2-4エルフの人



 外の世界が知らない言葉を使っているって言うのに驚いたけど、幸いな事に今に出会った人たちの中にエルフの人がいた。



「これは一体どう言う事だい? 見た所君たちはまだかなり若い木のようだけど?」


「あ、えっと、良かった、言葉の分かる人がいて。私はリルって言います。こっちは双子の妹ルラ。えーと、なんか私たちエルフの村からここへ飛ばされちゃった様なんですよ」


 私のその説明受けてそのエルフの人は驚く。

 そしてそのエルフの人は後ろを向いて仲間と思われる人間の人に何やら知らな言葉で話をする。


「僕はトラン、見ての通り渡りのエルフだ。でも君たちって村で見た事無いけど何処の子? 年は幾つ?」


 トランさんと名乗ったエルフの人は色々と私たちの事を聞いて来た。

 そう言えば外の世界のエルフの人ってシェルさん以外に初めて会うかも。



「えっと、父はデューラ、母はレミンって言います。年齢は…… 生まれて十五年です」


「十五歳!? レミンさんって子供できたんだ!? って、そんなちっちゃな子が何でこんな所に?」


「それはぁ……」



 うーん、何と言えばいいのだろう?

 素直に説明しても分かってもらえるだろうか?



「えーと、シェルさんとエルハイミさんって人がシャルさんの家に来ていて……」


「ちょっと待って、シェルだってぇ? じゃあ、またシェルのせいで君たちはこんな所まで飛ばされたって言うのか? こんな幼子なのに!?」


 なんかシェルさんの名前を聞いただけでトランさんは鼻息荒くなる。

 シェルさん、やっぱりあなたって人はトラブルメーカーなんですね……



「とにかく、君たちは僕が保護する。十五歳なんて右も左も分からない子供じゃないか!」



 ですよね~。

 エルフの感覚だと私ら三歳児扱いですもんねぇ~。



「ねぇねぇ、お姉ちゃん、後ろの人間の人が何か言ってるみたいだよ?」


「ああ、そうだちょっと待ってくれ」


 トランさんはそう言って人間の人たちに何か話している。


 のだけど、途中に聞き取れるシェルさんの名前が出たあたりで人間の人も大いに驚いている様だ。


「シェルが関わっていればそうだよな。と言う事は、この地竜もシェルのせいか?」


 トランさんはそう言って私たちの後ろにいる怪獣を見る。

 そして騒がしかった人間の人たちも大人しくなっておずおずと私たちの前に来る。



「えーと、リルとルラだっけ? 君たちはコモン語はまだ習っていないかな?」


「コモン語?」


「ああ、この世界の共通語で、主に人間族が使っている。ほとんどの部族や亜人たちもこの言葉を覚えて交流をしているんだけどね」



 あー、なるほど。

 あの分からない言葉が共通語ってやつなんだ。


 

 私は人間の人たちに向かってぺこりとお辞儀をする。

 ルラも私に習って同じくぺこりと頭を下げると何やら人間の人たちが私たちに話しかけてくれる。


 でもすぐにトランさんがコモン語らしき言葉で彼らに話すとみんな頷き私たちがしたようにぺこりと頭を下げて短い言葉で話しかけてくれる。



「エシア、こんニチワ」


「ロナンです。エルフ語は苦手ですが私の言っている言葉は通じてますか?」


「テル、イウ」


「ホボス」



 みんなわざわざ私たちが分かる言葉で挨拶してくれた!

 あ、でも一番年を取っている人ってエルフ語喋っている?


 私は思わずトランさんを見てからロナンさんって人を見ると笑って教えてくれる。


「ロナンは魔術師で頭が良いからいろいろな言語を知っているんだよ。そうだね、何か有れば僕かロナンに話かけると良い。しかし、君たちも災難だな。シェルに巻き込まれるとはねぇ……」



 なんかものすごく同情されている。

 確かにいきなりこんな所に放り出されれば災難だな。



「あっ! お母さんたちにどう連絡すればいいんだろう!?」



 ルラが突然そんな事を言い出す。

 今までいろいろ有り過ぎてすっかり忘れていたけど、お母さんやお父さんに今の現状をどう伝えれば良いのだろう?



「ふう、たまたま僕がいて助かったね。とにかくこれから風の精霊を使ってフ

ァイナス長老に連絡を入れるよ、君たちが無事だってね」



 そう言ってトランさんは目をつぶり風の精霊を呼び出す。


 ふわっと風が舞、ロナンさんの羽織っているハーフコートのすそを揺らす。

 そしてロナンさんは軽いつむじ風に包まれてからまた元の状態に戻る。



「ふう、これで一応はエルフの村に君たちがイージム大陸のイザンカ王国領にいるって伝えたよ。しかし困ったな、エルフの村が有るサージム大陸まではかなりの距離が有るからね」


「イージム大陸?」


「ほら、ルラ、この世界に在る四大大陸の一つだよ。東に有る細長い大陸」


「へぇ、リルは良く知っているね?」


「お母さんたちに教わってましたから」



 言いながらトランさんは私の頭に手を載せて撫でてくれる。

 うーん、男の人に勝手に頭を撫でられるの嫌なんだけど、今は仕方ない。



「そうするとここからエルフの村に戻るのって大変なの?」


「みたいだね、トランさん、私たちどうしよう?」


 ルラに言われて帰るのがとても大変だと知ってトランさんに助けを乞う。



「とにかく君たちを安全な所まで連れて行くよ。僕も出来る限り君たちを守るし、可能な限り面倒を見てあげるよ。全く、こんな幼い若木をこんな危ない所に飛ばすなんて…… どうせまたシェル自身は悪気はなかったのだろうけどシェルが戻って来ると毎回村で何か起こるよな!」



 何故か怒るトランさん。

 でも今回もやはり問題が起こってしまった様で私としては何も言えない。


 でもまあ、九死に一生を得てエルフの人に助けられたのは僥倖だった。




 頭を撫でられるのは嫌だけど、今は大人しく撫でられておこうと私は思うのだった。 


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