第30話 守護者の鎧
◇
「驚いた。まさかこの私が奥の手を使うことになるとは……」
そう言ってローガンは目の前の敵を見た。
イノシシのような頭部をもつ、二足歩行の亜人。誇り高きオークの戦士、ジャジャンを。
冒険者ならいざ知らず、騎士であったローガンにとって、オーク種と戦うのはこれが初めてであった。
侮っていた。
オークという種を
否
目の前の誇り高き戦士の実力を。
いくら身体能力が高かろうが、長年鍛え上げた技術で圧倒できると思っていた。
事実、最初の数手では身体能力の高いジャジャンをローガンは圧倒することができた。
彼は真の戦士だ。
技術云々ではない。
どんな絶望的な状況でもあきらめないハート、自分の持てるカードから最適な一手を導き出す応用力、そして勝利への貪欲さ。
相手が真なる戦士ならば、こちらも本気を出さなくては例を失するというもの。
そう考えたローガンは展開するは、彼の切り札。
"守護者の鎧"
そう呼ばれる金色のオーラは、ローガンが生来持ち合わせているスキル。
体より生じる金色のオーラは、物理攻撃・毒・魔法……ありとあらゆる攻撃を防御する。
魔法を使えぬ、ただの騎士であったローガンが ”英雄” と呼ばれるようになったのは、このスキルの存在が大きい。
かつて最強と呼ばれた竜王の攻撃ですら防ぎきった ”最硬のスキル”。
ジャジャンの一撃がいかに強力であったとて、破れるものではないのだ。
「戦士ジャジャン……残念だが、このスキルを使った以上、私はこれ以上の苦戦は許されない。このスキルの前に散った数々の英雄たちの魂が、私に敗北を許しはしないのだ」
そう言ってローガンは駆け出す。
剣を握りしめ、一気に相手との距離を詰めると、それに反応したジャジャンの攻撃がカウンター気味に襲い掛かってくる。
凄まじいスピードの一撃。
早いだけで単調なその一撃は、ローガンの技術をもってすれば回避することは簡単だろう。
しかし、ローガンは避けない。
否
避ける必要が無い。
振り下ろされたこん棒の一撃は、ローガンを覆う金色のオーラに弾かれ、あっけなく撃墜する。
攻撃を放った後の無防備なジャジャンの首元に、ローガンは悠々と剣を突き付けた。
「勝負あったかな?」
ローガンの言葉に、戦士ジャジャンはがっくりと項垂れるのだった。
◇
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