第6話 クラスのギャルの変身
莉々香より早く帰るために急ぎ足でアパートに向かい、ドアの前に着いたところでちょうど莉々香からの着信。ちなみにギャルバージョンの時は、俺と話す時も呼び方以外は教室にいる時と同じだ。
「どした?」
『あ、もうアパート着いた感じ? 莉々香さっき終わったんだけど、まだなら一緒に帰ろ?』
「あー、俺はもう部屋の前だな」
『ざんね〜ん! なら今から急いで帰るね!』
「わかった。待ってる」
そこで電話を切ると、俺は急いで鍵を開けて中に入り、洗面台へと直行。やばい。莉々香の急ぐは本当に急いでくるからやばい。早く髪色落として乾かさないと。
「ただいま〜!」
ちょっ! 早過ぎないか!? 色は落ちたけどまだ乾いてないぞ! 不自然に頭だけ濡れてるのもおかしいよな? どうする? あーもうしょうがない!
「実はすぐそこまで来てたのでした〜! ってあれ? いっちゃんどこ?」
「あー、今俺脱衣場」
「脱衣場? どうしたの? 開けてもいい? 脱いでないよね?」
そう言いながらドアのすぐ前まで莉々香が来る。脱いでいないかの確認は、莉々香がまだ俺の裸に耐性がないから。見ると恥ずかしすぎて倒れてしまうそうだ。
さすがに本当に倒れた所は見たことはないけど、前に一度風呂上がりに上半身裸で脱衣場から出たら、それを見た瞬間顔を真っ赤にして布団に潜ってしまった。初心にも程がある。
「ん? あぁ、脱いでないぞ」
「じゃ、開けま〜す! ちょうど洗濯物も回したかっ──っ!?」
「ん? どうした?」
「い、いっちゃん!? その格好は!?」
「あぁ、ちょっとな。風呂の準備したら間違えてシャワーの蛇口回しちゃってさ。ご覧の通りワイシャツまでずぶ濡れだ」
俺のとった手段は、【乾かないなら濡らしてしまえ】だった。これなら怪しまれることもないし、裸でもないから大丈夫。だと思ったんだけどな……。
「いっちゃんのアホ〜! なんかワイシャツ透けててそっちのほうがエッチじゃんかバカ〜!」
莉々香は何故か顔を真っ赤にして勢いよくドアを閉めてしまった。な、なんでだよ……。
「おーい、莉々香?」
濡れたワイシャツを洗濯機に放り込んで部屋着になった俺が脱衣場から出ると、莉々香の姿が見えない。いや、いた。俺のベッドに潜りこんでるや。
「……着替えた〜?」
「ちゃんと着替えたよ。だからもう大丈夫だ」
「ほんと?」
「ほんとのほんと」
「ふぅ……。ま、まったく! まったくもう! そういう不意打ちはいけないと思う!」
「なにがだよ」
「何でもない!」
「それより莉々香も早く着替えれば? 制服シワになるぞ」
「あ、うん。そうする〜」
莉々香はそう言ってベッドの中からモソモソと出てくると、すぐ側に置いてある俺の母さんからのお下がりである化粧台の前に座った。三面鏡を開くとそれを見ながらゆっくりとカツラを取って近くに置き、つけまつ毛を取ってる。いつ見ても痛そうなんだけどなんで平気なんだろうか。
その次はカバンから出したポーチの中から【メイク落とし】と書かれたウェットティッシュみたいな物を出してそれで顔を拭き、それが終わるとパタパタと洗面所に向かった。
「ん〜さっぱり♪ じゃあ今から昨日の残り物温めるね。いっちゃんは箸とか飲み物用意して貰えるかな?」
そう言いながら洗面所から出てきた莉々香の姿はいつもの黒髪清楚姿。だけど服装はギャルバージョン制服のままだからなのか、露出が多くて変な背徳感がある。なんて言うのかな。真面目な子がチャラいやつに染められてる途中的な?
「なぁ、着替えなくてもいいのか?」
「わ、忘れてたぁ〜! うぅっ……恥ずかしい……」
短いスカートを押さえて自分の部屋に向かう莉々香の後ろを歩きながら思うことが一つ。
「前を下げようとしてるから、うしろが丸見えなんだよなぁ……」
「っ!? はわわわっ! パ、パンツ見えてた!?」
あ、やべ。声に出てたか。
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