第16話 クラスのギャルはヤキモチ焼くけどちょっと嬉しい
俺はアパートの前まで来ると一度足を止める。そして深呼吸してから、部屋に入ってからどうするかを──
「あーっ! いっちゃんおかえり! ちょうど回覧板を大家さんに返してきたとこなんだよね。グッドタイミング♪ でも、そんな所で止まってどうしたの?」
考えることはできなかった。
「ただいま。いや、なんでもないよ。このアパートもかなり古いなって思ってただけだよ。父さん達が住んでる時に一度補修はしたみたいだけど、20年も経てば外見はボロボロだな」
「だね〜。だけど私は結構気に入ってるよ? 部屋の中は綺麗だし、私のお母さんも少しの間だけ住んでた場所だから。二人の親が同じアパートに住んでて、その子供が恋人同士なんて運命だよねっ♪」
「ん、そうだな。産まれた時から一緒にいるんだもんなぁ。……ま、少しだけ離れたけどな。そのおかげで気持ちをはっきり口に出せたとも言えるけど」
「ん、確かにそれはあるかも。あのままずっと一緒にいたら、友達以上恋人未満のままでズルズル続いてたかもね。ってなんで外でこんなしみじみ話してるの!? ほら、早く中に入ろ? ご飯作らないと!」
莉々香は俺の手を握って部屋まで引っ張っていく。
「ちょっ! 階段はもっとゆっくり上がれってば! コケるぞ!」
「大丈夫大丈夫! だって……早く部屋に入っておかえりのチュウしたいんだもん♪」
そう言った莉々香の顔は、自分で言ったくせに顔は夕日よりも赤く、それでいて眩しい笑顔だった。
が、その笑顔は現在困惑に染まっている。
「ん? んん〜? えっと……つまりどゆこと? いっちゃんは今日の放課後、羽衣ちゃんに告白されたってこと?」
「……ま、まぁ、そうなる……かな?」
「『かな?』じゃないよぉ!? それ、完全に告白じゃん! 好き好きオーラ出しまくりじゃんかぁ!!」
莉々香は手に持っていた茶碗と箸を一旦テーブルに置き、四つん這いになって俺の隣まで来ると、下から覗き込むように睨んでくる。
なぜこんな状況になったのかと言うと、今日の事を話しちゃったからなんだよな。
やっぱり莉々香を目の前にすると、嘘をつくのはなんか嫌でモヤモヤしてダメだった。
だから青鬼の事だけは黙ったままで例の件を話したら、頬をプクーって膨らませた膨れっ面莉々香の完成ってわけだ。
「だけどちゃんと断ったぞ。俺には莉々香がいるからな」
「当たり前だよっ! いっちゃんの彼女は私なんだから! あ、でも……」
「でも? どうした?」
「えっと……ん〜?」
「なんだよ」
「いっちゃんが告白されて困ってるけど……。けどぉ……彼氏がモテるのが嬉しい自分もいて、喜んでいいのか悲しんでいいのかわかんなくてモヤモヤしてる。いっちゃんのバカ」
バカって……。
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