第二章:転移
2-1異空間
私たちはシェルさんを掴んだまま一緒に異空間に飛び込んでしまった。
「ちょっと、エルハイミ! リルとルラがくっついて来てる!!」
「うわぁ!!」
「なにこれぇ!?」
真っ暗で何も見えないはずなのに体が何処かに流されている感じがする。
と、シェルさんを掴んだ手を私は放してしまった。
「リル! 駄目、手を離しちゃ!!」
「お姉ちゃん!」
シェルさんから手を離した途端、私だけが置き去りにされる感じでシェルさんたちが遠ざかってゆく。
そう感じた瞬間ルラがシェルさんから手を離し私の方へ飛んでくる。
「ルラまで! エルハイミ、リルとルラが離れた!! 何とかしないと!!」
そうシェルさんが叫んだ時だった。
周りが一気に明るくなって私とルラは二人してその光の中に飲み込まれるのだった。
* * * * *
「あ、あれ?」
「お姉ちゃん?」
気が付くと私とルラは見知らぬ森の中にいた。
エルフの森とは違うのは一目瞭然だった。
だってとげとげしい針葉樹の葉っぱなんてエルフの森には無かった。
「ここって…… どこ?」
「うーん、なんか森の匂いが違うね? それに変な音がする……」
隣にいたルラはそう言って周りをきょろきょろと見渡す。
私はものすごく不安になってルラにくっつきながら周りの様子を見る。
「ここってエルフの森じゃないよね? 一体何処なんだろう……」
「お姉ちゃん、あれ見て!」
ルラに言われてそちらを見ると、大木をなぎ倒し大きなトカゲみたいのが現れた!
それは唸り声をあげながら私たちを見下ろす。
そしてその瞳はどう考えても餌を見つけたかのような色をしていた。
「ね、ねぇルラ、あれって一体……」
ガタガタ震え出した私と違いルラは瞳を輝かせてその怪物を見る。
「凄い! あんな怪獣初めて見た!!」
いや、それはそうなんだけど、どう考えてもやばくない?
あれだけ大きければ私たちなんか一口で食べられちゃうんじゃないの?
そう私が不安がっていると予想は的中してその怪物は大きく吠える。
『ぐろろろろろぉろろろぉおおおおおぉぉぉぉっ!』
咆哮をあげてからどすどすとこちらに口を開き向かってくる。
私は悲鳴を上げてルラにしがみつこうとすると、すっとルラがいなくなる。
ばんっ!
バキッ!!
「よっと!」
風が吹いたかと思ったらルラが大きく飛び上がってあろうことかその化け物の横顔に拳をぶち込んでいた!?
『ぐろぉおおおおぉぉぉぉ!?』
その怪物はいきなりルラに殴られ驚きの声をあげていたようだった。
そしてよろけながらも踏みとどまって、ルラを睨みつける。
「えへへへへへ、お姉ちゃん、ここなら秘密の力使ってもいいよね? なんかこの怪獣あたしたちを食べようとしているみたいだから」
「え、あ、うん! そうだね、ルラのチートスキル、『最強』があったよね! やっちゃえルラ!!」
「よぉおぉしぃ! いっくぞぉ~、あたしは『最強』!!」
まるで暗示でもかけるようにそう言ってルラはまた飛び上がる。
それは普通のエルフの跳躍では無い。
エルフは身軽だからある程度は高く飛び上がったりできるけどそんなレベルじゃない。
軽く木のてっぺんまで飛び上がるそれはまるで魔法で飛んでいるかのようだった。
「必殺ぱーんち!」
ぼごっ!
『ぐろぉおおおおおぉぉぉっ!!』
ルラの放った拳はまたまた怪獣の顔を捕らえ、その横顔に強力な一発を打ち込む。
流石に今度のは応えたのか、怪獣はたまらず横に倒れる。
しかし怪獣は倒れながら大きく息を吸いこみルラに向かって炎を吐き出した!?
「だめっ! ルラぁっ!!」
私はその炎がルラを捕らえる瞬間手をかざし、炎を「消し去る」と念じる。
するとルラの直前まで伸びていた炎があっさりと消え去った。
「ありがと、お姉ちゃん! こいつ火を吐くなんてまるでドラゴンみたいだね! よっと!!」
ぼがぁっ!!
ルラは着地と同時にその怪獣を蹴飛ばすと空高くその巨体が浮かび上がる。
それと同時にルラは飛び上がり叫ぶ。
「必殺きーっく!!」
どずん!!
『ぐろぉっ!!』
ルラのその跳び蹴りは見事に決まって怪獣の身体が変な方向に曲がる。
そして短い叫びと同時に地面に大きな音を立てて叩き付けられる。
どっがーんっ!!
とん。
「ふう、どうだ?」
リルは地面に降り立つと怪獣に振り向きその様子を見ると、もうあの怪獣は身動き一つしない。
「やっつけたのかな?」
「うん、たぶん。でもこんな怪獣がいるなんて、やっぱりここってエルフの森じゃないね、お姉ちゃん」
そりゃそうだ。
エルフの森で見た事も無いよ、あんな怪獣。
しかも炎まで吐くだなんて危ないったらありゃしない。
「それで、これからどうしようお姉ちゃん?」
「う、どうしよう…… もしかしてまだこんな危ない怪獣がうようよしている所なのかな?」
きゅるるるるるぅ~
そんな心配をしていたらルラのお腹が鳴った。
そして思い出す。
ここが何処かという問題の他に私たちは何も持っていないと言う事を!!
「あ”あ”あ”ああぁぁぁぁっ! どうしよう!!」
「お姉ちゃん、その手に持ってるのってシャルさんのポーチだよね? なに入ってるのかな??」
あっ!
私は手に持ったままのポーチに気付く。
そう言えば持っていてと言われて預かったままだった。
もしかしてこれで何とか助かるかもしれない!
「ルラ、シャルさんには悪いけどポーチの中身を見ましょう!!」
そう言いながら私とルラはポーチから中身を引っ張り出し始めるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます