2-3初めての野宿


 食材は何とか手に入った。

 そして私のチートスキル「消し去る」も使い方によっては役に立つことが分かった。



「さてと、そうなると今度は寝床だけど。あんな怪獣がまた出たらルラに頼るしか無いからなぁ。それと他の動物もいるだろうからやっぱり焚火か何かして安全に眠れそうな場所を探さないとなぁ……」


「うーん、だったらあの怪獣の近くが良いんじゃない? 死んでるからまず大丈夫だし、あれだけの怪獣より強いのってそうそういないと思うんだよねぇ~」


 ルラはそう言ってあの怪獣を見る。

 既に白目をむいて息絶えているけど、確かにあんな大きな怪獣ってそうそういないだろう。


 死んだ動物の近くで寝るってのはなんか嫌だけど、今晩くらいならこいつの近くでも仕方ないかもしれない。



「うーん、仕方ないよね。今日はとりあえずあの怪獣の近くで寝ましょ。あと、鍋を引っ張り出して【水生成魔法】で水を確保してっと」


 私はまたポーチから鍋を出して飲み水と作ろうと言ってふと思い出す。


 火が無い。


 飲み水は魔法で作り出せるから良いとして、キノコとか熱を通さなければ食べられない。



「ルラ、火が無い! どうしよう!?」


「火ってお母さんみたいに火打石で火を付ければいいんじゃないかな?」


「その火打石が無いじゃないの!」



 言われてルラはハッと気づく。

 焚火をするにしても大元の火が無い。


「えっと、木を擦って火を付けるとか……」


「それテレビで見た事あるけどすごく大変なはずだよ? それに種火だっけ、あれ作るにも綿みたいの必要だし……」


 とりあえず周りにあるモノを見る。

 落ち葉は乾いているから使えそうだけど、後は松ぼっくり?

 そう言えばテレビのキャンプ番組で松ぼっくり使っていたような。


「そうだ、ルラのチートスキルでその辺の石をカチカチやって火がつけられないかな?」


「あたしのスキル? でも『最強』スキルでそんな事出来るの?」


「火付けの『最強』でしょ、あんたって!」



「おおぉっ! なるほど、火付けで『最強』なんだあたし!」



 そう言いながらルラはさっそくその辺の石を探し出して両の手に握る。

 私は落ち葉や燃えやすそうなものを掻き集めてあの怪獣の近くに石を丸く組んで焚火の場所を作る。

 こうしておかないと万が一にも火が広がったら森が燃えちゃうからね。



「さあ、ルラ。あなたの火付け『最強』の出番よ!!」


「よっしー! あたしは火付けの『最強』!!」


 言いながらカチカチと石と石を打ち始める。

 何度かやっているとばちっと火花が出始める。


「火花が出た! ルラ頑張れ!!」


「よ~しぃ、行くぞぉ~!!」



 かちかちかちかちかちかちかちかちっ!!



 ルラは高速で何度も何度も石どうしを打ち始めるとどんどんと火花が飛び始める。


「うぉおおおおおおぉぉぉぉっ!」


 それはあまりの速さで打ち続けるものだからまるで花火みたいに火花が飛び散る。

 と枯葉に火が付き始めた!



 ぼっ!


 ばきーんっ!



 ちょうど火が付いたと同時にルラの持っていた石が割れた。

 流石に何度も打ち合っていたので耐えられなくなったのだろう。


 ルラの手の中で粉々になってしまったそれを見てルラは自分の手のひらを見る。


「うーん、あんなに簡単に石が割れちゃうとは。やっぱり火打石とは違うね?」


「でもルラのお陰で火が付いた。ふーふー、おお、火が強くなってきた。さてと松ぼっくり入れるとどうなるかな?」


 私は松ぼっくりを入れてみると一気に火力が上がった。


「おお、これで焚火も料理も出来るね」


「え? お姉ちゃん料理できるの?」


 驚くルラに私はくっくっくと笑いながら言い放つ。



「何を隠そう、生前はお料理が趣味だったの! だから結構いろいろ作れるわよ!」


「おおぉーっ!」



 ぱちぱちぱち~。



 お料理が出来る宣言にルラは喜んで拍手する。


 生前は両親が共働きだったからお弁当とか自分で作っていたし、帰りが遅いときは晩御飯を私が作っていた。

 お兄ちゃんも私が作るご飯だけは美味しいって言ってたから実はそこそこ自信はある。



「じゃあさ、お姉ちゃんさっきのキノコをお料理してよ!」


「うん、調味料が無いけど何とかやってみようか」


 私は焚火に薪をくみ入れながらフライパンを取り出し、そこにあの松の実を入れる。



 じゅ~。



 フライパンが熱せられ松の実が焼かれると油分がにじみ出てくる。

 程よく油がフライパンにまわってきたらさっきのキノコを入れて炒めてみる。



 じゅじゅぅ~。



「へぇ、結構良い匂いがするわね?」


「へへへ、楽しみだね?」


 私はその辺の木の枝で作った菜箸で炒めたキノコを一つ取ってみて口に運ぶ。



 ぱくっ!

 

 もごもご……



「うーん、意外と美味しい? なんかマイタケみたいな味だなぁ。でもちょっと塩っ気が足りないかな?」


「お姉ちゃんだけでずるい! 早くあたしにも食べさせてよ!!」


 焼き上がったキノコと松の実を火からおろしてルラにもその辺の枝から作った箸を渡す。

 エルフになってから初めて使う箸だけど、ルラは器用にキノコをつまんで口に運ぶ。



「あ、これ美味しい。松の実の油が絡んでお母さんが作るキノコ炒めより好きかも」


「うん、キノコ自体がおいしいからね。でも塩とか調味料って欲しいなぁ」



 二人して夢中にキノコをつついていると向こうの茂みががさがさとする。



 まさかまたなんかの動物!?



 驚きそちらを見ると人間の人たちが出てきた!?

 彼らは私たちを見て知らない言葉でなんか驚いている。


 どうやら私たちに何かを聞いている様だけど、所々は聞き取れるも何言ってるかは完全に分からない。

 私たちがエルフだとかドラゴンとか言う単語は分かる。


 うーん、こまった。

 外の人間って知らない言葉喋っているんだ……


「なんかエルハイミさんと違って分からない言葉喋っているね?」


「うん、これってどうしたものかな??」


 私たちがそう困っているといきなり知っている言葉がかけられる。



「君たち、こんな所でどうしたんだい!? それにその後ろにいる地竜は一体!?」




 驚きそちらを見るとそれら人間の人たちの中にエルフの人がいるのだった。


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