ライフライン

 俺が通うマウトストア戸来町店は、5大コンビニエンスストアのアミアゲマートのグループ会社に当たる。何故アミアゲマートそのものでないかは、日本全国各行政と特殊締結を一手に担っているその分野に当たる。

 実際のところは僻地補償金がなければ日頃の経営も危ういので、IR的に別会計にしようが何よりの思惑だ。


 マウトストア戸来町店は、俺が関東圏で働いていた頃に、戸来市営墓地周囲の代替わりで閉じた墓石店を買取り、見積もり来客数に見合わない中規模の店舗として真っさらに開店した。


 開店はしたが、住宅はまばら。そして頼みの戸来町市営団地は隆盛期の1/3が今もやっとで、青森市が募集を掛けても、何も無い準限界集落なので余程の事で無いと入居者がいない。都市圏のコンビニの様な大繁盛は夢の夢のもう一つ先だ。


 そこの店長は、中学校サッカー部の小比類巻善次先輩で格安の開業資金で主人となった。格安は良いがお客が来ないのに生業にして良いのかはある。

 俺は善次先輩から、暇なら手伝えと半ば強引に履歴書を書かされ、簡易面接後10秒で採用になった。人助けなら止む得ない。


 いざ働きはすれど、華のあるコンビニのシステムそのものではなく、やや忙しい時間帯以外は閑散としたもので、昼でも法的ギリギリかのワンオペ勤務になる。


 品揃えは、中規模店舗とあって、やや近所の地元展開の限界集落唯一スーパーのネザースーパーに結構迫っている。パッケージされた生鮮に、見落とりのしないデイリー品、何よりコンビニならではの新製品も何故か充足される。


 そして、戸来町には書店が無いので、書籍コーナーは1/3のスペースを与えられている。これが結構大きく、書籍を手に取る習慣が消えない限り、ここだけは閑散の雰囲気はない。ただ月一の棚卸しはワンオペでは少々堪えるものがある。 


 全般的に勤務がきついかどうかは、準限界集落と然る理由から集ってくる人間関係に慣れれば、最低賃金の範囲内でやや許せる範疇に収まる。


 ただ通勤距離が7kmと、自家用車は持っていないので市営バスで1・2時間に1回のバスに乗れば良いのだが、夜勤若しくは早朝に動いてる訳でもなく、スマートフォンで音楽を聴きながらの長い徒歩通勤一択になる。


 原付か自転車で通えば良いも、厳冬となれば雪中行軍の徒歩通勤で何処かで心が挫けるのを避ける為に、何としてもの徒歩で辿り着く気構えのみを頼りに日々自らに言い聞かせている。それが無いと間違いなく俺は凍死する。またネガティブ思考のリピートか。ここはやや避け、前を向いて深雪を踏み抜いて行こう。

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