第二十五話 『早速ボス戦!』
俺と葉山は、順調にダンジョン探索を進めていた。
今日は、ダンジョン探索三日目だ。
俺のレベルは65、葉山は47と予想よりもハイスピードでレベルアップできている。
もはや、第一層のハイオークなんて相手ではないだろう。
《経験値が入りました。》
俺は、空中から襲い掛かってきたコウモリの姿をする魔物を真っ二つに切る。
このコウモリの魔物はスピードが異常に発達しており、立体的な動きで俺から逃げ回るから倒すのが結構面倒臭い。
更に、この階層の魔物達はどんどん俺に襲って行くようにとクルトから命令を受けているので、より一段と面倒臭い。
きっと、三日前の俺ではコウモリの体を見ることも出来ずに殺されていたことだろう。
まあ、今の俺の相手ではないけれども。
「そろそろ、葉山との合流場所かな。」
このダンジョンの構造は実にシンプルだ。
分かれ道は一階層で五か所くらいしかないし、どの道を通っても次の階層への階段へ辿り着ける。
体感で、一階層の踏破に掛かる時間は二時間程だ。
階層ごとの範囲も大体同じなので、いくつもの階層を踏破してきた俺は経験則からもうすぐ次の階層への階段があるんじゃないかなと思う。
「おっ、この階層もここで終わりか。」
俺は、奥の方に地下への階段を見つけたことで安堵する。
この階層はあのコウモリのせいで結構進むのに苦労させられたから、次の階層へ進めるのはとても嬉しい。
俺は葉山よりも先にこの階層の終わりまで到着してしまったので、一旦階段の前に座って休憩する。
ちなみに、各階層の出入り口には基本魔物は発生しないようになっているらしいので、少しくらい警戒を緩めて休憩しても全然問題ないらしい。
「あっ、清原君先に着いてたんだ。待たせてごめんね。」
待つこと数分で、葉山とクルトもこの階層を踏破してきた。
「そんなに待ってないよ。いい感じに休憩を取れたから。」
「そっか、それは良かったよ。」
そう言うと、葉山はその場に一旦腰を下ろした。
「葉山、クルトが居なくても大丈夫だったか?」
俺は、葉山へ気になっていたことを聞いてみる。
今、クルトはここに居ない。
ヴィルフェンス王国の王宮内を調べてもらって、ルチアーノとは誰か、王国は味方なのか等を調べてもらっている。
後、俺達の食糧も調達してもらっている。
冥皇も、見ることの出来ないクルトに「追跡」を使用してはいないはずだ。
その為、この階層は葉山一人で踏破することになったという訳だ。
「そこまで問題無いよ。ただ、一回だけ攻撃を受けちゃったんだ。特に影響は受けてないけど、ちょっと不安かな。」
まあ、葉山は近接戦闘型だから攻撃を受けることもあるだろう。
それに、葉山は地球で武術を嗜んでいた訳じゃないんだから仕方ないか。
「じゃあ、次の二十六階層からはクルトが帰ってくるまで一緒に行動するか。」
「うん、よろしくね。」
そう、俺達は既に二十五階層まで進んでいる。
そこまで時間に追われている訳じゃないが、他にやることが無いからただ無心でダンジョン探索をていたら、気付けばこのダンジョンも半分踏破し終えていたという状況だ。
第一階層を挑んだ時は踏破なんて無理だろうと思ったが、人間ってのは必要に迫られれば案外なんとかなるものらしい。
この調子なら、明後日くらいには五十階層に着けることだろう。
俺は、少しばかり今後を楽観視しながらダンジョン探索を進めていくのだった。
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「順調だ。怖いくらい順調にここまで来れてしまったな。」
「そうだね。私もびっくりだよ。」
俺達の目の前には、高さが十メートルは確実にあるであろう巨大な扉がある。
クルト曰く、この扉を開けるとそこにはこのダンジョンのボスであるベヒモスがいるらしい。
予想外にハイスピードでここまで来れてしまった為、今ここにクルトは居ない。
あっけなくここまで来れてしまった為、あまり感慨の様な感情はやってこない。
しっかりと安全マージンを取るのなら、クルトが来ることを待ってからボスへ挑むべきなのだろう。
だが、このダンジョンのボス部屋でも普通に「次元転移」は使える。
つまり、逃げ出そうと思えば何時でも逃げ出せるのだ。
ベヒモスは完全に肉弾戦を得意とする魔物らしいので、「次元転移」が何らかのスキルによって使えなくされることもないだろう。
「早速、ボス戦と行こうか。」
事前に葉山ともボス戦を挑むか否かは話し合っているので、俺は迷いなくその巨大な扉を開けた。
すると、俺がその扉を開けた瞬間、奥の魔法陣から体長五メートルはある人型の牛が出てきた。
「おいおい、デカいとは聞いていたけど、ここまでデカいのかよ。」
普通の人間である俺と葉山がベヒモスへ挑む光景は、まさに子供が大人に突っかかっているような絵になっていることだろう。
「想定通り想定外だね、清原君。」
「ああ、そうだな。」
確かに、ここまでトントン拍子で来れた俺達だが、別に苦労してこなかった訳じゃない。
このダンジョンのレベルはこの世界でもトップレベルらしい。
固有スキルが無ければ、きっと第一階層であの世に行っていただろう。
魔物が想定外のスキルを使用してきたり、いきなり仲間を呼んできたりして窮地に追い込まれたのは一度や二度ではない。
当然、その魔物達の頂点であるベヒモスが俺達の想像を越えてくることなど、想定内だ。
「どうせなら、ここでこいつを倒してクルトの奴を驚かせてやるか。」
「ふふっ、面白そうだね、それ。」
『ほぇぇーーー!』って叫びながらクルトが驚いている光景が、脳内で簡単に思い浮かぶ。
俺達は密かな企みと共に、ベヒモスへ走っていくのだった。
~あとがき~
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