第六話 『VS釜瀬』
俺は、釜瀬の言う通りに便所にやってきた。
異世界だとはいえ、やはりここが王宮だからか隅々まで清潔感が保たれている気がする。
クラスメイトが集まっていたあの場所でも、何人か居なくなっていたのでもう釜瀬は殺人を経験済みなのだろう。
「じゃあ、改めてその「次元転移」ってやつを見せてくれや。」
こうやって毎回見せることを迫るということは、見せることはスキルの発動条件なのかもしれない。
まあ、俺には作戦があるので釜瀬の話に乗ってやる。
「次元転移」
《次元転移を発動します。》
そう頭の中に天の声が流れると、俺は釜瀬の隣から数メートル先の個室の前まで一瞬で移動していた。
「す、すげぇじゃねえか!」
おいおい、なんか前回と全く同じことを言ってないか?
そして、釜瀬がそう言った途端、俺の「危機感知」が警報を鳴らしだした。
順調だ、このまま一週目の俺の行動を辿る。
俺は、焦ったようなふりをして背後を振り向く。
当然警報は鳴りやまない。
そして、釜瀬の方を見るとポケットから出した石を俺俺めがけて投げつけているところだった。
しかし、その行動を知っていた俺はレベル中のステータスを活かし、その石を躱しながら、とあるスキルを使用する。
《反射を発動します。》
《反射を発動します。》
そう天の声が言うや否や、その石が釜瀬の方に飛んでいく。
「なっ、」
始めて釜瀬は驚いたような声を上げたが、その声が放たれた直後に石が釜瀬の顔を貫通した。
「ぎゃゃゃぁぁ、痛ぇ痛ぇよ、どうなってんだこりゃ!」
「お、おえぇぇぇ、ゲボッ」
こういう光景に耐性が無い俺は思わずこの見ていられない惨状に吐いてしまう。
一週目の釜瀬は、よくこんな光景を見て平然としていたな。
釜瀬が石を食らってから、一分ほどが経過した。
《経験値が入りました。》
《スキル「略奪」を手に入れました。》
「おっ。」
俺は、何とか心が軽くなった気がする。
釜瀬を見ると、もうすでに息絶えていた。
あと、釜瀬を殺したからか経験値が手に入った。
まあ、魔力を持つ魔物を殺すことで経験値が入ったというのなら、魔力を持つ人間を殺すことで経験値が入ってもおかしくないか。
人間を殺しても経験値が入るという事実はけっこうヤバい事実だちは思うけれど、ぶっちゃけ今の俺には関係が無い。
棚からぼた餅だと思っておこう。
一応、今回の作戦はこうだ。
スキル反射で釜瀬の石を「反射」で打ち返して、釜瀬が俺に掛けていたスキルを奪う。
けっこう単純だけれど、やはりこの「反射」というスキルが無いと、釜瀬への復讐は果たせなかっただろう。
だって、今回釜瀬から「略奪」を奪うことは今の俺にはそこまで必要はなかった。
「反射」
対象への攻撃を、物理的にも魔法的にも反射できる。
「略奪」
対象が殺した人物が持っていたスキルの中で、一度見たことのあるスキルなら固有スキル、スキル問わずに略奪できる。
なお、殺人が非常にばれにくくなる。
殺人への忌避感がやわらぐ。
俺が、「略奪」をを奪えたのは、「反射」により俺から釜瀬に「略奪」がかかっており、一周目でおれがそのスキルを見たことがあったからだ。
まあ、釜瀬には教えないけど。
俺は、死体となった釜瀬を無視してクラスメイト達の元へ戻るのだった。
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俺は今、物凄く豪華な上にこの廊下の中で特筆して存在感を出す扉の前に立っている。
そして、この扉の奥には国王や宰相のショウワールさんやその他大勢の大臣たちがいるらしい。
地球ではほとんど人前に立ってこなかった俺は少し緊張していた。
「それでは扉を開けますので、くれぐれも無礼の無いようお願いします。」
俺たちを案内したレベルのかなり高そうな騎士がそう言ってくる。
釜瀬を殺したことがばれないか内心ヒヤヒヤしているので、俺は目立った抵抗は見せない。
クラスメイト達も、さっきまではワイワイと自身の固有スキルの自慢大会をしていたが、国王という名を出されて若干の緊張が伝わってきた。
ゴゴゴゴゴゴゴ
いかにも威厳のある音を出しながら、徐々に扉が開いていく。
そして、扉が開くにつれて部屋の中の光が廊下に届くようになる。
三秒ほど経つと扉が完全に開いく。
部屋の右横には一矢乱れぬ整列をする騎士らしき服装の男たち。その光景だけで俺たちは少し圧倒される。
左横には俺たちを召喚した魔術師たちと似たような恰好をした男たち。若干女性も含まれている。
最後に、部屋の最奥に堂々と玉座に座る国王がいた。
俺たちは案内した騎士が前に全身するのでそれに従って前に進む。
そして、国王の十メートルほど前に来た時、騎士が高々と叫ぶ。
「異界より召喚されし勇者様ご一行をお連れしました。」
「うむ、ご苦労。」
国王が返す。
ちなみに、国王の隣には宰相としてショウワールさんが立っていた。
「これより、第五百八回ヴィルフェンス王国の定期集会を始める!」
「「「「「「「ハッ」」」」」」」
ショウワールさんの宣言により、何十人もの騎士や魔術師が一斉に大音量の返事を返した。
俺たちは、ただただその気迫に圧倒されるのだった。
~あとがき~
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