第三十二話 『信念に従える人間に』
っえ、小紋は今なんて言ったんだ?
何で冥皇のことを既に知っているんだ。
「葉山、お前まだ何も知らないのか?てっきり鑑定眼で冥皇の色々をことを知っちまったから思い悩んでいたのかと思ってたんだがよ。」
「そういう小紋は、何で冥皇が俺達を洗脳しようとしていることを知ってんだよ。」
一応、僕も冥皇のことは大体知っているとも分かる様に答える。
清原のお陰で小紋はまだ洗脳されていないとはいえ、清原の記憶の中の小紋は自分が洗脳されることを知らなかったはずだ。
何故この小紋だけが洗脳のことを知っているのだろうか?
「俺のスキルのお陰だ。俺の「地獄耳」を試しに使ってみたら、ペテラウスと魔術師っぽい恰好の男達が俺達の洗脳について話しているところが聞こえてきたんだよ。」
そういえば小紋は「地獄耳」というスキルを持ってたな。
小紋は昔から、耳が聞こえにくくなる障害を持っていたらしい。
そこまで話したことが無いから詳しい事は分からないが、耳がよく聞こえる様になりたいと小紋が影ながら願っていたからもらえたりしたのだろうか?
だが、今はそんなことどうでもいい。
今小紋は、とんでもないことを口走ったのだから。
「その魔術師っぽい恰好の男達って誰だよ。何で洗脳のことを知ってんだ?」
「おいおい、質問は一つずつで頼むぜ。」
冥皇以外にも敵がいるかもしれないという事実に、僕は無意識の内に焦ってしまっていたようだ。
だが、もし敵が冥皇以外にも居るのならそれは僕にとって大問題だ。
なにせ、生き残れる可能性がさらに薄くなってしまうのだから。
「あいつらの話してた内容が気になったから、があいつらを半殺しにして聞き出したら、どうやら冥皇が俺達を狙っていること、あいつらは冥皇の弟子達ということが分かったんだよ。これでいいか。」
「いきなり他人を半殺しにするなよな。」
小紋は地球では少しばかり名前が売れた不良だったから、少しばかり気性が荒っぽい。
「あいつらが俺に舐めた態度を取ったのが悪い。」
「どんな理屈だよ......」
まあ、こいつがなんで冥皇のことを知っているのかは分かった。
この世界線では冥皇が清原と葉山さんのところに向かっていて居ないから、小紋が試しに「地獄耳」を使用したタイミングと冥皇の弟子達がペテラウスさんと話すタイミングが偶然一致したってところか。
まあ、不幸中の幸いとでも言ったらいいのかな。
「でも、ペテラウスさんを頼れなくなったんだから、結局マイナスか。」
「は、何言ってんだよ。」
「?」
どういうことだ?
ペテラウスさんと冥皇の弟子達が話していたということは、ペテラウスさんは冥皇側に居ると見ることが妥当だろう。
「ペテラウスならここに居るじゃねぇか。」
「は?」
俺は、小紋が指を指したところを見つめる。
だが、何もその方向から違和感を感じない。
いや違う、普通に立っている、あの清原の記憶に書かれていた通りの特徴を持った男が。
まるでそこに立っていることが当然の様に立っていた。
「やあ、初めましてササキバラ君。僕はこの国の騎士団長をしているペテラウス・クドワーニだ。気軽に、ぺテさんとでも呼んでほしいな。」
そう言って、ペテラウスさん、いやぺテさんが挨拶をしてきた。
「な、なんでペテラウスさんがここに居るんだよ小紋!?」
俺は一気に警戒態勢を取って小紋に詰め寄る。
「別に僕は、君たちの敵という訳では無いよ。」
「そうだぞ。ペテラウスには俺達が冥皇と戦う手助けをしてもらうからここに居るんだよ。」
訳が分からない。
「僕はさ、困っているいる人々を守る為に騎士をやっているんだ。もっと言えば、自分の正義を貫きたいんだよ。」
ペテラウスさんは、淡々と話し出す。
「僕には昔、騎士をやっていた姉さんがいたんだ。でも、姉さんは死んでしまった。僕がまだ幼い時に。」
幼い頃に自身と血が繋がった姉弟が死んでしまう。
そんな経験をしたペテラウスさんに同情はする。
だが、気持ちは分かるなんて無責任なことは言えない。
「別に、騎士をやっていたのなら、些細なことで死んでしまう可能性だってあったんだ。でも、僕が大人になって色々なことを経験していく内に、気が付いたんだ。姉さんの死は人為的だったということにね。」
悲劇だ。
まさに悲劇。
「それを理解した時、僕は決意したんだ。僕は僕の信念に従って正義を執行するってね。」
~あとがき~
ちなみに、模擬戦の時の佐々木原は洗脳されていましてが、過去の佐々木原の言動を参考にしてあの時清原に何を話すかを決められている為、佐々木原はたとえ洗脳されていなくとも「読めていたよ、清原!」とか中二病チックなセリフは言っていたことでしょうw
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