3.

 結局、綿貫は宮部教授を止める事が出来ず、音切町の轢き逃げ事件の現場に行く事となってしまった。


「初回の講義からフィールドワークなんてなんか楽しそうだな」


 なんて言いながら一輝は、楽しそうにしていた。


「一輝って心霊系とか大丈夫なんだっけ?」

「ん?意外と平気だぜ?そう言う所行っても、霊も現象も見たことないし!」


 現地の人とかには よく話聞いたりするなぁ、と言いながら、今まで心霊現象にあった事がないと言う一輝。


 小鳥遊さん曰く、視え過ぎて気が付いてない って事だったし、出会った人が幽霊だったかどうか分かってないのかもしれない。


「立ち話もなんだから、早速現場に向かおうか!」


 恐らく、痺れを切らしたであろう教授の一言で、問題の事故現場へと向かう事になった。


 現場である音切町の住宅街にある人気のない交差点。その場所が、事件現場だ。


 昼間よりも周りが暗いせいか、普段とは違う異様な雰囲気があった。


「なあ、ここって…」

「音切町轢き逃げ事件があった事故現場よ」


 事件はもう30年近く前の話、だけれど…と近くにいた人が話す。


「30年近く経った今でも、この交差点での怪奇現象が後を絶たないの」

「どんな……?」

「そこのミラーに亡くなった女性の姿が映し出されたり、女性の呻き声や衝突音が聞こえたり…」


 そこまで話を聞いておいてなんだが、ここで、とある疑問が脳裏をよぎる。


 今回のフィールドワークでは、はず。


 まさか幽霊、なのか…?と、思わず身構える。

 そんな僕の表情が分かってしまったのか、女性は話すのを止めてしまった。


「あぁ…ごめんなさいね つい、話し込んじゃったわね 私はこの近所に住んでるの」


 夜中に心霊動画とか撮りに来る人がいるのよね、と女性は少し迷惑そうに言った。

 迷惑そうに言う割には、結構詳しく心霊現象とかの話をしてくれる女性に少し不思議に思う。


「…その割には結構教えてくれるんスね、事件現場ココの事」


 一輝も同じ様に不思議に思っていたらしく、その疑問を女性に問う。


 その問いに、女性の顔が曇った様な気がした。それと同時に何故だが、ここ一帯の空気も悪くなった。


 ここに居たくない、そう思った時に宮部教授の呼び声がし、2人でその声がする方を振り向く


「おーい綿貫くん達 早くしないと置いて行くよー」

「すみませーん 今行きまーす!」


 そう返事をして、女性の話を聞こうとして女性の方を向き直すが、そこには誰も居なかった。


「今のってさ……」

「いや、二人で視るって事はないだろ…」


 苦笑いしながら、一輝と顔を見合わせたのだった。

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