日常? ハプニング? - 74日目 -
「きゃああああ!」
さて、何でここから始まっているか説明しよう。これ昨日もあったなとは思うが昨日とは理由が違う。ゴロゴロ———ザァァー
「濡れる濡れるー!」
ここまでくれば何でこうなっているかわかるだろう。ドーンッ!
「うるせぇな雷ちくしょう!」
「走って光ちゃん!」
もうここまで濡れたら諦めの気持ちの方が上回る。だからせめて今鳴っている雷にこの怒りをぶつけてやる。びしょびしょじゃねぇかこの野郎! あと音うるせぇよ!
今この場で走っているのは俺、ココ、わたりんだけだ。なぜかと言うと、すでにだいぶ暗くなっていて今にも降り出しそうだったからだ。そして今日は金曜日。アオママが迎えに来る日だった。ということで茶道部三人はアオママの車に乗って帰ることになった。同じ駅で降りるっていいよな。そういうこと出来て。
一方の俺たち三人はどうせすぐそこだからと歩いて帰るはずだった。しかし、見通しが甘かった。学校を出て5分もしないうちに雨が降り出してあっという間に強くなった。傘は? と思う人もいるだろうがこれは朝の天気予報が悪い。晴れるって言ってたじゃん。しかも午前中晴れてたじゃん。ということでこの場にいる三人は誰一人として傘を持っていない。
「うわっ! 目ん中入った! いてぇ」
「びしょびしょ!」
「もーいやー!」
もうため息しか出ない。こういう時こそ迎えに来てほしい。
ようやく着いた。何だろう。制服のままプールに入ったくらいびしょびしょなんですけど。
「おかえ・・・てびしょびしょじゃないのぉ!」
「ああそうだよ。誰かさんが迎えに来なかったせいでな」
「だったら連絡してくれればよかったじゃないのぉ。連絡来ないしこの雨だから止むまで学校残ってるのかと思っちゃったじゃない。ちょっと待って、今タオル持ってくるからぁ」
そして持ってきたタオルで濡れたところを拭いていく。もう散々だな。
「っくしゅ!」
「ココちゃんわたりんちゃん。そのままだと風邪ひいちゃうから———」
あ、俺悟ったわ。どうせあれだろ。もう何も言わねぇよ。
「お風呂でも入っていったらぁ?」
「え? えー⁉ っくしゅ!」
「あ、う、でも・・・」
「いいのいいのぉ。それに、これが初めてじゃないからぁ」
「余計なこと言うんじゃねぇよって聞いてねぇし」
俺の言うことも聞かずにココとわたりんを押して風呂場まで行ってしまった。強引だな。
「あ、光ちゃんも制服脱いどいてねぇ。着替え持ってきちゃうからぁ」
そんなすぐに脱げるか。ココとわたりんいるんだぞ。ハプニングどころの騒ぎじゃなくなるぞ。・・・マジで入ってるし。そしてうるせぇな雷。
「はい着替えねぇ。二人入った後光ちゃんも入っちゃいなさいねぇ」
「いや、いろいろと問題あるだろ」
「気にしたら負けよぉ。どうせ見えないんだしだいじょぶだいじょぶぅ」
「何をどうしたらそんな考えになるんだよ」
とにかくだ。すぐには入らない。母親に押されたとしても絶対に抵抗してやる。別に風邪ひいたっていい。ていうか俺はこんなことじゃ風邪ひかないし。
とりあえず着替え終わってびしょびしょの状態からは解放された。とはいえ、まだ危機は脱していない。お願いだからかえで帰ってこないで。また誤解を生む。多分今度こそ殺される。
「まったく、急に降り出すなんてねぇ。天気予報も当てにならないわねぇ。あ、そうそう。明日どっか行くのぉ?」
「何で知ってんだよ。俺話してねぇぞ」
「慎君が私にメッセージ送ってきたのよぉ。明日迎えに行きますってねぇ」
「慎のやつ・・・まぁいいや。文化祭のことで学校に召集かかってんだよ」
「えー? でも文化祭って夏休み明けでしょ? それに明日土曜日よぉ」
「ああ、なのに行かなきゃなんねぇんだよ。言っとくが他のやつには話すなよ。ココとわたりんにもだ」
「わかってるわよぉ。慎君にもそう言われたしねぇ」
ナイス慎。俺一人だと止められるか不安だったからマジ助かった。
「あとそうだ、来週は奈々のお見舞いがあるから全員早く帰ってこれねぇからな」
「はいはい。じゃあ日曜にでも何か買いに行きましょうかぁ。光ちゃんも来るのよぉ」
「わかってるっつーの」
他の人は各々で何か買ってくるだろう。あまり気にしないでおこう。
「ふぅー、さっぱりー!」
「湯上りココちゃんわたりんちゃん、いい感じねぇ」
一緒に入ったんかい。それとどこがいい感じなんだよ。どこもよくねぇよ。俺の立場どんどん危うくなってるよ。
「次は光ちゃん入っちゃいなぁ」
「断る。なんで今なんだよ」
「ココちゃん横持ってぇ。わたりんちゃん後ろ押してぇ」
「はい!」
俺の抵抗むなしく両脇を抱えられ後ろからも押されて無理矢理連れていかれた。はぁ、こうなったらもう余計なことは考えないようにしよう。無心で入ればいい。問題ない。無心になることは得意中の得意だ。
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〝二人とも、ホットミルクとか飲む〟
〝はい。飲みます〟
「ありがとうございます」
まだ外は大雨、矢島君は私たちが入った後のお風呂に・・・
〝はい〟
〝ふぅー、あったかーい〟
変なことを考えちゃったから用意されたホットミルクを飲んでちょっと気持ちを落ち着けよ。
〝さてと、今なら光ちゃんもお風呂に入っててしばらく出てこないだろうから聞きたいこと聞けるわよぉ。もちろん、かえでのことでも全然オッケーだけどねぇ〟
「あ、えっと・・・」
〝あれ。ココちゃんもう寝ちゃってる。早いわねぇ、さっきまで起きてたのにぃ〟
横を向いてみると本当にココが寝ていた。そのココに矢島君のお母さんが優しくタオルケットをかけてあげていた。
〝二人になっちゃったわねぇ。わたりんちゃん、聞きたいこととかない〟
今思うとこの場面を用意するために矢島君のお母さんは無理矢理矢島君をお風呂に連れて行ったんだと思った。ということは
〝じゃあ私からちょっと聞きたいんだけど。いい〟
「はい」
でも私に聞きたいことって何だろう? 用意したってことは普段聞けないことだと思うけど。
〝単刀直入に聞くわねぇ。わたりんちゃん、光ちゃんの事好きでしょ〟
的を射た質問だった。だから一瞬のうちに顔が火照るのを自分でも感じた。それを見られるのが恥ずかしかったからその顔を隠して下を向いた。
〝やっぱりねぇ。光ちゃんの目はごまかせても私の目はごまかせないわよぉ〟
見抜かれていた。隠していたつもりだったのに。顔に出てたのかな? それとも行動に出てたのかな?
〝それじゃあ確認できたところでこの質問をぶつけるわよ。奈々ちゃんの話を聞いた時、わたりんちゃんはどう思ったの〟
私・・・あの時かえかえに言ったけど・・・うん
「驚きましたけど、気持ちは変わらないです。今も、これからも」
言ってしまった。でもこれは胸を張って言えることだから堂々と言った。
〝そう、じゃあ私から・・・やっぱりやめておくわぁ。こっちにしよ。光ちゃん鈍感だから積極的に行った方がいいと思うわよぉ〟
「はい」
途中で言うのをやめたのは何だったのかわからない。でも私は私のペースで光ちゃんを振り向かせる。そう決心することが出来た。
〝たく・・・これでようやくって誰だ寝てんのは〟
〝あれぇ光ちゃん出るの早いわよぉ。もっと入っててもいいのにぃ〟
〝どうせもう一回入るのにここで長湯してどうすんだよ〟
ついさっきまで光ちゃんのことを話していたから光ちゃんの方を向くことが出来ない。見えていないけど見られたくない。そんなよくわからない感情が私の中にあった。だから見られないようにもう冷めたミルクをゆっくりと飲み干した。
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