第7話 クラスのギャルとお買い物準備

 今日は買い物。そろそろ冷蔵庫中身が寂しくなってきたから……らしい。らしいと言うのは、莉々香が言っていたからであって俺はよく分からないからだ。ちなみに生活費は月に一度、お互いの母親が俺達の様子をみるついでに遊びに来た時に手渡しで受け取っている。


 そしてコレはここだけの話なんだけど……実は俺、莉々香の母さんが少し苦手だったりする。いきなり意味不明な事を言うからどう反応していいのかわかんないんだよな。俺の母さんはそれをニコニコ笑いながら上手くあしらってるからホント凄いと思う。まぁ、その辺の話はまた後で。今は俺の現状をどうにかしないといけない。



「なぁ、まだか?」


「ちょっと待ってね? もう少しだから」


「それ、さっきも聞いたんだが……」



 どうやらそんな俺の声は届いていないようで、莉々香の視線はベッドに釘付け。正確に言うならベッドに並べられた俺の服に、だな。


 二人でどこかに出掛けるってなるといつもこうだ。一緒に暮らすようになってから、俺は出かける時に自分で服を決めたことが無い。なぜなら莉々香が全てコーディネートするから。



「なぁ、もうジャージでいいんじゃないか?」


「ダメっ! 私はカッコイイいっちゃんと一緒に歩きたいの。ジャージでももちろんカッコイイんだけど、オシャレしたらもっとカッコイイんだもん。そしてこの人が私の彼氏! って自慢したいの。そしてそんないっちゃんとくっついて歩いて、誰にも盗れないようにアピールしないといけないの」



 ということらしい。そんな心配しなくても誰も盗らないってのに。



「なら俺も莉々香の服選ぼうか?」



 目の前の莉々香の格好はギャル姿ではなく、ロングスカートにVネックのカットソー。その上に薄手のカーディガンを羽織ってるだけ。俺の好み的にもう少し短いスカートがいいなぁと思ってそんな提案をしてみる。だけど、



「え、あ、いや、えっとぉ……それは謹んでお断りします」



 なんでだよ。



「いっちゃんに任せるとちょっと……ね? 色合いとかが……」



 心を読むな。色合いってなんだよ。赤と青と黒が一緒でも別にいいじゃんか。ちぇっ。



「で、さすがにそろそろ決まったか?」


「ん〜? こっちのシャツも良いけどこの前買ったジャケットにはちょっと合わないかな〜? ならインナーはこっちにして……」



 その上下セットはさっき試してなかったか? っていうか俺って今、服を何着持ってるんだ? それすら把握してないんだけど。まるで着せ替え人形の気分だな。



「ん〜……うんっ! 今日はこれで決まりっ♪ いっちゃんこれに着替えてね。目隠ししてるから」


「やっとか……」


「着替えた〜?」


「もう少し……よし、着替えたぞ」


「はぁ〜い。きゃぁぁぁ♪ やっぱりそれにして正解! いっちゃんカッコよすぎだよぉ〜!」


「ほら、それはいいから早く買い物行くぞ」


「うん! ……あっ! ちょっと待って」


「ん?」



 靴を履こうとした時に後ろから呼ばれ、振り返ると頬に小さく触れる感触。



「今日もカッコイイよ! の、ちゅうだよ♪」

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