第12話 ★第三者視点。メイド・カエデの視点3

 御子様の最後を見届けようとしたその視界に映ったのは、御子様を包み込むように展開される防御結界だった。


 私の魔力攻撃を防いだ!?


 先ほど私が放った魔力の波動を打ち消すには御子様の体内魔力量は脆弱にすぎる。つまり、これは何かしら強大な力を持った存在による加護。


 どんな鈍感な動物であっても、感じられただろう殺意。


 しかし、御子様は特に気にした様子もなくなにやら思案顔。


「私の殺意を受けても反撃してこない?悪魔憑きだったら、本能的に身を守るための防御反応、もしくは攻撃行動を取るはず・・・。反応がないどころか、動じることすらないとは・・・。もしや、邪悪な笑みを浮かべるだけのただの赤ん坊なのか?」


 私は御子様の殺害がうまくいかなかったことに安堵を覚えながらも、原因を探る。


 ・・・。


 すると、やはり御子様から何やらよこしまな気配を感じる!


「やはりおかしい。先ほどから、私の直感スキルがこの赤ん坊から不愉快な思念を感じている。直感スキルは精度は悪いが、害意には敏感。やはり、この赤ん坊は・・・怪しい・・・」


 ことは、おひいさまの生命。ひいてはエルフ国全体の命運に関わる。


 慎重に決断をくださねばなるまい。


 しかし、御子様はこちらの心配など気にすることもない。


「だー!」


 おひいさま譲りの整った顔に満面の笑みを浮かべられて、私に語りかけてくださる。


『美しきエルフの娘。我に敵意はない』


 発声ではなく、意思を持った魔力の波動と言う形で御子様の意思が伝わってくる。

 しかし、どこか私を軽んじるかのような不快感も同時に感じる。


「む・・・。先ほどとは違う邪悪なものではなく、庇護欲をそそる笑顔。かわいい・・・。しかし、素直に喜べない気持ちが湧くような・・・」


 満面の笑顔を私に向けてくる御子様。


 先ほどまで抱いていた疑心が心の中で氷解していくのが分かる。


 ああ、この方はエルフ族を導かれる立場になられるお方だ。

 命に代えてでも私はこの方とおひいさまを守ろう。


 私は覚悟を新たにして、御子様のお相手をするのだった。

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