第一章 命運をかけた舞踏会⑤
エリスたちのファーストダンスが終わると、割れんばかりの拍手が
(よかった。
エリスは小さく呼吸を整え、周囲を見回す。みんな
ちらりとクラウィスを見つめると、彼は青い瞳を
「お見事でした」
「あ、ありがとう」
思わずドキッとしてしまい、エリスは顔を
(きっとあなたが相手だったから……死に物ぐるいで
この一か月の出来事を思い出して心の中で涙する。彼と過ごした時間のおかげで
ただクラウィスはいつもよりエリスの仕草や動きに沿うようにリードしてくれ、今までで一番
このあとはほかの参加者たちが踊りを楽しむため、エリスは彼らの
すると
(まさか全員と踊るつもり……!? 少しは断りなさいよ)
だが近くでアルフリートが目を光らせていたため、
イルミナはこの世界でも
一方でエリスに縁談はなく、ましてやこの場でダンスを申し込む
(さて待ちに待った情報収集の時間ね!)
大広間の中央には人の輪ができていて多くの人がダンスの順番を待っているが、壁際では貴族の当主同士や夫人同士で
また
(誰から
エリスは目を
(もし私がイルミナとの関係の修復を
「クラウィスさまは私以外の方とダンスを踊りませんの?」
会場には多くの衛兵や王宮騎士が控えているため安全は保障されている。さりげなく一人になりたいことをほのめかしてみると、彼は困ったように
「エリスさまに悪い虫がついてはイルミナさまに顔向けできませんので」
「周囲には
わざと
「花は一輪あれば十分ですから」
お前を野放しにするわけがないだろうという意味に
(まあいいわ。クラウィスさまが
そう思いながら、エリスは近くにいた
「あ、あなたの近状はいかがかしら? ほら、何か変わったこととか」
もっと歓談を楽しみましょうよという意味を込めて発言してみるものの「特に変わりはありませんでした」「みな息災です!」と返ってきただけで、心の
(待って、お願い行かないで)
彼らの仕事ぶりや領地運営の仕方もクラウィスからの課題でしっかり学んできた。それを生かしたいのに、上手くいかない。
そのときだ。
「そうそう、お聞きしましたよ。お二人とも新事業が上手くいっていると。イルミナさまも興味を持っておられました」
「もうイルミナさまの耳に入っているのですか?」
「ええ。期待値の高い情報をお伝えするのが
クラウィスは
(すごい……)
いや、感心をしている場合ではない。エリスは必死に考え込む。環境大臣と伯爵は
「もしかして……
「エリスさまもご興味があるのですか?」
環境大臣に
「廃棄されるものに魔法で手を加えて、家の
私としては
その後は
(なんかいい感じに終わったけど、おそらく二人はシロね……よし、次!)
エリスはこの勢いに乗って次々と気になっている人たちに声をかけていく。彼らの
(ふうん。やるじゃない)
クラウィスへの称賛を
エリスはその先に視線を向けて表情を
(……お父さま)
第十四代国王であるウィルトスは今年で四十八歳となるが、心臓の病を
その
エリスは小さく息を
(私の様子を見に来たというわけ?)
ここ数年でまともに会話をしたのはあの処刑のときくらいだった。仕方がない。ここは悪徳の
エリスもまた
「いかがお過ごしですか。国王陛下、フォルスターさま、ハインツさま」
この一か月でエリスの立ち居
「ああそうですわ。改めてお礼を。私とイルミナのためにこのような
国王は小さく
もっとくどくどと文句を言われると思っていたため、二の句を待ったが続かない。
(すでにかける言葉もないの……?)
エリスと国王のあいだの空気が張りつめた。それを
「先ほどのファーストダンスは
それに同調するように大神官のハインツも頷く。
「ええ、きっとこの祝いの場を見守る神々も喜んでおられることでしょう」
彼は礼服ではなく神官の特徴である純白の立ち
(イルミナとの仲を強調してもフォルスターさまもハインツさまも顔色に
もともと彼らはエリスに対して
エリスは
(時間の
そろそろ切り上げようとしたとき、国王がぽつりと
「ユーリスに似てきたな」
エリスは笑みを絶やさないまま手のひらに
ユーリスは
彼女の髪は
(いつだって私のことをちゃんと見てくれないのね)
取ってつけたように言葉を並べないでほしい。
エリスはクラウィスを連れてこの場を離れた。その際にフォルスター卿からは「慣れないことは
(て、手ごわい……!)
どっと
エリスは小皿に野菜の
ちらりとクラウィスの横顔をうかがうと、彼は口角を上げて
(……意外)
もっと
「エリスさま、カルモのタルトが無くなりそうですよ」
「え、本当!? 確保してくるわ!」
エリスは
(どうしてカルモのタルトを
そんなに表情に出ていたのか。急に
一度
彼女が
(魔法で足のふらつきをごまかしているのかしら?)
あれだけ
わずかに顔をしかめたとき、視界の端に深い紫色の髪が見えた。
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