第27話 改めての再会
私がネリアに案内されて向かったのは、豪華な部屋だった。
緊張を隠せずその部屋に私が入る。
すると、そこには一人の長身の男性の人影が存在していた。
私が口にしようとする前に、その人影は口を開いていた。
「久しぶり、いや、昨日ぶりというべきか?」
その言葉に、私は思わず唇を噛む。
二回目だというのに、どうしようもなく心が乱されるのを私は感じていた。
「よく眠れたか、マーシェル?」
顔をあげると、そこには記憶よりも背の高くなった彼がいた。
侯爵家代々の金髪をしたクリスと違い、黒い艶やかな髪。
そして、鍛え上げられた長身と、髪が長ければ女性にも見えるだろう美麗な顔。
それは確かに彼の面影を濃く残していて。
……けれどその目は、かつてからは考えられないほど冷たい光をたたえていた。
「っ!」
かつてアイフォードは、侯爵家の中で私に笑いかけてくれた数少ない人だった。
その記憶があるからこそ、私は目の前のその姿に、思わず息を呑んでいた。
そんな私に、アイフォードは笑みを浮かべる。
口元だけ歪ませた、形だけの笑みを。
「そんな怯えることはないだろう? マーシェル。一応、お前のことは俺の客として扱うよう言っている。ひれ伏す必要などないんだぞ」
それは気遣いにも聞こえる言葉だった。
けれども、私は気づかずにはいられない。
その言葉に、どうしようもない複雑な感情がこもっていることを。
……そして、その理由を私は知っていた。
かつて裏切った私への複雑な思いが、その言葉にこもっていると。
かつて、アイフォードはクリスと侯爵家当主の座を巡って争う立場だった。
クリスなど比にならない能力を持っていたアイフォードは、その前侯爵家当主にも目をかけられていた。
けれど私は、前侯爵家当主に掛け合い、強引にアイフォードを次期当主候補から脱落させた。
それも、アイフォードをだまし討ちにするような形で。
そして、その時から私には決めていることがあった。
──もう、アイフォードに今までのような扱いをすることなど許されはしないと。
「……いえ、客などそのような扱いをしてもらえる立場など私にはありません。どうか、召使いのようにお使いください」
だから、私は咄嗟に跪いていた。
そんな私に対し、少しの間アイフォードは何も言わなかった。
けれど、少ししてアイフォードは声を上げて笑い出した。
「ふふ、ふふふ」
徐々に大きな声を上げて笑うアイフォードに、私は反射的に顔をあげる。
そんな私を見て、目だけ一切笑っていない表情でアイフォードは告げた。
「よく立場を分かっているじゃないか」
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