【6日目】村民


気がつくともう辺りは夕暮れだった。

ひたすらに魔素を掴む感覚を探り、確かな手応えがあった。

なんと言うのか…自転車の乗り方を1度覚えてしまえば忘れない的な感じだろうか…。

目を閉じなくとも確かに感じるようになった。


今だって…、馬休憩になり荷馬車が止まったので宮国さんが近づいてくるのが判る。


宮国さんはやはり凄いのか…ハッキリと判るほど全身から圧縮した魔素を発している。…はずだ。


荷馬車から降りるとやはり感じた所に宮国さんがいる。


"いける…。"


僕は顔がにやけるのを止められない。



マーレル君を探しだし、魔術を使って貰う。


ん?…判るが。

宮国さんが常時纏っている魔素より、発現時ですら薄く感じる…。

まぁ、しかし判る…。

うん、ちゃんと判る。


目を閉じ、好きなタイミングで発現するように頼んでみる。

"感じたら消す…、その領域を…。"


…ピクッ。今だッ!!


「えっ…発現に失敗しました…。えっ?」


マーレル君がビックリしている。


"良し!発現失敗と思えるほど即消せた…。良し!!"


僕は確かな手応えを感じ、マーレル君にお礼を言った。







団員から、本日の停泊は村になると聞いた。

どこか団員が難色を示している。

どうにもそれが気になり訳を聞いた。


食料物資の問題からどこも厳しく補給を積んだままあまり街や村に近寄りたくないそうだ。

分けたくてもこちらとて戦況を左右される物資で分けれないと言う事らしい。

正直、夜営にしたいらしいが、どうにも馬車の一団を止められる見晴らしのいい場所がないらしく、先の停泊所らしき所には流石に着けそうもない事から苦汁の選択と言えるみたいだ。

急ぐあまり無理を押した弊害と言えるのだろうか…。


やはり停泊所らしき所は無人に近かったのだろう。

どこか寂しげに見えたのはそのせいだったのかも知れないな…と、今さらながら思った。


なんとなく心配も判るが、正直僕は軽く聞き流していた。




日暮れ間近に村へと到着し、団長があちらの村長と話す際、荷馬車が止まった。

僕は荷馬車から降り、この世界に来てはじめての村民と言える人々を見た。


そして、心配の意味がわかる…。


皆が皆…ガリガリだ。

これは団員も心苦しいに違いない。

薄暗い中で見える村民は痩せこけているせいもあり、目だけギラついて見え、怖さすら感じる。


僕は視線から逃げるように荷馬車へと戻った。


空き家を数件借りて停泊するとの事になったらしい。

中央を走る大きな道を村の奥の方へと一団は荷馬車を進める。


どれぐらいの人が住んでいるのだろう…。

平屋がズラッと並んで見える。

100までは無さそうだろうか…。

ホロより伺う景色からはそう感じた。


…村民の姿は意識的に見ないようにした。


村の再奥に少し開けた場所がありそこへ荷馬車は止まった。

早速、荷馬車脇では焚き火をして警戒に当たるようだ…。

荷馬車の奥は村全体を囲む木の杭で出来た壁がある。

村を出るためには中央を来た広い道を戻るしかなさそうだ。


僕は少し気分が重くなる。


村を抜けたとも思える広目の場所から荷馬車よりすぐの空き家へと案内され入るとホッとした。


"…あの視線に晒されるのはキツい。"


その後、村民の皆へどこか申し訳ない気持ちで僕は食事をとる事となる。


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