第11話 祓魔師シモン、詩人オルフェと旅立つ


「はーあ、太っ腹なこったな。あんだけ稼いだのに、ポンと寄付しちまうんだから」

「シモンだって同じことをしてるだろ?」

「あれは祓魔師エクソシストとしての世渡りだっつの」


 キマイラの討伐から一夜明け。オレ――シモンは、オルフェと共に街道を歩いていた。


 昨夜の討伐後、教会に悪魔の出現を報告。

 その後、怪我人の治療費と破壊された店の修復代として、キマイラから回収した魔石の代金の大半を寄付という形で教会へ渡したのだ。


 そして何を思ったのか、オルフェ自身も店に埋まった今までの稼ぎを全て教会へ寄付すると言い出した。

 オレの猛烈な反対にもめげず、『次の街でまた稼ぐから』という言葉に今回はオレが折れる形となった。


「変にケチって騒ぎ立てられたら、お前のこと悪く言う奴が出るかもしれねえだろ。『よそ者が悪魔を呼んだんだ』ってな」

「うん……本当に迷惑をかけてしまったよ」


 一ヶ月前に起きた『悪魔の島ディア=ボラス』の天変地異。オルフェ曰く、あれはオルフェの父親が息子オルフェを島から逃がすために戦闘を行ったために起きたらしい。


 その単騎で天変地異起こせる悪魔を倒したのが、キマイラ始め悪魔連中が新たが『神』と崇める悪魔。

 そいつこそが『箱舟』にオルフェを乗せて、天の国へ攻め込もうとする計画の主導者らしい。


「本当に何にもわからねえのか? その自称『神』」

「うん。母さんが家に結界を張って、僕が悪魔たちに攫われないようにしてたから」

「で、お袋さんが亡くなって、結界がなくなった所を襲われて逃げて来た、と」


 無言で俯くオルフェの頭を、オレはわざと乱暴に撫でる。


「わっ、ちょっとシモン!」

「なあに安心しろ! 星都に着くまでも、着いてからも、キッチリ守ってやっからよ。 凄腕祓魔師エクソシストシモン様に任せとけってんだ!」


 オレはオルフェと肩を組み、目を合わせてニッと笑う。


「独りにしねえよ、絶対に」

「……うん!」


 見上げれば、天の果てまで見通せそうな青空。遮るもののない其処を、一羽の鳥が羽ばたいていった。


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DUO《デュオ》(書籍化タイトル『誓星のデュオ』) 鳩藍@『誓星のデュオ』コミカライズ連載中 @hato_i

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