第7話 脱出
しがみつく警官を引き剥がし、シャッターの
俺の蹴りから回復した何人かの激しいノックがガシャンガシャンとシャッターを鳴らした。
俺はインフィニティに向き直った。
相変わらず両膝をついて鎮座した姿勢は崩さず、シャッターからの光量が無くなり、薄暗くなった倉庫内で銀の装甲をギラギラと輝かしている。
俺は走って銀の膝を滑り落ちそうになりながらよじ登り、突き出した胸の上部にあるハッチを開けた。
そこから飛び降りるようにして俺はシートに着席した。
「何にもイタズラされてねぇよなあ?
インフィニティさんよぉ!!」
電源を起動し、コクピット内側面までを埋め尽くすモニタ郡が暗い室内に薄緑の明かりを灯す。
駆動前の最終点検を行うも、機体の異常を示す赤い表示は見当たらない。
全ユニット破損なし。
インフィニティ・ジェネレータ駆動よし。
各関節稼働、異常なし。
アンカ・マニピュレータ稼働、異常なし。
ラック内兵装、レーザライフル、レーザソード、共に異常なし。
時間跳躍機構、
ん?なんだこれ、まぁ表示は緑だし良し!
てかちゃんと言っとけよクソ親父!
まあ良し、行ける!!
「ハッチ閉鎖!アムニガス充填開始!!」
シューッと気体の充填される音がする。
俺は宣誓する様に頭上に手を伸ばし、コーヒーに沈殿した砂糖を混ぜるように手を掻き回した。
掌だけにぐぐっと水中の様な抵抗を感じる。
「アムニガス、充填確認!」
アムニガス、正式には
元は羊水を表す
ガスとは言ってもナノマシンだが。
このナノマシンは搭乗者の周囲を避けるように設計されている為、呼吸や基本の操作に支障を来すことは無い。
自身の身体、それを包む空気層、それを包むアムニガス層、それを包むコクピットの内壁。
とマトリョーシカの様に層を成している為、手を伸ばして空気層の外で抵抗を感じることでアムニガスの充填を確認するのだ。
シートからベルトを取り出し、腰を固定した俺は次に、銀の2本のリングに片脚を通した。
その終端にペダルの感触を感じる。
もう片脚も同様に銀のリングに脚を通す。
足裏にペダル、ふくらはぎに銀のリング、
見た目は拘束具の様だが、これはリングの動きから膝の角度を検知させる仕組みの装置で、つまり俺の脚を動かしてインフィニティの脚を操作し、
ペダルを踏み込むことでスラスター出量を操作するのだ。
現在、インフィニティは両膝を地面に着くように静止している為、リングの初期位置を折れ曲がった様に配置し、俺の脚も若干膝まづくような角度から操作し始めなければならない。
そうは言ってもこちらの膝を少し曲げるだけで機体の膝は大きく開くのであまり負担はかからないが。
「立つぞ!行くぞ!インフィニティ!!」
インフィニティはその身長を5m強から7m程に伸ばし、シャッターから漏れる光を見た。
ノイズの入っていない排気音がコクピットの外側から360°聞こえてくる。
機体各部の冷却も大丈夫そうだ。
だが排気音の他に機械同士特有の戦闘の金属音がまだ鳴っている。
しかも、複数だ。
先程、ユリカが一体を沈黙させたというのにこの複数の歩行音は、、、
「まだ生きてるよなァ!!
待ってろよユリカァ!!」
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