第13話 蜘蛛の巣
数日後、地下まで下りたゼナは折り重なって転がる二人に素直に驚いていた。
「これはまぁ、なんとやら」
その顔に微笑が浮かぶ。
まだぐっすり眠るカラを銀輪の装飾がついた杖の先で指し、薄く目を開けるラシウスに問いかける。
「すごいな。どうやってここまで懐かせたんだい?」
ラシウスは横目でゼナを見ると、慎重に上半身を起こした。
カラの頭を手で支えそっと地面へ置く。
「知らない。寝ていたら枕にされた」
「へぇ。ちょっと嫉妬しちゃうな」
ゼナが杖先でつつくと、カラはパチリと目を開き長剣を引き摺りながら遺跡の奥へと行ってしまった。
「で、体はどう?楽に座れるまでにはなったみたいだね」
にこやかに声をかけても、ラシウスの全身からは当然ながら警戒の色が滲み出ている。
ゼナは顎に手を添えると、いたずらっぽい弧を唇に描いた。
「出来るだけ君の体調を細かく教えてくれると助かるんだけど。団長さんが首を長くして君を待ってるからね」
効果は
ラシウスは警戒の上に
「何故お前が団長を知っている」
「お前じゃなくて、ゼナ。君もあの団長さんみたいに、もう少し他人に興味を持ったほうがいいんじゃない?」
「答えになってない。団長に何をした?」
ゼナは杖の先をラシウスの肩に当て軽く押し返した。
「人聞きが悪いね。君の為にわざわざ足を運んであげたのに」
「俺の為?」
「この際だから君にも言っておくけど、僕はさっさと君にここから出て行ってもらいたいんだ。そして二度とこの遺跡には近づかないで欲しい」
それは願ってもないことだが、ラシウスにはここで成さなければならぬ事がある。
頷く代わりに疑問を口にした。
「カラは、カラとお前は一体何者なんだ?」
「それを聞いてどうするの?事情を知っても悪魔退治はやめないのでしょ?」
なるほど。
ゼナはこちらの事情もそこそこ知っているようだ。
質問を変える。
「あの橋の上にいた奴らはどうなった?橋ごと爆発したように見えたが」
「ああ、あの人たちも全員崩れた橋と一緒に遺跡の底へ落ちてもらったよ。もうとっくにカラが食し終えてるはずだ」
ゼナの瞳に妖しい気配が漂う。
「この遺跡は蜘蛛の巣のようなものだ。地下に宝があると聞きつけた者、カラを殺して報酬を得ようとする者が虫のようにバラバラと集まり引っかかる」
ラシウスの眉間に杖の先が向けられる。
「欲に目が眩んだ者達を僕がハイエナの巣へ案内し、この地下へと叩き落とす」
そうすればカラが食べ物に困らないと趣味悪く笑いながら言う。
たまにカラが自分で外まで行って食べ散らかすのが困ったところだとも。
「僕はカラにここにいて欲しいだけ。それ以上でも、以下でもないよ」
鉄を引き摺る音が近づき、ゼナが話を締めくくる。
「じゃあ、またねラシウス。とりあえず団長さんには君が元気そうだったと伝えておくよ。カラをよろしく」
「おい、ゼナ!!」
ゼナは引き止める間も無くカラとは反対方向へと姿を消した。
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