4.
女性が居なくなってしまったのを少し不気味だと思いながら、宮部教授達の所に行くと、小鳥遊さんが眉間に皺を寄せた。
「…貴方達 この短時間で一体何したの…?」
小鳥遊さんの表情と言葉からして、いい事ではないのは明らかだったが、何かやらかした覚えはない。
「罰当たりな事は何もしてないですよ」
「俺達、現地の人と話したぐらいっス」
戸惑いながらも小鳥遊さんに僕と一輝は、何もしていないと否定した。
だが、一輝の言葉に小鳥遊さんが反応する。
「
「この付近の住民で、そんな協力的な人いたかなぁ…?」
二人の言葉を聞いて、嫌な予感がして思わず息を呑む。
「――…まさか、」
「どうやら、
ナニが僕達に興味を持ったのかは言わなかったが……。何がなんて聞かなくても分かる。
今の僕には、その言葉だけで決定的なモノだった。
「――…でも、
彼女とは、僕に憑いて殺そうとしていたあの女性の事だ。
その言葉に少しだけ胸を撫で下ろしたのも束の間、
「その女性も綿貫くんに憑こうとしていたみたいだけど」
サラッと恐ろしい発言しないで欲しい。
「モテモテじゃん、わたっち!」
「綿貫君いいなぁ…」
あんな恐ろしい言葉言われたのに、あの二人は何言ってるんだろうか…全然嬉しくない。
「……なんで僕ばかり」
綿貫は愚痴を零して溜息を吐いた
「視えるからが1番の理由でしょうけど…今回は武藤くんが居たからね」
「え、俺?なんで?」
一輝は皆目見当もつかない、と言いたげな様子だ。
「私に次いで、霊感が強いのは貴方だから それに、霊と生きてる人と
「……ッ!」
小鳥遊さんにそう言われると、一輝は口を噤んだ。
「だから、心霊スポットに行ってもそれが霊だと気が付かない」
「あ、もしかして…一輝が 現地の人によく話聞くって…」
僕の言葉に小鳥遊さんは静かに頷く。
「貴方が現地の人だと思って接していたのは、恐らく全員」
「――…でも、それは小鳥遊先輩の仮説っスよね?」
「ええ、そうね」
そう言った小鳥遊さんの足元には、いつ現れたのか密教ちゃんがいた。
「その子 小鳥遊先輩の妹さんっスか?いつの間に連れて…」
その言葉に、僕は驚いて思わず一輝を見た。
一輝は確実に視える人間だという事が証明された瞬間だったから、そんな僕の異様な反応に、一輝も違和感を覚えたのだろう。
彼は、慌てて更なる第三者の宮部教授にも問う
「きょ、教授にも見えてますよね!?」
「……えーっと、武藤くん 小鳥遊くんの側には
強いて言えば、なんかモヤっぽいような…?と、宮部教授は目を凝らして見ている。
どうやら宮部教授には、そんなに霊をはっきり視る事は出来ず、モヤ程度にしか視えていないようだ。
「え…、冗談キツイっスよ!こんなにハッキリ…!!なぁ、わたっち!」
「……うん 僕にも視えるよ でもその子は、幽霊だよ」
「嘘、だろ……?」
そう言いながら、一輝は再び密教ちゃんに目を落とすと、密教ちゃんは少しばつが悪そうな顔をし、透けながら消えた。
そんな現状を目の当たりにした一輝は、項垂れるようにして更には驚きのあまり声も出せない様だった。
よく見ると、項垂れた一輝の肩が震えている。
どうやってフォローすべきか悩みながら、僕は恐る恐る一輝に声を掛ける。
「…一輝、」
「……―――すっげぇ!!」
一輝の第一声に、はぇ…?と、僕は素っ頓狂な声をあげてしまった。
「俺、幽霊視えてたの!?マジかよ!!スゲー!」
てか、わたっちも視えてたのかよ!、と興奮が冷めやらぬ状態だった。
どうやら、全く心配しなくて良かったみたいだ。一瞬でも心配した僕の気持ちを返してほしい。
「……はは、落ち込んでるのかと思ったのに」
「寧ろ、喜んでるみたいね」
流石 綿貫くんの友人ね、と付け足す小鳥遊さんの言葉は、まるで皮肉を込めて言われた様な気がした。
「…――さて、無駄話 はここまでにして本題に入るわね」
小鳥遊さんは話を切り替える為に、ぱん、と手を叩いた。
「ここに来た本当の目的は、
そう言うと、一輝は再び驚いたらしく僕を見る。
「取り憑かれるって何したんだよ わたっち!」
「何もしてないよ!たまたま通学する為にこの道一度だけ使ったら…そんな事に」
普段通学に使っている道が、工事で通行止めになってしまった事があって、その時に一度だけ使っただけだ。
それに、その時には特に何も違和感がなかった。
「ああ、だからあの時 綿貫くん倒れたのか」
「え、あー…いや、あの時は…」
あの時倒れたのは黒鵐さんに触られたからで、本題の彼女が原因ではない。
でも、その時に彼女が言葉を掛けてくれなかったら、あの場に姿を現れてくれなかったら、ずっと分からないままだったと思う。
「彼女を視た時、事件の一部が見えたの 犯人の髪型が綿貫くんに似てて彼が犯人なんじゃないかと思って付いて来たのよ」
あの時も、小鳥遊さんはそう言ってた。
だが、事件が深夜に起きた為に、いくら調べても犯人の見た目は出て来なかった。
「彼女は なんで犯人の髪型が見えたんだろう?」
「ここ街灯とか自販機とかもないもんなぁ…」
どうして犯人の髪型が見えたのか、考えていたその時だった。
「…――た」
「え?今、小鳥遊さん何か言いました?」
僕の問いに小鳥遊さんは声を掛けていないと首を横に振った。
「さっき、女性のか細い声が……気のせいかな」
周辺を見るが何もいない 勿論、幽霊もだ。
「兎に角まずは、その女の人探さないとな!話が進まないし」
「そうね でも、肝心の彼女が出て来てくれないのよね」
「人数が多いと出て来ないってよく言うよね!」
宮部教授の一言で、一斉に視線が教授に向かった。
誰も口にしないが、多分…いや、絶対 教授がいるから出て来ないんだと思う。
何故かって?そりゃあ…こんなパパラッチみたいに一眼レフ持って白衣着た人がいたら
人だろうが幽霊だろうが、誰も出て来たくないと思う。
住民に通報されないかだけが、今の所心配してる部分だ。
「綿貫くんに着いて来た人~出ておいで~ここにいるよ~」
そう言いながら、宮部教授は
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