第12話 西暦2138+2N年にようこそ。
-西暦427600002138年。
ズシンとした衝撃を感じた。
サブモニタを見ると西暦427600002138年となっている。
いや、今は西暦2138+2N年だったな。
俺はすぐさまハッチを開き、しがみついているはずのゼロを確認した。
これでタイムリープに失敗していれば、俺はまた前の世界に戻って策を考えなければならん訳だが、、、
「無事デースっ!!」
ユリカはゼロの蒼いハッチに足をかけて自慢げに親指を立てている。
どうやら面倒事は去った。
と一瞬思ったが、コイツ自体が面倒だということも思い出した。
「へいへい、良かったな。」
俺はぶっきらぼうな素振りを見せたが、彼女が背に
ハッチを開いた瞬間、熱い爽やかな潮風が鼻を撫でていった。
熱は俺の肌をじっとりと汗で湿らせ、風はその湿った肌を冷やした。
なんとも心地のよい空気だ。
これは向こうに見える砂浜から届いたものだろう。
辺りは夕暮れが終わる時間で空は真っ黒だったが、海水に溶けかかった
俺の瞳に刺さる陽光はユリカの吹き揺れる髪の隙間から明滅を繰り返し、俺の瞳孔を軽く
空の暗さに包み込まれ、陽が暖めるこの空間がこの世界から二人だけを隔離しているように思われた。
暖かな暗闇に俺は毛布で包まれたような安堵感を覚え、矛盾して風の爽やかさが俺に開放感を与えた。
「気持ちー!ここ!」
「そうだな。」
いつもやかましいだけのユリカが、妙に魅力的に目に映った事が少し悔しかった。
「あっち、行ってみるか。」
そう言って誤魔化すと、陽の溶ける海岸を見つめた。
俺はアムニガスの放出を止め、ハッチを開放したままインフィニティの歩を進めた。
ハッチは機体の突き出した胸の上部に付いており、ロックを解除しても外側に向かって扉が開く為、どうやってもコクピット内から外の景色を肉眼で覗く事は出来ない。
しかし、俺はこの風の一割でもこの身で感じていたかった。
アムニガスによる衝撃の緩衝が出来ないため、ハッチを開けての歩行はとても褒められたものでは無いが、俺とユリカしかいないこの空間では関係の無いことだ。
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