こす温もりの痕跡が、それを証明していた。


ユリカに続いて恐る恐る薄暗い海水に手を触れると、思ったよりもずっと冷たい感触だった。


「何してるの?こうやるんだよ!」


先に海に脚を突っ込んでいたユリカはピンと張ってその脚を蹴りあげ、爪先で掬った海水を俺に向けて放った。


モロに塩水を被った俺は腕や首筋に染み込む冷気に身を振るわせ、舌に付着したゴワゴワとした塩分をどうにか唾液で中和しようと浜辺に唾を二、三滴吐いた。


「うお!なにすんだおい!」


俺は足を濡らさないように腰を屈ませ両手で海水を掬うと、同じようにユリカに向けて放った。

その海水は指の隙間から無数の玉のようになって零れ落ち、浜辺にシミを作るのみでユリカの頬に付着したのは数滴だった。


俺たちは以上のようなことを数度繰り返し、主に俺をビショビショに濡らしながら海水を浴びあった。

この行為が愉快だったのか、ユリカの屈託のない笑顔につられたのかは分からないが、俺は何故か笑っていた。

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