ふにんがすデスゲーム編(1月29日)

ディオス0828

起きたらデスゲームの中、説明不要

巷で今話題となっている「among us」通称:宇宙人狼と呼ばれ、自陣営の勝利をもぎ取る為に

会議を重ねて、疑い、殺しあうネットワーク上で行なう至ってどこにでもある非対称型対戦’ゲーム’である。

あくまでゲームであり現実では無い一つのゲームのはず。


…今日も今日とて何処かでamong usが始まる…


<意識の暗転> ーnow looding …



「おはようございまーす。ここは…どこなのだ?」目を覚ますと見知らぬ天井が眼前に映りこむ

そして寝る前まで何をしていたのか全く思い出せない。でもここが知らない場所という事だけは感覚で理解できる


一先ず辺りを見渡すと簡素なベットの上に寝かされており、その付近の小さな机の上に鏡と端末が一つ置かれていた

また、身体は緑の狸をモチーフにした宇宙服だろうか。違和感はなく、動かし方もしっかりと分かっている。元からその身体であったのだと錯覚させてしまう程だ。難なく起き上がり、机の上の端末を手に取り画面を見る。そこには・・・


「貴方には総勢15名が乗る、この飛空艇”ファンティカ1号”の一員となり仕事をこなして頂きます。そして仕事を終えた時、貴方を元の場所にお返しするとお約束しましょう。」拉致されたのであろう事が書かれていた



それを読み終わると次のページに切り替わり、’仕事’についての内容が記載されていた

「貴方たち15名にはそれぞれ役割が与えられており、その役割をこなす事が出来たのなら仕事は完了となります。役割の内容は以下の通りです」


クルー陣営:11名

貴方は端末に表示された場所へ向かい、仕事を行ってください。その仕事は一目見ればやり方は身体が覚えているはずです。全てのクルー陣営がタスクを終わらせたのなら貴方の役割は完了となります。

一部特殊なクルー役職という物が存在します。特殊役職は唯一の存在であり、二つ以上は存在しません


(内訳)

エンジニア:飛行船の異常を一度だけ瞬時に解決できます。またベントを使用することができます

タイムマスター:自身に危機が発生した時、その事をなかったことにできる効果を自身に付与できます

シェリフ:特製の銃を与えられており、それを使用することができます。

ライター:自身の宇宙服に暗視ゴーグルが搭載されており、一定時間利用可能となります


クルー:7名


「なるほど、役割をこなせれば終わるのだな。で、後の四人は何の役割なのだ?」

そして次のページに移るとデカデカとこう書いてあった。



殺人鬼:4名



「殺、人鬼?」その単語の意味を理解しきる前にページは流れ、説明が記載されている

この4名にはインポスター陣営・ジャッカル陣営の二つの陣営が用意されていますが、勝利条件は自陣営がクルー陣営より多くなる事となります。


・インポスター陣営:3名

殺す武器が支給、人数差を覆すための共通の能力と個別のの特殊能力があります。個別の能力に関しては選ばれた際に詳細を確認をして貰います。共通の能力に関しては初めて能力を発動した時、全員の端末上に表記されます


・ジャッカル陣営:1名

この役職だけ特殊であり、強制的に一人だけ役職を上書きすることができます。そのものはSK(サイドキック)と呼ばれ、全てのタスク、特殊能力が剥奪されます。SKにされた時、親であるジャッカルが死に、ジャッカルとなった時に、貴方の端末にその通知が届きます。


全クルーが他にも出来る事として・・・


……


以上、ルールがこの船に乗っているクルーの全貌なります。

貴方たちのそれぞれの役割をこなし、生き残って船を降りることを”我々”は期待しています。


では、貴方に振り分けられた役職を発表します。


矢継ぎ早に映し出される事実を飲み込めないまま、しかし、その言葉だけは聞き逃してはいけない…重要な事であると何となく理解した。画面を注視する


・貴方の役職は<クルー ❤>となります

1分後この画面が見えなくなった後、この部屋の扉が自動で開きますので、その時部屋からのこの端末を持って、退出を願います

また、個人の役職を示すこの画面は今後見る事は出来なくなりますのでご注意ください


「クルーなのだ…良かったのだ。で、でもこの❤はなんなのだ?さっきの説明になかったはず…」

そう思い、職業の説明の項目を開く。

そこには貴方には信頼出来る恋人がいます。貴方達は確定でクルー陣営の役職であり、互いにそれを認識することができます。ただし、片方が何らかの影響で亡くなると、もう1人もその時点で死んでしまいます。”二人”で船を脱出しましょう


文章が記載され、恋人が”如月ラギ”である事が表示された


(この名前・・・何処かで)プシュー ガシャコン


その音と共に思考は中断され、先程見ていた画面は無くなり、この飛行船のMAPと思われる画面に移り変わる。そこにはタスクがあるであろう場所に!が浮かび上がっていた


「何が何か分からないのだ…ドッキリか何かなのだ?取り敢えず部屋を出て様子を伺ってみるのだ。」


そう呟き、端末を持って部屋を出る。その瞬間、扉がバン!という音と共に勢いよく閉まり、鍵がかかった様な音がした。しかし扉が閉まった音は一つではなく、同じような境遇であろう多様な宇宙服がそこには何人かいた


その人物たちに声を掛けようとしたが、何か可笑しい。

自身がどうやって声を出していたのか分からない…声が出せないのだ。簡単なジェスチャーは送れるようだが…。この宇宙服姿ではその人物達も早々に皆チリジリに何処かへ向かっていってしまった。


(一先ず、自分もタスクとやらを進めるのだ。何が何やら分からないけど、きっと人が一杯いる方が安全なのだ)その様な思考の元、正面の通路を進み、端末に示された機械の裏に回り込むと、そこには四本の配線があり、見た瞬間同じ色を繋ぎ合わせればよいと理解することが出来た。その一仕事を終え、他のクルー達が歩いている所に合流、移動を開始する


(何だ、この調子なら何事もなく安心してタスク終わらせられそうなのだ。さて次のタスクは…)


ビーーー、突如見ていた端末が震え鳴りだし、画面が真っ赤に染まる。

<如月ラギのバイタル反応消失を確認>


同時に宇宙服の背後が破けだし、内容物が抜け、まるで体の骨だけ抜かれていったような感覚に襲われる。それだけではなく、身体の中心が少しずつねじれていく。それは自分の意思でどうにかできるものではなく、死を悟るのには十分であった。

(と、突然、な、なんなのだ!どうして僕がこんな目に合わなきゃいけないのだ。うっうっうっ)

そうして何処か他人事のように身体がねじ切れたる様子を眺め、身体が2つに分かたれた直後

誰にも聞こえる事のない”ぐえええええええええええ”という断末魔をあげながら、彼の意識は途切れた



<システムメッセージ>

死体発見の報告がなされました。今から会議部屋に転送します


其処には大きなのモニターが背中合わせで存在しており、円形の机の前に、総勢13名の多種多様な個性的な宇宙服を身にまとったクルー達がいた。

そのモニターには、クルー名簿なのだろう、15人分のアバターと名前が記載され、緑狸と頭に植物寄生されたような紫色のクルーにバツ印が付いていた


・各々持っている端末にこの様な画面が表示される


死亡者は”如月ラギ”ねこわさ”の二名となります。投票が最も多かった人物を、一会議一人この船から追放する事が可能です。票が同数、或いはスキップが最多票になった場合、誰も追放されず会議は終了します

投票されたものは誰が入れたかは公表されず入った票数だけ中央画面に映ります

ルールに基づき、自身の陣営が勝つように投票を行ってください。


二人の死亡や突然のワープに動揺した声が聞こえる最中、ねこわささんの死体を直接見た人物たちが事件現場を語り始める


その現場にいたのは、戌宮、たたタカ、妙楽、Mrkkの四名であり、Mrkkが何処か淡々とした声で

「突然動いてた人がはじけ飛んだんだ…そして動かぬ屍に。その付近にいた皆も見てただろう?」

付近の全員が同意し、誰にも犯行したようには見えなかった、という結論に


「もしかして…恋人という線はないか?最初の説明時にそんな項目があった。確か説明には‥二人一組のクルーメイト 恋人がいます。この二人は殺人鬼陣営にはならず、お互いの白が分かります…と説明に書いてあった気がする」頭チェリーの妙楽がそう発言する。


「後、気の所為じゃなければ死ぬ間際、端末が振動してた気がする」

端的に静かにそう語るのは戌宮

その振動を感じていたのは、近場にいた4人だけ…恋人がの相方が亡くなった時はそんな風になる可能性があるという話に落ち着いた。元より、恋人は居なくなったからこの知識が役に立つ事などもう一度同じゲームに巻き込まれない限り、無いだろうが…


さて、もし一人が死んだなら、もう一人も死ぬ…というルールが存在した場合、この状況にも納得がいく

ならば問題は…

「ラギさんは何処にいたんだ」殺されたのがラギさんなのであれば当然そちらを殺した人物がいるはず…


しかし誰一人として目撃証言をあげる事が出来ない


突如、ガタッと立ち上がるものがいた

「今思い出したことなんだが、確かこの船に呼び出した人物の名前・・・ラギ…という名前では無かったか!?」

このメンバーの中で恐らく1番息を荒らげている彼の名前はニコライ。フサフサの黒髪を頭に乗せている


「もし、その人物であったなら、どうして彼が死んだのに俺たちは、解放されていないんだ!ラギは本当にしんだのか!?」

その一言にザワッ、と周りのクルー達も物議を醸している


しかし、その流れを断ち切ったのもまたニコライ本人だった。


「まってまって、もしこのゲームが公正に行われている物だとして、ラギさんの死体を誰も目撃者がいない…という事は、誰かが嘘をついて、死体をみていない事にしているんじゃないか!?」


「なら浮いている人が居ればその人が犯人の可能性がありますね…で、まず露骨に浮いているのは…展望にいた貴方だ魔球さん」

居所を確認していた妙楽からの援護が入る


そうだ!そうだ!あいつを吊ろう!会議時間が残り数秒という事もあり、一部のクルー達も、一時の熱に浮かされる様にリーゼント頭に手元の自身の端末から全力投票を行う

「たすけて~ たすけてくれ~」緑リーゼントからそんな情けない声が上げられる


果たして結果は スキップ6 魔球5 という形でこの会議はお流れとなった。


「おまへらぁ!おまへらぁ!」という恨み節の声と


「ほう、投票スキップですか…」状況分析を行っているであろう、医師の姿のクルー、いわしが無いメガネをクイっとあげる様な発言を呟き、全員が飛行船に戻された



戻ってきた直後、端末から聞いた覚えのある声がする


<殺人鬼が残っています。ゲームを続行してください>


その声聴くことで記憶が掻き立てられ、朧げながらその声の主をクルー一同、確信する。この船に呼んだ当事者であり、先ほど死んだはずの1人如月ラギの声その物であるのだと



船に戻ってきたチェリー頭は考えていた

(ど、ど、ど、どっちかを追放しなければ、でも…何方かは間違いなく現状犯行を行っていない。取りあえずボタンを…)


ミーティングルームに向かう最中、突然船内にアラームが鳴る。インポスター陣営が使う事が出来る共通能力の一つサボタージュだ。船の維持にシステムが回され、会議室に送る為の転送装置の座標が不安定になり、死体の発見時という確定的な事件が起きた場合を除いて、クルーに招集をかける事が出来るボタンを押す行為が不可能となる、また今回のアラートは緊急タスクと呼ばれ、放置すると船が乗っ取られ、クルーの敗北も確定する。直せる場所が決まっている為、撒き餌と言っても差し支えないだろう


(いやだぁぁぁぁ、ちょっとまってちょっと待って)そう心の中で思いながら、その宇宙服に搭載された暗視ゴーグル機能を用いて、辺りを見回しながら右往左往していると誰かが直してくれたのだろう、ブザー音が聞こえなくなった。そのままの勢いで招集ボタンを押す!


<システムメッセージ>

緊急招集ボタンが押されました。今から会議部屋に転送します


皆の端末にそのメッセージが表示され、また会議部屋に生存者が集められる

しかし、集まったのは12人。先ほどの会議では13人いたはずなのに一人足りない


真ん中のモニターを見ると「戌宮」の所に×マークが付けられていた。

「いぬみやさん!!!どうして…」ニコライがそう嘆くと共に

「可笑しい…さっき、死人の声が聞こえたよな…」と良く不憫になりそうな枝豆キャラ宇宙服を着たシルシラがそう呟く。

「今更だけども、この会議室だと声の意思疎通ができるんだな。このボタンが押されるまで、アンタは殺人鬼じゃないよな!なあ!そんな風に何人かとすれ違った時に声を掛けようとしたんだが、声の出し方を忘れてしまったような状態に陥ったんだ。どうやらこの部屋でしか言葉は交わせないらしい」


ボタンを押した張本人が割り込むように

「あのー、おも、思うんだが、さっきの事件、浮いている二人’ニコライ’魔球’どちらかを…」

「ま、まってくれ!俺はただタスクをしていただけなんだ!信じてくれ!」自身の立場の危うさに気が付いていたのか、その言葉に被せる様に命乞いをするニコライ


互いに疑心暗鬼になりながら互いに牽制し合う状態が続く


殺人が起きたという興奮から、身の危険を感じて投票していたものもいたのだろう。しかし1会議を挟み、その熱は少しなりを潜めて、自身が無罪の人かもしれない人を追放する立場にある…というのに気が付いてしまった。


「さっきスキップに入れたのはだれだ?可笑しいだろう?」

先程の船内アナウンスが尾を引いているのだろうか、その様に発言するシルシラに

「あんな混沌とした状態で、冷静な判断が出来るわけないだろ」Mrkkが淡々と答える。何処までも冷静である


「なあ、シルシラ。アンタが昇降機右側にいた…と言っていたが、私はそれを見ていないぞ」

その余りに強い追放意識に、引っ掛かりを覚えたのであろうクルーの1人、けむりが追求を行う

「私もあんたの事は見ていないな、けむりさんよ」

けむり、シルシラの2名が言い争う最中…

「まぁまぁ、けむり。シルシラに関しては私が見ている。最低でも最初のラギの死体に関しては関われないと保証できる」

そこに仲裁に入ったのはのえぞう。普段から人と関わる仕事をしているのか、間の入れ方が上手く、それでこの話は終わりかと思われたのだが…


「そこの2人が黒で繋がっているんだ!仲間だろう!そうに違いない!そこ2人を吊ろうぜ!此奴ら俺らを嵌めようとしてる!!!」


最も怪しい当事者にも関わらず、茶々を入れて来る声が…

もはや、吊られに来てると言っても差し支えないかもしれない狂人がそこにいた。デスゲームを外から眺めて野次を飛ばす客の様だ。


「「「明らかにアイツはおかしい」」」

殺人鬼出ない可能性も当然ある。しかし、彼処まで露骨に錯乱している彼を残す事はできないのも事実だろう

そうして、満場一致で投票が行われる


ニコライの処遇に関しては…

「俺は浮いてない!浮いてない!アイツがやったんだ!だから死んで!」迫真の舌回しと、片方は現状、確実に無罪であるという事実から追放を押すということは無かった


<投票先が指定されました。魔球が追放されます>


淡々としたラギの声でアナウンスが成される

追放までの時間はホンの数秒である。しかし、クルー達にとっては、死刑宣告のボタンを押した1人であると教えるには充分な時間でもあった。そして、遺言を残す時間としても…


「アイツ…アイツに殺れと言われたんだ!そうしないと…」

これから空に身を投げ出そうとしている彼はそう宣う

今クルー達が身を置いている現状と、彼が過剰なまでに他者に攻撃的で自己保身に走る姿、”アイツ”という黒幕が居てそれに従っていた…。命の懸かった状態での発言であり信用になるものだと思わせるには充分であった


もしかしたら、彼処まで錯乱していたのは…彼もまたこのゲームに巻き込まれた被害者だったのかもしれない


「ぁあ、た、たすけてぇぇぇ…」

遠ざかっていく声に場は沈黙する


もし、自身の”役”が違えばこの場から居なくなった彼が自分自身だった可能性もあったということ。人を排除する方法は殺した側、殺された当事者しか分からないが、普通の人にとっては決して気持ち良いものでは無かったのだろうコトがわかる


「直接人の姿じゃなくて本当に良かった…」そう誰かが零した。そして…

<殺人鬼が残っています。ゲームを続行してください>

何処か無機質な音をクルー達に響かせ、また”役”になりきる為に船に戻されるのであった


(私の議題がありませんのね…あんまりですわぁぁぁ!)


………

「今回のゲーム、皆さんいかがでしょう。試合は一区切りと言った所です。1人の追放と共にクルー達が”役”そのものになり替わりつつあります」


暗い部屋、誰もいない部屋の虚空に語りかける存在がそこにはいた。


「普段ならプレイヤーの皆様もここに居るのですが、今回のゲームはご時世に基づき、この様な開催とさせていただきました」


しかし返答がないかと言われればそうではなく

空に浮く文字チャットという形でリアクションが帰ってくる。


「もっと殺せ!」「いやー、愉快」「草なのだ」「ヒッ」「もっと上手く立ち回ってくれないと困るよー」「悲鳴助かる」


肯定的なコメントばかりであり、楽しんでいることが分かる。


「それでは、ここからの第2幕もお楽しみください」

クルー達が船に戻ってくる。


声は聞こえないが最初に比べ、互いに誰かとすれ違う時に些かぎこちなさが見え隠れする様になった


隣を歩いているのは殺人鬼かもしれない、そんな疑念は拭い去る事はできない。或いは先程、自身がルールに則ったとはいえ、合法的に追放という殺人を犯したと言うところに負い目を感じているモノも居るだろう


単独行動も集団行動も当然何方にもリスクが伴う

通り魔に襲われるか、背後から刺されるかの違いでしかない。死は無情である


そんな均衡を破ったのは、皮肉にも殺人鬼陣営のサボタージュ、電波妨害である。



突如、端末にノイズが奔る。

マップ上のタスクの位置を示す!が消失。動きからクルー達が動揺して居るのが見て取れる。


このノイズを直す為には通信室という場所に赴き、弄られた回線を元に戻さなければならない。

直しに行く事は殺人鬼が潜む場所に向かうという事。しかし、そちらに向かわなければ他のクルー達から疑いの目を向けられる可能性もある。


果たして各々の思惑は兎も角、通信室には沢山のクルー達が、すしずめ状態で集まる事となった。


殆ど意味はないが、僅かながら距離をとるクルー達、今か今かとそのツマミが元の位置に戻る事を願う。


端末のノイズが消える。正常な回線に戻ったが、息をつくまもなくクルー達の視界が切り替わる。

どうやら会議部屋に招集されたようだ

誰かが、ボタンが使用可能になった直後に招集をかけたらしい


(明らかに人数が減っている…)


<緊急ボタンが使用されました。今回の死亡者はけむり、いわしの二名です。追放する人を決めて下さい>

始めて会議前に音声によるアナウンスが為された。


人数は残り9人。初めが15人だったことを考えるのであれば、もう5分の2がこの船から消えた事を指している

「どうして急にアナウンスに…」そう呟いたのは猫に頭から寄生されているビームマンだったか

その疑問は最もであり、システムメッセージから音声に切り替わったのか、切り替える理由はなんなのか


疑問に答えたのは、これまで会議中口を挟まなかった、或いは挟めなかった人物だった

「このゲームのルールが説明通りであれば、3つの陣営がある。しかしクルーVS殺人鬼陣営で考えるのなら、最速の勝ち方はクルー3vsインポスター3だ。そして今はどの陣営がどれだけいるかは不明だが、場合によっては次の会議には試合が終わっているかもしれない…という事だろう」


「そっか、つまり第二ラウンドに入った…ということだな。だから…」



「いや、今はそれよりもけむり、いわしの二人の死体について追うべきだろう」

ボタンを押した張本人であるMrkkが話を本筋に戻す。本人からしても死体を消してしまったのは不本意だったのかもしれない。彼らの遺体から情報が取れないという事なのだから


「まってくれ、それなら電波妨害を直す通信室。そこに沢山の人が居なかったか?」


直したのはニコライ、その周りにいたのは妙楽、シルシラ、のえぞう、ビームマン、最後に国信

残ったのはボタンを押したMrkkとたたタカ、ピロ彦の三名である


「それならのえぞうは、キッチンで上と右に二手に分かれた時に、いわしと共についていったピロ彦を吊りたいぜ」


「まさか…ピロ彦さん‥貴方がいわしさんをやったのか?いや、アンタがやったなんだろ!そうだろ!?」

最初ほどではないにせよ、まだ恐慌状態であるニコライは声を声高にして叫ぶ。

一番動揺しているような人物が最終的に、周りの最後の投票の一歩を押し進めている、というのは皮肉なものだ。人は自分よりパニックにある人が居れば、それだけ冷静になれるという事なのかもしれない


ピロ彦は少し諦めた声で

「確かに私は怪しい位置ですけど…あとのえぞうさんは怪しくはないです」

自身が吊られることを悟ったのだろう、最後に言い残した言葉はこの様な物だった


<投票先が指定されました。ピロ彦が追放されます>


ガコッ (そんなあぁぁアアー)また一人空に身体を投げ出す者がでた。


しかしヒトの適応力は末恐ろしいもので、もはや、一人も二人も関係ないのだろう。追放に対しての反応が薄くなっているのが感じられる。

「次誰かボタンお願いします」と変わらないMrkkさんは兎も角として


「きっと、いわしは医者の格好していたからバイタルに引き寄せられたんだろうな…」

なんて呟く最初の姿からは考えられないクルー、シルシラがそこにはあった。


<殺人鬼が残っています。ゲームを続行してください>


戻ってきた直後緊急タスクが発生したが、直ぐに直りボタンが押される


「はあ、ふう・・・なんとかボタンを押せた、緊急タスク直るの早かったな」


「シルシラ君、ボタン有難う。エンジニアがいたんだろ。この中にエンジニアはいます?」

「エンジニア…?なんだそれは」

そこで挙手するものが

「はーい、ビームマンがエンジニアでーす。ククク…エンジニアとは…」

「ビームマンさんですね。エンジニアであることが重要なので、説明は今はいいです」

説明させて貰えなかった事で(´・ω・`)とするビームマンを傍目に


「で、だ。さっきの事件時にピヨ彦さんと一緒にいてかつ、その時に吊ろうとしなかった人物がいる」


妙楽は何処か確信を持っているのが伝わってくる語気で

「もしかしたら、心が優しかっただけかもしれないが…たたタカさん。貴方だ」


その言葉を聞いて

「ばれちぁ、しょーがねぇなぁ!」

顔は見えないながらも含み笑いをしていると思わせる、そんな声でたたタカは自供した


その発言と同時に、端末を触る。そうすると見る見るうちに、板だったものが銃に変形していく。それを手に持ち

「だかお前たち、いいのか?俺のこの手にある銃はまだ10発の弾丸が残ってる!貴様らを1人づつ殺して行くことなんて造作もないことなんだよ!!!ふはははは!」

勝ち誇った声で銃を構える


「何言っているんだアイツ…ここでは…」

「俺を打っても何にもならないぞ!だから辞めてくれ」

「うぅぅわぁぁ、いやぁあ!」

様々な悲鳴が聞こえてくる


トリガーに指を掛け終わったたたタカは

「うるせぇ!さっさとしねぇ!」

と勝ち誇った声でトリガー引く…しかし、カチッという虚しい音を響かせるだけで、それ以上何も起きない


「(カチッカチッ、カチッ)なぁっ!馬鹿な弾が出ない!どういう事だ!?」

余裕だった声が一転、声が震えたものになる


それに応えたのは

「説明をちゃんと見ていないからからそうなるんだ!会議中は弾が出ないと記載されていただろ。バカヤローが!しねえ!」

このゲームの中で成長を感じさせる、シルシラであった


「そんな、俺がこんな所で、コンナトコロデェ!」


<投票先が指定されました。たたタカが追放されます>

(イヤダァァァァ!)断絶魔が聞こえてくる


「所でkkさん、さっきの会議ボタンを押した理由は?」

「ビームマンさんがベントに入ってるのを確認したのでそれを聞きたかっただけです。」


そんな会話を終え、人数を半分まで減らしたクルー達はまた船に戻っていく


………


<殺人鬼が残っています。ゲームを続行してください>


変わっていて欲しかったアナウンス。その声は現実を突きつけてくる。まだ終わっていないのだと…


(な、なんでだよ!今ので終わったんじゃねぇのかよ!)

先程の自白を聴いて何処か安心していたシルシラは悪態をつく。


(クソっくそっ、可笑しいだろ!何処かで間違えたのか…?手が手が…)手が震えて、仕舞うだけのタスクにも時間がかかってしまう。


薄暗い船内、1度安心しきってしまったその心に、何時殺されるか分からない恐怖がジワジワと侵食してくる。

(あいつら全員犯人だぞ…ヒィ、来るな!来るな!)

なんの意味もない声上げを行いながら、すれ違った人に怯え続ける。


(そうだ、バイタルを見よう。そうすれば安全かどうか確認できるはずだ)

そう思いバイタルの元に向かう…


(なっ、お前は誰だ!?)

そこには先客がいた。そう認識した、その瞬間!


視界が急に180度、グリュンという音が聞こえそうな位に高速で回る。

それ以上、何一つ理解できないままその場に動かぬ屍として横たわるのであった…



<緊急ボタンが使用されました。今回の死亡者はシルシラです。追放する人を決めて下さい>


残ったのは、6名

のえぞう、妙楽、ニコライ、ビームマン、国信、Mrkk


「もう!もうこんなことやめにしようよ!シルシラさんどうして…!みんな死んで!私以外全員死んで!…ボタンを押す前、シルシラさんは電気室の方に向かうのは見ました!」


「通信室には、妙楽、のえぞう、kk、ビームマンが居ましたね」


「つまり、浮いているニコライ、国信2人を追放すれば解放してもらえるんだな!」


「のえぞうから情報があるだが、国信は貨物室で一緒に沸いたあと、バイタルの方面に歩いていったのをのえぞうは見ている」


「私が湧いたのはアーカイブですよ!その後タスクしにトイレ前を通って、貨物室に行ったんです!その後アーカイブに戻りました!」


「残念だが国信さん、アーカイブにいた俺、ニコライは貴方の姿を見ちゃいない…」


「話をまとめると、取り敢えず浮いている国信とニコライを殺ればいいんじゃないか?」

「そうだな!」


「お、俺じゃない!俺の発言を元に国信さんが追放できるのに、どうして俺が疑われなきゃならないんだ!ボタンを押す理由もない。俺はただ…死にたくないだけなんだ…」


<投票先が指定されました。国信が追放されます>


「そもそもなんでボタンを今このタイミング押したんだ」

その言葉を最後に

ガコッ…風の音だけが会議室に響き渡る



そして…


<ゲームを終了します>


その声が聞こえたと共に、全員の意識が暗転する


―now looding <意識覚醒>


元の肉体に戻った事を自覚する

起き上がり辺りを見回しても、誰もいない。

有るのは天井近くにあるモニターのみで、カプセルホテルの様な有様だ


[全員、起きたようだね]

突如、そのモニターから声がする

しかし、人影は見えるが黒色のシルエットでどの様な人物か判断できない。


[まずは、君たち勝利したクルー陣営で生き残った君達に賞賛を送ろう。そして”今回”もまた面白い喜劇を見せてくれて有難う、と言わせてもらおうじゃないか]


ゲーム内でのラギの声とは違い、何処か子供っぽさを含んだ、無邪気で抑揚のある声だ


[誤解しないで欲しいが、私は君たちの願いを叶えたに過ぎない。君達がゲーム among usでデスゲーム風でやってみたい、それに参加者が同意したからこそ、この舞台は出来たわけだ]


(今ならその事が事実であったと理解出来る。知り合いの集団でamong usをやるつもりでいた事。命を大事にしてやるならどんな形が良いか…という事でデスゲーム風でやれば良いのではないか?という話をしていたはずだ)


[ゲーム内で死んだ人物達がどうなったか?それは君達が知る必要のない事だ。それじゃあまた機会があれば君たちの舞台を見せてくれ]


そう言い残すが最後、部屋の中にガスが充満し始める

扉は開かず、参加者達は再び意識を失うのだった…



………


「今回も無事、終幕となります。楽しんで頂けていたら何よりです」

それだけいい、チャットとの接続を切る


「ふぅ、今回も無事終わったか」

奥の部屋への扉のノブに手をかけ中へと入る。

そこからカツカツと真ん中の台座に近づいて、刺さっているモノを丁寧に引き抜き眼前に持ってくる。


そこには、縦に楕円形の手持ち鏡のようなものがあった。

鏡と違うのは、その液晶部分に十字の網のようなものが映されており、また手持ちの部分が途中で折れて、本来は長い持ち手の部分があった事を伺わせる


「謎の物体ではあるが、これのお陰で人がどんどん集められる!私の知名度はうなぎ登りだ。ふはははは…悪役笑いはイマイチ私には当てはまらないな」


網目の部分には、様々な数字が書かれていた。

「among usを現実の様に見せるモノ…か。なんの為に存在しているかは分からないが、利用できるならさせてもらおう。その為の代償は…」


among usに参加していたプレイヤーが死んだ時のそのリスナーのうち1人が謎の死を迎えるという物。球体の物が飛んでくるか、鈍器で殴られたように事故死するだけの事件性は無いものだ。匿名故に誰も居なくなっても気が付かない。偶に死ぬ迄に時間差がある為かコメントに短い悲鳴を残して、死ぬ場合もあるようだが、配信者が死ぬ画面の為、そのコメントに違和感を覚えるものは居ない。


また配信者は消える事は無い上、元に戻れば普通に試合を行った様にしか認識できない。だからまた新しい人が参加し、その規模は大きくなっていく…止まることを知らない連鎖が出来上がっている



「さて、次の日程は…」

その人影は次回の予定に心を踊らせるのであった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ふにんがすデスゲーム編(1月29日) ディオス0828 @Dhiosu0828

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ