第5話 クラスのギャルじゃないギャルと青鬼
カラオケが終わり、これからバイトに向かう瞬を見送って俺は街をプラプラ。
今すぐ帰っても莉々香はすぐに帰ってこないだろうからな。
本屋に寄ってアプリゲームの攻略を見て時間を潰したあとは、小腹が空いたからパン屋で安い菓子パンを買ってアパートに向かう。
その帰り道で目に入ってきたのが、コンビニの脇で言い争う男二人に女一人。男二人の方はいかにもな感じで、俺の記憶が正しければ隣町の高校の制服だ。女の方は制服ではないけど、髪型は茶髪のツーサイドアップで服はわりと派手な格好をしている。莉々香が露出の少ないギャルだとすれば、こっちは露出多めのギャルだ。スカートは短いし、胸元も開いている。
見た感じだと男二人が凄い剣幕で女に詰め寄ってるから、きっと痴情のもつれってやつだろうな。浮気でもしたのか、それともどちらかを選べと言い寄っているのか。まぁ俺には関係ないか。こういうのに下手に首を突っ込んでもいいことないし、俺の勘違いだったら恥ずかしいからな。
そう思ってそのまま通り過ぎようとすると、三人の言い争いの声が聞こえてきた。
「い、いやっ! やめてよ! 離して!」
「いいから来いっつーの。そんな格好して立ってんだからナンパ待ちなんだろ? だから声掛けてやったのに無視してんじゃねぇよ」
「ホントだよね。その服装とかいかにも誘ってくれって感じじゃん? それに僕達地元じゃ結構モテるんだよ? だから遊びいこうよ。せっかくこっちまで来たのに空振りだと馬鹿にされちゃうしね」
「ち、ちがっ! 誘ってなんか……。それにこの格好はそんなつもりでしてるんじゃ──痛いっ!」
「はいはい。それじゃあその辺のカラオケでもいこ〜ねぇ〜」
「や、やだっ! 痛いからそんなに強く掴まないで……離して……」
聞こえた女の子の泣きそうな声に振り返ると、男の一人がギャルの腕を掴んで引っ張っていこうとしている。あぁなるほど。わざわざ隣街に来たのは彼女に会う為じゃなくて地元の子じゃなければ誰でも良かったって事か。
さすがにこれを見過ごして帰ったら莉々香の顔をまともに見れないな。アイツも昔、似たような目に合いそうになったことあるし。
俺は早足で近くのコンビニ行ってまっすぐにトイレに向かう。中に入って鍵を締め、鞄から出したのは青のヘアスプレー。すぐに染まるし、簡単に洗い落とせるから重宝しているやつだ。ちなみにこれを使うのは身バレ防止の為。この辺で髪を青く染めてる奴なんかいないから、正体が俺だなんて気付けないからな。ましてや普段は地味に大人しくしてるから尚更だ。
そのヘアスプレーを使って髪を染め、制服の下に着ていたパーカーのフードを被ってすぐに外に出ると、ちょうど目の前をさっきの男達がギャルを間に挟んで歩いていた。ギャルの顔は涙を流しながら真っ青。おそらく恐怖で諦めてしまったんだろう。
こういう奴らを見ると、昔、似たような状況で泣いてた莉々香の事を思い出して本当にムカつく。だから俺はそんな莉々香を守るために鍛えたんだ。
それを莉々香以外に使うのはちょっと癪だけど──
「おい」
俺は後ろから声をかけた。
「あ? なんだ──ガッ!」
「!? なんだおま──ひうっ!」
まずはガタイのいい方の顎に一発。そして驚きながらも殴りかかってきた優男の股間を蹴りあげると同時にギャルの手を引いてこちら側に引き寄せる。
そしてふらついた男二人の腹に向かって蹴りを入れ、しゃがみ込んだところでフードを外して目線を合わせ一言。
「消えろ」
すると男二人は情けない顔になって何度も頷きながらひょこひょことその場から立ち去っていった。
よし。これでヘイトは謎の青鬼に向いたな。これでもうこの子は大丈夫だろう。急な事に驚いたのか腰が抜けてるみたいだけども。
「大丈夫か?」
「……え、あ、はい…………あれ? もしかして……」
「どした?」
「あ、いえ……なんでも……」
「ならいい」
さて、帰ろっと。莉々香が帰ってくる前に髪色流さないとな。
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