第三十三話 『反逆への第一歩』


「まあ、要するに僕は君達と共に冥皇様の野望を阻止したいということだよ。冥皇の洗脳行為を見逃すのは、僕が昔から決めている信念が許してくれないんだ。」


 なるほど。

 ペテラウスさんにはペテラウスさんなりの考えがあってここに来たということか。

 今の話だけで、この人はまだ完全に信用できた訳じゃないけれど、少なくとも彼の正義を始めから疑ってかかるのは止めようか。

 それに、今は借りれる猫の手があるのなら借りれるだけ借りたい状況なんだ。

 一国の騎士団長が味方に加わってくれるのなら、是が非でも力を借りたい。


「そうですか。あなたに僕らには想像できない様な悲惨な過去があったことは分かりました。」


 今の話を軽々しく分かったなんて言えない。

 同情はする。

 でも、この状況で自分の感情を判断材料にしてはならない。


「ペテラウスさん、まだ僕はあなたを信用出来た訳では無いけれど、とりあえず今は共闘と行きましょう。よろしくお願いします、ペテラウスさん。」

「ああ、こちらこそよろしく、ササキバラ君。ぺテさんでいいと言っただろう。」

「まあ、気が向いたら。」


 これで、アリがカマキリに挑む様な無謀な挑戦が、バッタがカマキリくらいの差にはなったんじゃないだろうか。

 まあ、冥皇の弟子という勢力も居るからまだまだ絶望的な戦力差だということは否めないが。


「そろそろ、どうやって冥皇に対抗するのかを話し合っていくか。」


 そう小紋が切り出した。


「そうだな。」


 確かに絶望的な戦力差だ。

 だが、案外共に戦う誰かが居ることで、こんなにも心に余裕が出てくるというのは想定外だな。

 地球では独りよがりで自分勝手な奴で、その性格はこの世界に来ても尚健在な様だけれど、逆に今はその小紋の図太さに救われる。


「まずは、冥皇側の戦力と僕達の戦力をきっぱりと説明しておこうか。」


 この人もだ。

 人類最強候補である冥皇と対立したというのに、全く怯んだ様子がない。

 流石は一国の騎士団をまとめているだけのことはあるか。

 本当に頼りになる味方達だと思う。


「まず僕達側の戦力だけれど、騎士団のみんなの力はあてにしないで欲しい。」

「っえ、なんで?」


 思わず聞き返してしまう。

 普通、騎士団長が味方になってくれるのならば当然その配下達も付いてくるはず

だろう。


「今回僕が君達に味方するのは、あくまで僕だけなんだ。知っての通り、この国は魔族との戦線がどんどん激しくなっていて、騎士、兵士が常に不足しているんだよ。今この王宮にいる騎士団のみんなを冥皇との戦いに駆り出したら、王宮が無防備な状態になっちゃうんだよ。」


 そういえば、僕達がこの世界に召喚された理由は魔族が侵攻してきていることだったな。

 物凄く重要なことだが、すっかり頭の中から抜け落ちていた。


「じゃあよお、この国の奴らに冥皇がやっていることを暴露するのはダメなのかよ。洗脳行為なんて、絶対この国の法律のどっかに引っかかってるだろ。」


 小紋がもっともなことを言う。

 そう、俺もこの国に冥皇がやっていることを相談するという手は考えていた。

 というか、実行するつもりだったし。


「確かに、このヴィルフェンス王国にも洗脳行為を厳しく取り締まる法律はある。」

「ならよっ、」

「だが、この国も冥皇を対立してまで君達の洗脳行為を止めることはしないだろう。法律を厳守したと世間に知らしめることと、冥皇と対立することは全然釣り合わない。十中八九、揉み消されて終わることだろう。」

「そ、そんな.....」


 もう少し明るいニュースがあっても良いんじゃないのか。

 いくら何でも、状況が無理ゲ―過ぎるだろ。

 どうやら、頼みの綱だったこのヴィルフェンス王国の戦力は全てあてにならないらしい。


「他に、戦力のあてはないのか?」

「魔術師団の方はどうせ冥皇の肩を持つだろうし、君達の様な勇者達だっていくら固有スキルを持っているからと言っても所詮レベルは十以下だろう。この国にはもうほとんど戦える戦力なんて、」

『その言葉ちょっと待ったなのさ!』

「「「!?」」」


 僕達は、突然聞こえてきた声に驚いて一斉にその声の方向を振り向いた。

 するとそこには、猿の様な見た目をしたバレーボールくらいの大きさの妖精が、壁から僕らに向かって話しかけてきていた。


『まだまだ戦力のあてはあるのさ。それも、とびっきりのがあるのさ。』



~あとがき~


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