期末テスト - 101日目 -
ついにやってきました期末テスト。やってきてしまったか。嫌だなぁ。まぁでも今回は割と勉強した方だから頑張ろう。
「矢島君、勉強やった感じはどう?」
「どうもこうもないですよ。目で見える手ごたえはないですから」
「確かにそうだけどね。じゃあ始めるわよ。最初は・・・英語ね」
テストをやるところは前回と同様、保健室だ。保健室でやって大丈夫なのかね。前回はやってる最中に誰か来ることとかなかったんだけど、いや、変な想像してると本当にそうなりかねないからやめておこう。
まずは1教科目、英語・・・おー! やっぱ勉強したからか? わかる! リスニングはもちろんだが筆記もそれなりにわかる。これは前回よりいっただろ。
2教科目、物理・・・何で物理なの? やらなくていいよ。俺絶対使わないし。でもこれも結構分かった。おかしいな、前回より簡単な気がする。
3教科目、古文・・・今回は前回の反省を踏まえて漢文もしっかりやりましたから。そしてやっぱり思った。これは暗記ですね。用法とか意味とか特に。
4教科目、保健・・・目の前に本渡先生がいるから教えてもらおう・・・まぁ出来るわけないですよね。前回も同じこと思ったけど。それにしても今回のテストは簡単な気がする。
ということでいったん昼休憩だ。面倒だからここで昼食べよう。と思っていたらとたんに保健室に人が来るわ来るわ。何で今日人多くない?
「矢島君、悪いんだけどお昼は別のところで食べてもらえる?」
「わかりました」
追い出された。これじゃあれだよな。午後出来なくね? それと追い出されて俺はどこに行けばいいのか。いつもいる人たちも今日はさすがに教室で勉強しながらだろうから。うーん・・・
「お前ここで何してんだ?」
「その声は・・・駿か?」「ああ」
何というタイミング。駿が来てくれたということは俺は保健室の前で弁当片手に突っ立ってる心配もなくなったというわけだ。
「さっきまで保健室でテスト受けてたんだが昼休みになって急に患者が増えて追い出されて途方に暮れてたところだ」
「そうか、・・・ほら、掴まれよ」
「助かったわ」
そして駿と一緒にステージの方に移動した。いつもだったらここで大勢の人と食べているのだが、なんかこれがいつもっておかしいな。まぁいいや、今日は駿と二人だけ。なんか珍しい組み合わせだな。
「あれ? 光ちゃんか。何でまたこんなところに」
「本橋か。そういえばお前らよく一緒にいたよな。てことは」
「亀井もいますよー」
やっぱこの三人セットだったか。ここにいるってことは購買に来た帰りに俺を見つけたってところか。でもそれなら慎もいるはずだよな? あいつが購買のところにいないわけがない。さては俺がいるってことに気づいて駿たちをよこしたな。あいつ・・・この後覚えてろよ。
「光ちゃんって今日のテストどうやって受けてんだ?」
「保健室で本渡先生のリスニングを聞きながらやってるってところだな」
「はぇー、器用なことするなぁ」
「全教科リスニングってマジで大変だからな」
「俺リスニングダメダメだからそんなテスト受けたくないわ」
感心している本橋。そしてリスニングが嫌いと公言した亀井。あそうだ。
「なぁ、今日のテストってぶっちゃけどんな感じなんだ? 簡単か難しいか」
「それは駿だな」
「・・・難しくなった。前回よりは。まぁ中間と期末って違いもあるから当然だろ」
「だそうだ」
「やっぱそうか」
「なんだなんだ? もしかして出来なすぎてアカーンってことになってんのか?」
「ちげーよ、逆だ。やけに簡単なんだよ今回のテスト」
「・・・俺と変わってくれ!」
「断る。もしそんなことしようものなら亀井の名前だけ真ん中にでっかく書いて白紙で出すことになるぞ」
「それは勘弁してくれ!」
見えないんだからしょうがないよな。でも今回は難しいのか。じゃあ俺が簡単って思ってるのはやっぱ勉強したからか。
「それにしても光ちゃんが一人って珍しいな」
「たまにはいいだろ。静かだし」
「まぁいつもいっぱいいるからな。ちなみに聞きたいんだけど。光ちゃんって誰が好みとかあるのか?」
「あ? 知らねぇよ。言っとくが俺目見えねぇんだぞ。あいつらもそうだしお前らの外見もさっぱりなんだぞ。優劣なんかつけられるか」
「確かにな・・・じゃあ内面はどうだ?」
「駿。本橋ってこういうキャラなのか?」
「ああ、恋愛ごとになると飛んでいくな」
「駿の苦労が少しわかったわ」
「恋愛話は聞いてて飽きないからな。で、どうなんだ?」
こいつ乙女かよ。恋愛話なんか女子同士で修学旅行中にする話だって聞いたぞ。実際これも本当なのか非常に怪しいが。
「どうもこうもねぇよ。別に恋愛ごとにまで発展はしてねぇ。親友ってだけだ」
「本当か? 別の人に聞いて確認するぞ?」
「くどいぞ」
「まぁテスト終わった後にでもじっくり聞くか」
「テスト終わったら部活あるじゃねぇか。わざわざ部活終わるまで居残りなんて嫌だからな」
部活終わった後話すってなったら一体何時になるんだよ。それこそ嫌だよ。何でテスト終わった後も遅くまで残ってなきゃいけないんだよ。
「あれ? 言ってなかったか? 俺新聞部なんだよ」
「は?」
新聞部? 結構前に聞いたことがあるな。佳那が咲彩の情報売るとか何とかで新聞部のことがちょこっとだけ出てきたな。え? マジ? 本橋って新聞部なの?
「まぁ実際は兼部なんだけどな。ちなみにもう一つはパソコン部だ」
「パソコン部・・・ド陰キャ引きこもりがいっぱいいそうな部活だな」
「光ちゃん、偏見は良くないな。バツとして今度取材を受けろ」
「断る。俺はそんな暇じゃねぇよ」
「嘘つけ。テスト期間以外いつも暇そうじゃんよ」
「おい風紀委員、取材の強要はプライバシーの侵害で訴えられるよな?」
「確かにそうだけどね・・・俺はともかく尾鷲さんはいいって言うと思うよ。俺より尾鷲さんの方が発言力あるから」
「何上下関係認めちゃってるんだよ。人の尻に敷かれるのって良い心地しねぇだろ」
「別に尻に敷かれてはないからな! そこ間違えんなよ!」
はぁ・・・今のやり取りを見てても思う。亀井と本橋は面倒なやつだ。ちくしょう、本橋なんか前の席でめっちゃ気を遣ってくれるからいいやつだと思ってたのに。そうだな・・・よし、決まった。亀井は尾鷲の尻に敷かれた効力ゼロの風紀委員。本橋は恋愛話に目がない面倒記者ってことでイメージをつけておこう。ちなみに駿は寡黙でかなり頼れるけど近づきにくいサッカー青年って感じだ。まぁ他の人にも各々ワンフレーズの称号みたいなものは考えてあるのだが言うと確実に怒られるのでテスト終わってからで。もしくはインタビューの時にでも言おう。本橋が守秘義務を守ってくれるなら。
「ちょっと保健室行って聞いてくる。この後どうするか聞いといたほうがいいだろ」
「あ、ああ」
本当は俺が聞きに行くはずなのに駿に先行かれた。この二人になっても話すことはないぞ。恋愛話? ない。それ以外なら話してもいいが。
少しして駿が帰って来て
「午後は部屋移動らしい。先生は本渡先生で変わりないようだが。ここにいるってことも言っといた」
「ありがとよ」
他二人と比較すると駿がまともすぎる。なんだろうな、気遣いが上手いと言えばいいか。ここぞってときに的確なことをやってくれる。慎も似たような感じだがあいつとは違った意味で頼れるな。さてと、テスト後のことはテスト後に考えよう。よし、午後あと1教科やりますかね。
× × ×
午後1教科だけというのが救いだったがやる教科が嫌なやつすぎて相殺された。数学・・・絶対眠くなるやつじゃん。腹膨れた後の計算とか絶対寝るからな。
で、やる教室なのだが保健室隣の空き教室になった。そこに本渡先生と二人、まぁ今保健室には寝ている人がいるらしくいつでも行けるように隣の教室になったのだが何だろう。その光景を想像してみると入学面接を受けている光景を思い浮かべた。そんな中やるのか・・・
そして肝心のテストの内容なのだが・・・うーん・・・確かに難しいが解けないほどではなかった。あれ? おかしいな。前回のテストなんか半分くらい当てずっぽうでやっていたのに今回はちゃんとやっていることが理解できる。もしかしたらもしかするかもしれない。
× × ×
「終わったー」
「はいお疲れ様。この教室閉めちゃうから早く出てね。私保健室戻らないといけないから」
「了解でーす。また明日もよろしくお願いします」
特に片付けるものもなかったので本渡先生から鞄をもらって教室を出る。その後すぐ本渡先生は保健室に戻って行ったが、俺はどうしようか。まぁあいつらが来るまで待つか。
しばらく待っていると
「おう光ちゃん。待ったよな」
「別に待ってねぇよ。待つのにはもう慣れたしな」
慎がお迎えに来た。あれ? 慎しかいないのか。
「他の人は教室で勉強だ。さてと、俺たちは家でやりますか」
「やりたくねぇなぁ」
「あと一日の辛抱だろ。それくらい頑張れよ」
その一日が嫌なんだよ。こっちとしては一刻も早く終わってほしいのに。
俺の家に行く最中
「そうだ光ちゃん。昼休み駿たちと一緒だったよな?」
「あ? そうだがあれ絶対お前が仕込んだんだろ」
「バレたか」
「たく・・・何が目的だ?」
「俺としては光ちゃんの味方を増やしたいんだよ。まぁ最初よりは増えたけどな、これ言っていいのか・・・まぁ光ちゃんだからいっか。偏りすぎてんだよ」
「その原因の大半はココと葵だと思うんだが」
「というわけで肩身の狭い思いをしないように光ちゃんに男友達を増やしてもらおうと画策したわけなんだよ」
「まぁやってること自体はありがたい事なんだが、もうちょっとメンバー選べなかったのか?」
「同じクラスメイトなのにひどいこと言うな。亀井ももっちゃんもいいやつなんだぞ」
「ファーストイメージは良くねぇぞ」
「まぁ亀井はともかくもっちゃんはあれだよな。でももっちゃんだってずっと恋愛の事ばかり考えてるわけじゃないからな」
「じゃあ他に何考えてんだよ」
「どうせ近々言われるしいいか。もっちゃんが光ちゃんに取材を申し込むつもりなんだ」
「それ今日言われた。恋愛がらみだから断ったけどな」
「はぁ・・・やっぱりか。実はそうじゃないんだよ」
「は? ほかに何があるんだよ」
「じゃあちょっと新聞部の説明もするか。新聞部は定期的に掲示板に貼る学校新聞とかの作成をやってるんだ。あとは生徒会広報の補助とかもだな。で、その学校新聞なんだけど、その中のコラムに「校内バリアフリー化に向けたインタビュー」ってのがあるんだよ。もっちゃん曰くこれいまだに仮タイトルらしいんだけどな。そこでは校内にいる障がい者の実際不便だと思ったことだったり、自分が障がいを持つに至った経緯なんかを掲載してるんだ。もっちゃんはそこの記事を任されててな」
「で俺を取材するってことになったのか。何だよ、まともじゃねぇか」
「もっちゃんは恋愛以外だったら普通だぞ。何でも校内全生徒の相関図を作りたいとか言ってたな」
「意味が分からん。そんなのつくって何が楽しいんだよ」
「それはもっちゃんに聞いてみないとわからないな」
なるほどね。まぁそういうことなら・・・
「まぁいいか。別に隠してるわけじゃねぇし。ただあれだな、俺がいいとしてもそれ話すのにお前とココの許可がいるな。それ抜きじゃ話せねぇだろ」
「俺は光ちゃんに従うからいいよ。あとはココだけどまぁココも大丈夫だと思うな。ああ、もう一人許可がいるな。そっちは俺が聞いとくか」
「もう一人? かえでの事か?」
「いや、かえでちゃんじゃない。まぁそのうちわかるだろうよ」
「もったいぶらねぇで話せよ」
「これは相手側が話す気にならないと無理だな。でもこれだけは言える。二三日中に知ることになるだろうな」
何だ? あと一人って。それに二三日中に知るとか言ってるってことは慎が知ってるのは当然。そして俺も知っている。さらに言えば結構身近にいる人物な感じがする。うーん・・・考えてもわかんねぇから今はとりあえずテストに集中しよう。
× × ×
今日はテスト勉強で終わり・・・というわけではない。
「なぁ光ちゃんかえでちゃん。これで終わりなのか?」
しびれを切らしたか。そう、今日は慎の誕生日。何かあることを予告しておいたが今のところ何もない。さてと、始めますか。
「もう少ししたら来るようです。それまで待っててください」
「なぁ、俺何されるんだ?」
「それはこの後のお楽しみだな」
今回の誕生日は俺が色々仕込んでおいた。まぁみんなそれで納得してるから。葵と雛が「性格わる・・・」とか言ってたけどそんなの知らん。それに相手慎だから、他の人だったらさすがにやらないよ。
「お邪魔しまーす!」
来たな。今回の参加者は多いぞ。まぁそんな長い時間じゃないし。さてと、定位置に着いたところで
「誕生日おめでとー!」
ココと橋倉が一番盛り上がってる。その隣ではほどほどのテンションの葵とわたりん、雛、佳那。いつも静かだからよくわかんないけど尾鷲も祝福しているだろう。かえでも同じ感じか。
「つーわけで今日は手っ取り早く済ませるぞ。テスト勉強もあるしな。あと一日ズレればよかったのによ」
「それは無理だ。でも先に言っとくか。みんなありがとよ。それにしても・・・何人かいないな」
何人かいないのにはちゃんとした理由があります。まぁすぐわかるから。
「はいまず誰からいく?」「はい! 私から!」
「ありがと・・・紙?」
「ふっふーん! いつも慎ちゃん購買でしょ? ということで私からは手作りお弁当引換券5回分!」
「なんかすごいユーモアあふれるセンスだな」「ゆーもあ?」
ココからのプレゼントは慎へのお弁当引換券、これは慎嬉しいだろ。ネタ枠ではあるが素直に嬉しいやつシリーズをココにはやってもらった。でもココはこれだけじゃない。それは後でな。
「次雛いきます。こちらをどうぞ」
「お茶菓子か。ありがとな」
慎はとりあえず食べ物あげれば基本的に喜ぶ。少し前にこう言ったがまさか雛もそうするとは。ちなみに雛のプレゼントは監修してません。
「ちょっとそれ私からでもあるんだけど」「先に言ったもの勝ちですよ、かな」
雛と佳那は一緒に選んだのか。仲いいじゃん。いっつも喧嘩してる割に。
「じゃあ次私ね。はいこれ」
「これペンか?」「そう、生徒会で使ってるの見たとき、ちょっと古そうだったから新しいのをって思って。おせっかいかもしれないけど」
「いや、ちょうど新しいの買おうとしてたんだ。ありがとな、アオ」
うん? 何だ今の感じ。これはちょっと待てよ・・・もしかしたらこの二人・・・時期尚早だとは思うが今後もしかしたら何かあるかもしれない。これは予想外の収穫だ。あと雛あたりが気づいてそうだな。雛もかなり敏感だし。
「つぎわたし。これどうぞ」
「おー! これすごいな。ステッカーか。バックに貼るよ。ありがとな」
わたりんのプレゼントは俺仕込みだ。
「それではマナからはこちらをプレゼントしよう。だだーん!」
「あー・・・うん、ありがとな」
橋倉は一体何をあげたのか。聞いてみたところ購買肩代わり券3枚。ココの真似じゃねぇか。いや、もっと言うと俺の考えの真似でもあるな。まぁ枚数といい用途といいココの劣化版といったところだな。
「お邪魔します」
「ちょうどいいところに来たな」
タイミングばっちり、佐藤と和田が来た。
「もう始まってたかな。じゃあ早速僕から渡すよ。はいこれ、お誕生日おめでとう」
「お! 粉末のスポドリか。助かる。ありがとな」
部活やってる人といえばもらって嬉しいもの上位に入るものだ。これは俺は関与してないからな。純粋に佐藤が選んだものだ。いや、でも佐藤が選ぶか? 言っちゃ悪いがあいつにこんなベストなものを選ぶセンスはないと思う。
「うちはこれ、本当は佐藤君とさーちゃんの三人で買ったものなんだけど」
「いやいや、気持ちだけでも十分だよ。それにこれも実用的だな。佐藤じゃなければ誰が選んだんだ?」
「僕を抜きにしないでよ」
「うちとさーちゃんが選んだの。どうかな?」
「嬉しいよ。ありがとう」
何だろう。これも聞いてみたところスクイズボトルらしい。さっき佐藤があげたのとセットだな。なるほど、佐藤、咲彩、和田の三人で買いに行ったのか。そして買いに行ったの今日だな。佐藤と咲彩が一時的に別行動になるからそのついでに買いに行ったのだろう。
「本田さーん、入ってきていいよー」
さて、ここからが面白いところだ。
「私のプレゼントはこれだ」
「わぁー! 彩夏だー! 久しぶりー!」
ココとマナがすっ飛んでいった。じゃれている二人を差し置いて
「ちょちょちょっと待て! は⁉ 何で⁉」
逆方向にすっ飛んでいったのが一人。
「おい主役、逃げるなよ」
「いやいやいや! どういうことだよ⁉」
「私からのプレゼントだ。彩夏とのお散歩権をやろう」
「い・・・くっ・・・」
いらないって言えないから葛藤してるな。これが今回のサプライズ一つ目、彩夏召喚。性格はめっちゃおとなしいってわかってたから家に連れて来ても問題ないだろということで思いついた。その葛藤シーンを見て噴いている人が数人。葵と尾鷲、わたりん、佐藤だな。
「本当に言ってるのか?」「私は嘘は言わない」「ぐっ・・・これ光ちゃんだろ」
「さあな」「覚えてろよ」
いつもやられてる仕返しだ。ありがたくもらっとけ。彩夏と散歩なんてなかなかできないぞ。しかも二回目じゃん。さすがに慣れてほしい。
「ふぅ・・・じゃあ私のやつはちょうどいいかもしれない」
「ちょっと待て今そんな余裕・・・ふららんもグルか!」
何渡したの? 俺尾鷲は普通に渡せって言ったよ。ドックフード・・・いつの間に結託してたんだ?
「これもそうだけどこっちが本命だ」
「前座のインパクト・・・ああでもこれは嬉しいな。喜ぶ余裕ないけど」
尾鷲が渡した本命。何だろうか? どうやらタオルらしい。フェイスタオル、しかもいつかのワールドカップの公式グッズ。確かに嬉しいな。俺も欲しいくらいだもん。何でそんなもの持ってるの?
「私も渡すか。彩夏散歩するだけでも十分嬉しいんだけどな」
「いやいや、お気持ちだけもらっておくよ。これって・・・」
「家にあったサッカーボールだ。使われずにしまわれてたから使ってもらえると嬉しい」
「マジか⁉ これで家でも練習できる! ありがとな」
あれ? 慎ってサッカーボール持ってなかったか? あ、でも俺の記憶だと7年前だから当てにならないな。
これで全員渡したか。あと残ってるのはかえでと俺、あと第二弾か。
「私からはこれです。その、どうぞ」
「制汗シートか。これいいな。ありがとな」
何だろう。かえでの選んだものが一番まともな気がする。かえでのは俺関係ないからな。何だよ急に俺の後ろで縮こまって。そんなに彩夏怖いのか?
「あとは俺か、とはいえ渡すのは俺じゃない。準備はココにしてもらったんだが」
「はい! 光ちゃんに頼まれて準備しました! はい光ちゃん」
「何だそれ?」
「雛も知らないんですけど」
「これ知ってるのは俺とココとかえでくらいだな。俺からのプレゼント。ロシアンルーレットチョコだ」
「何でまたそんなの作ったのよ」
「テスト期間中でまともなパーティー出来ねぇんだからせめてもの一興だ。全員参加だからな」
「は? 私たちもやるの?」
「この場にいる以上不可避だ。はいココ、中身説明よろしく」
「えーっとね。チョコの数は全部で15個、外れは5個で・・・超辛いやつ、超酸っぱいやつ、超苦いやつ、超マズいやつ、カカオ95%があるよ。さあどうぞどうぞ」
「何ですかこれ。何で雛たちまで罰ゲーム受けなくちゃいけないんですか」
「罰ゲームかどうかは食ってみねぇとわかんねぇだろ。それに俺だって食うんだから」
「なぁ光ちゃん。今ここにいる人数13人だぞ。残りどうするんだよ」
「残りは全部慎のものだ。よかったないっぱいチョコ食えて」
「お前も多く食え。計画の張本人なんだから」
「・・・わかったよ。俺と慎が2個で残りの人が1個ずつだな」
となると俺が外れを引く確率は・・・いや、計算したくない。運に任せよう。
「ちなみに聞きたいんだけどココ、外れに何仕込んだの?」
「辛いのはワサビで酸っぱいのはレモン果汁、苦いのはケールを混ぜて、マズいのは納豆入ってるよ。あと、私もわからないからね、どれが当たりか」
聞いただけで吐き気が・・・なんてもの作ってくれたんだよ。俺そこまでやれなんて言ってないぞ。外れも1個でいいって言ったのに。そしてその外れを慎に引いてもらう予定が・・・
「では一人ずつ引いていきましょう。・・・誰がいいですか?」
こんなの誰も手なんかあげないよ。
「それじゃあマナからいきましょうかね。早く終わってほしいから!」
・・・引いた、・・・食べた。・・・
「———!」
トイレに駆け込んでいった。おーい、うちのトイレだぞ。何にせよわかったことは橋倉が外れを引いたということだ。これで残りは4つ。
「・・・さあ次は誰が行きますか?」
思った。早いうちに終わらせたほうがいいのではないか?
「俺やるか。2つ食うんだし」
そう言って手を伸ばす。これだと思うのを選ぼう。まずは1つ目・・・
「なるほど、当たりはこんな感じか。普通にうまいチョコだ」
1つ目クリア。このまま残りもいってくれ。2つ目・・・
「・・・当たりだ。よし!」
「私が行くから」
そう言われ順番は葵になった。葵はどうだ?
「・・・当たりでした!」
葵も当たり。ということは残り11個うち外れ4つ。これ厳しくなってきたな。
「俺も2つ食べるんだからいいだろ、先に引いて」
そう言って慎が引いていく。出来れば慎に当たってほしい。主役なんだから。じゃないと面白くない。俺の勝手な都合だが。まず1つ目。
「・・・うっ! ゴホッゴホッ! 何だこれ! ゴホッゴホッ!」
盛大にむせている。ということは外れだな。
「何引いたんだ?」
「めっちゃ酸っぱ! なにこれ⁉ こんな酸っぱいのか⁉」
慎が引いたのはめっちゃ酸っぱいやつだった。まぁとりあえず慎が当たってくれたからよかった。俺としてはしてやったりだ。ということは橋倉が引いたのはそれ以外。何引いたんだ? ていうかいつまでトイレにいるつもりだ?
「瀬戸さん。もう一個いきますか?」
「ああいく! そうだ、お口直しだ」
そんなこと言っちゃって。また外れたときどうなっても知らないぞ。ということで2つ目
「・・・はぁー・・・外れだ・・・」
さっきほど反応してないな。ということは外れの中でも比較的マシなやつ、納豆かカカオ95%だな。めっちゃ肩落としてる慎をよそに皆さんは必死に笑いを堪えてますね。何人か堪えられてませんね。
「今度は何引いたんだ?」
「納豆・・・口の中おかしくなりそう・・・」
これはもうご愁傷様としか言えない。でも言っておこう。納豆を仕込んだのは俺じゃない。これでどうなった? あと9個、うち外れ2個。うーん・・・慎のおかげで減ったが2個か・・・しかもその2個が結構ヤバいやつ。
「はぁ・・・はぁ・・・死ぬかと思った・・・」
「マナ大丈夫?」
橋倉帰還。声かすれてるぞ。何引き当てたんだ?
「うぅー空気が苦いぃー!」
ということは苦いやつだな。苦いチョコって聞くとビターチョコを思い浮かべるのだがそれの比じゃない苦さってことか。ちょっと興味あるな。でも橋倉が苦いのを引いたことが分かったことで残っているものも判明した。辛いやつとカカオ95%・・・引くならカカオ95%だな。どんな味か知らんけど。でも絶対に辛いのだけは引きたくない。
「では次は雛がいきます。どうか外れを引きませんように」
雛がいった。さてどうなるか。確か雛は辛い物が嫌いと言っていた。もしそれを引き当てたらいったいどうなるのだろうか。失神でもしそうだな。
「・・・セーフでした。ふぅ・・・」
これで8分の2。まだ食べていないのはココ、わたりん、佳那、尾鷲、佐藤、咲彩、和田、かえで。俺当たり引いたからあとは誰が外れを引けば楽しいか考えることだが・・・俺の希望としては作った本人が引き当てるのが面白いな。ということでココ、あとは・・・普段平静を装っている尾鷲か本田が当たっても面白いな。
「つぎわたし」
わたりんがいった。さてどうなるか。
「だいじょぶだった!」
わたりんセーフで7分の2。よしよしいい調子だ。
「僕いこうかな・・・これだ!」
そういえば佐藤は選ぶセンスが壊滅的だった。ということは今回それは悪い方向に働いて外れを引き当てるのでは?
「何だこれ⁉ 全然おいしくない! これカカオ95%のものだ多分」
やっぱりそうなったか。ある意味予想通り。これからこういうことをしていくとき佐藤は確実に外れを引くということを頭に入れておこう。でも佐藤がカカオ95%を引き当てたことによって残ったのが激辛チョコ。最悪なやつが残ったな。まぁ俺関係ないけど。
「次私いくわよ! 絶対引いてやるもんか!」
次は佳那。6分の2だぞ。どうなる?
「セーフ! これおいしいわね。さすがココ」
そう、外れさえ引かなければココのチョコは普通にうまい。ということで残り5分の2。あと引いてないのがココ、咲彩、尾鷲、和田、かえでの5人。もうここまで来たらあれだな。
「なぁ、あと5人しかいないんだからもう一気にいっちゃえよ。どうせ外れ1つだけなんだし」
外れてトイレに駆け込む人が一人しかいないのだから別にもったいぶらなくてもいい。俺はそう思ったのだが。
「それいいですね。残りの人で1つずつ引きましょう」
「私最後でいいよ」「じゃあ私がいく」
ココが最後でいいと言ったので尾鷲、咲彩、和田、かえでの順に引いていった。
「じゃあいくよー! せーの!」
5人一緒にいった。さて激辛を引いたのは誰か・・・・・・
「・・・・・・あれ? 誰も反応しない」
え? 誰も反応しない? そんなはずない。だってわさびだよ。でも葵は見えてるしなぁ。
「別に入れ忘れたわけじゃないんだろ。てことは誰かやせ我慢してるな」
「やせ我慢できる量か?」
「ううん、もうたっくさん入れたよ」
こう返事したってことはココは確実に違う。あと俺の予想だとかえでも多分違う。かえでも辛いのあまり好きじゃないし。それこそわさび大量のチョコなんか食べたらいつぞやのブロッコリー食べたときみたく家の中グルグル回ってるだろうから。てことはあと3人。
「誰が我慢してるのでしょうね」「うーん、ココとかえかえとゆめっちは多分違うわね」
佳那がこう言うってことはほぼ二択、尾鷲か咲彩だな。この二人だったらもうどっちでもいいのだが。
「ふらあんでしょ?」「え?」
一番最初に見抜いたのがわたりんだった。他の人が今もなおわかってないくらいだからよく見抜いたな。
「バレた。あともう限界」「ああちょっと待ってください! 今水持ってきます!」
やっぱり尾鷲だった。
「よく隠し通せたな。わたりん以外に。そもそも隠さなくていいだろ」
俺の質問にかえでからもらった水を飲んだ後
「ちょっとくらいだったら大丈夫かなと思ったけどさすがに辛すぎた」
「ねぇねぇわたりん。何でわかったの?」
辛さにある程度耐性があるから必死に耐えようとしてたけど無理だったってことか。あとはわたりんがわかった理由だが。
「たべてすぐいくってしてたから」
ぴくっとね。でもそれを見てたのがわたりんだけって。あとの人どうした? 他の人見てたのか? それとも単に気づかなかったのか? まぁどっちでもいいが。
「よくわかったね。僕はわからなかったよ」
「さてと、息抜きはこんなもんだ。渡すものも渡しただろ。ということでこれにて解散」
「自分で仕掛けといてさっさと解散するの」
「明日もテストってこと忘れてねぇよな」「はっ! そうだった!」
そうだったじゃねぇよ。ココのやつ、チョコづくりに集中してテストできなかったは理由にならねぇからな。
「たっだいまー! うお! びっくりしたぁ! 犬がいるぅ!」
あー面倒な人が帰ってきた。
「光ちゃん、人呼ぶだけじゃ飽き足らずついには犬まで呼んだのぉ?」
「誤解を生むような言い方やめろ」「この子は彩夏っていう私の家のペットです。連れてきちゃまずかったですか?」
「全然そんなことないわよぉ。この場で犬嫌いは慎ちゃんくらいしかいないしねぇ。あ、これ言っちゃいけなかったかしらぁ」
「もうバレてますからいいです」
「あそうなのぉ。あでもかえでもここまで大きいとちょっとあれよねぇ」
「言わなくていいし!」
さっきから人のプライバシーを次々と暴露していく母親。全然俺たちのこと考えてないな。
「そうそう、今日みんな集まってるのって」
「慎ちゃんの誕生日でーす!」
ココと橋倉が息を揃えて言った。でもわかってそうだな。
「じゃあ私からもプレゼントしちゃおうかしらぁ」
そう言っていったん部屋を離れてまた戻ってきた。いったい何をプレゼントするつもりなんだ? 今までの感じだと絶対に普通じゃないプレゼントって言うのはわかっている。だって葵の時は家の電話番号、俺の時は現金ってハッタリ入れてからのアレクサだった。ちなみにアレクサは導入以降大活躍です。俺も家電操作できるっていいよねほんとに。
「私からは・・・はいこれぇ!」
「・・・これ俺だけですかね?」
いったい何を渡したのだろうか? 聞いてみると花火大会のポスターだった。誕生日関係ないじゃん。
「みんなで行ってくるといいわよぉ」
「絶対行きます! 予定空けといてねこれ絶対だよ!」
あーあ、お祭りってなったらみんな行く気満々になっちゃったじゃん。一応反論しとこうかなぁ。
「俺花火み———」「光ちゃんは強制参加!」
葵にビシッと言われココと佳那、雛、慎に頷かれ逃げられなくなった。だって本当に見えないんだよ? 俺が楽しめることって何よ。屋台飯と花火の爆音くらいじゃん。俺だけだよ、花火キレイって感想がでないの。それなのに行く意味あるかなぁ。
ということで慎の誕生日を祝う会はこれで終了。えーっとプレゼントを整理すると、手作り弁当引換券×5枚、お茶菓子、購買肩代わり券×3枚、ペン、ステッカー、スポドリ粉末、スクイズボトル、彩夏散歩権、ドックフード、フェイスタオル、サッカーボール、制汗シート、ロシアンルーレットチョコ、花火大会ポスター。なんか半分以上ネタだな。まぁ慎だからいいか。ということはですよ。この後の人たちの誕生日で何か仕込むことを覚悟してほしいという俺なりの警鐘ですよ。わかってくれるかなぁ。これ分かったらだいぶすごいと思うが。
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