第五話 『二日目開始!』
ミリエルさんが消えてから、俺は休息を取るためにショウワールさんのところに戻っていた。
「次元転移」で世界の時間を戻しても、俺の体力まで戻るわけでは無いのだ。
ほとんど休息を取らずに、体感時間で三時間くらい魔物を狩っていたので、疲労はもうピークに達している。
俺がダンジョンから出ると、外は俺がダンジョンに入った時と同じくらいに眩しく、長時間日の光を浴びてなかった俺は少し目を細めてしまう。すると、
「おお、もう戻られたのですね。」
そう言いながら、ショウワールさんがこっちに向かってきた。
というか、この人この国の宰相なのに暇だな。
いや、俺が「次元転移」で同じ時間を何回もループしてるから、そう感じるだけなのだろうか。
ちょっと確認してみるか。
「あの、俺がダンジョンに入ってからどれくらい経ちましたか?」
「そうですね、大体二十分くらいではないでしょうか。」
マジかよ。全然時間が経っていないじゃないか。
「もし、ダンジョンに潜られて疲れておられるのなら、今は一度休まれますか?」
「ありがとうございます。じゃあ、ちょっとだけ休みませてください。」
俺が疲れているのを感じたのか、ショウワールさんは気を利かせて提案してくれた。
その言葉に俺は甘えて、に案内されたとても豪華な部屋のベッドで、泥のように眠るのだった。
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はっきり言って、昨日は俺の人生の中で一番に濃かったと言っても過言ではない。
異世界転移して、釜瀬に殺されて、「次元転移」で過去に戻って、ダンジョンを周回しようとしてミリエルさんに出会ったり、とにかく忙しい日だった。
だが、悪いことばかりではない。
幸せになろうと決意することが出来て、昨日がその一日目となった。
そして、今日はその二日目だ。
「おし、今日もがんばれ、俺!」
俺は、自分自身に活を入れるようにそう叫んだ。
昨日は、まだ日が全然出ている時間内に寝たというのに、俺が起きたのは多分朝の六~八時くらいだと思う。
昨日の疲労のせいか、日ごろの習慣のせいか、俺はなんだかんだ半日以上は寝ていると、体内時計が言ってくる。
俺は、朝を思わせる鳥の声を聞きながらベットから起き上がると、顔を洗ってから誰か居ないかと部屋の外に出る。
すると、
「おはようございます、清原様。」
地球では秋葉とかの喫茶店によくいるようなものではなく、どこか気品を感じさせるたたずまいをしたメイド服の美女が立っていた。
「おはよう。」
何で俺の部屋の前にいるんだ?
俺が起きたのは経った今なのに。
もしかしてこの人、俺が起きるまでずっとここで待機していたのではないだろうな。
メイドの仕事がそこまで過酷ではないことを信じたい。
「清原様は、今日の予定を知らされておりますでしょうか?」
「いや、知らされてないんだが。」
というか、今日はミリエルさんに作ってもらったあのダンジョンの深層に行ってみようと思っていたのだけど。
「では説明させていただきます。今日は午前中にこのギルティア王国の国王との面会をされた後、この国の騎士団の団長であるペテラウス様に面会してもらう予定です。午後は特に予定はありませんので、ご自由に行動されて構いません。」
じゃあ、午後まで待つか。
「次元転移」のおかげで、俺に訓練時間の長さはそこまで関係しない。
それより今重要なのは、国王や騎士団長との面会だ。
もっと言えば、彼らに面会するのはきっと俺一人ではない。
今まで俺をいじめてきた釜瀬たちが冷静になった今、俺に会うということだ。
まだ、何故釜瀬が俺を殺しに来たかは分かっていない。
俺には情報が不足しているのだ。
だからこそカモにされる。
「それでは、準備が出来次第ほかの勇者様方のところに案内いたしますので、準備が出来次第お呼び下さい。」
そういえば、俺は今起きたばかりなので寝間着を着ている。
ベットの上に、物凄く上物そうな衣服がたたまれた状態で置いてあることをドアの隙間から確認すると、俺はちょっと待っててください、と言いながら部屋に戻っていった。
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メイドさんにクラスメイトのところまで案内してもらうと、彼らは驚いたようにこっちを見てきた。
「あ、あいつ清原じゃねえの?」
「いやいや、あいつ召喚された直後に死んだだろ。」
「魔法パワーで何とかなったんじゃねえの。」
俺を見ると急にひそひそと彼らは話し出した。
だが、釜瀬は俺を見た瞬間、
「おい、清原おまえ生きてたのかよ。」
「まあな。」
今思うと、釜瀬のこのフレンドリーな態度には違和感しか出てこない。
だが、一回体験しているからかそこまで違和感を捨てることはなかった。
俺は推測として、釜瀬が何故俺を襲ってきたのかを準備中に考えていた。
まず、一回目の釜瀬の「もう死ぬお前の代わりに、俺が次元転移を使ってやるよ。」という内容から、略奪系のスキルを持っているのは確定だろう。
次に、レベルアップもしていない釜瀬が、人の頭を削り取るような速さで石を投げれるとも思えない。
よって、物を速く投げるようなスキルも持っているのではないだろうか。
釜瀬は、地球では野球部に入っていたし、筋は通っているはず。
「おい、お前はどんなスキルを持ってんだよ。」
馴れ馴れしく釜瀬が聞いてくる。
世界は、時間を戻してから同じようなことを繰り返すと同じような展開になるらしい。
そんな言葉を、地球で聞いたことがある気がする。
当然と言えば当然で、あっちの世界ではほとんどその言葉に意味はない。
だが、「次元転移」を持つ俺からすれば、その言葉は重要な意味を持つ。
「俺は、「次元転移」というスキルだ。」
「へ~、ちょっと見せてくれよ。」
なんか前回も見たような光景だ。
「ここで使う訳にはいかねぇしよ、ちょっと便所でそのスキルを見せてくれや。」
今思うと怪しさ満点の誘い文句だ。
だが、俺にはとある考えがあるのでその提案に乗る。
「ああ、いいぜ。」
そういった時、釜瀬が笑うのを全力でこらえる瞬間を見てしまった。
(よくもまあこいつを信じたよな、俺。)
俺は、自分の向こう見ずさに若干呆れながら、釜瀬についていくのだった。
~あとがき~
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