燕鳳2  苻堅に具申

拓跋什翼犍たくばつじゅうよくけんが死亡すると、孫の拓跋珪たくばつけい長安ちょうあんに連行されそうになる。燕鳳えんほうは拓跋珪が未だ幼いことを理由とし、苻堅ふけんに断固として申し入れをする。


「いまだい王が崩ぜられ、臣下たるはずの子が背き死亡し、残された孫は未だ幼く、誰かの手を借りたとて到底立てるものでもございません。拓跋の別部大人たる劉庫仁りゅうこじん殿は勇敢にして知謀の士。一方で鐵弗てっふつ劉衛辰りゅうえいしんは狡猾にして変心も多き者。あの者に拓跋のもと領地を任せるわけにもまいらぬでしょう。ここはもと拓跋の部民を二分し、両名にそれぞれ統治させるのが良いでしょう。両名はもとより深くいがみ合う仲でございますが、敢えて自身から攻撃をしよう、とも考えは致しませぬ。すなわち両名の勢力を均衡させておくのが、辺境を統御する良策にございます。そうしている内に拓跋のご嫡孫が長じたところでお立てになるのがよろしい。ともなれば陛下が亡国に莫大なる恩をお下しになったこととなるのです」


苻堅はこの提言に従った。燕鳳は間もなく東方に脱出した。


拓跋珪が即位すると吏部郎、給事黃門侍郎、行臺尚書と歴任、きわめて重く礼遇された。


拓跋珪が暴死すると、崔宏さいこう封懿ふうい梁越りょうえつらとともに拓跋嗣たくばつしに経典や春秋を教授し、のちに朝政に参与した。拓跋燾たくばつとうが即位すると北魏ほくぎ建国以前以後の功績から平舒へいじょ侯に封じられ、鎮遠將軍に任じだられた。431 年に死亡した。




及昭成崩,太祖將遷長安。鳳以太祖幼弱,固請於苻堅曰:「代主初崩,臣子亡叛,遺孫沖幼,莫相輔立。其別部大人劉庫仁勇而有智,鐵弗衞辰狡猾多變,皆不可獨任。宜分諸部為二,令此兩人統之。兩人素有深讎,其勢莫敢先發。此禦邊之良策。待其孫長,乃存而立之,是陛下施大惠於亡國也。」堅從之。鳳尋東還。

太祖即位,歷吏部郎、給事黃門侍郎、行臺尚書,甚見禮重。太宗世,與崔玄伯、封懿、梁越等入講經傳,出議朝政。世祖初,以舊勳賜爵平舒侯,加鎮遠將軍。神䴥元年卒。



(魏書24-2)




あっこの人案外若い……なんか勝手に元老っぽく感じてたけど、死亡で七十歳だとしても、劉裕と同年代とかになるのか。それにしても、ここに書いてあることをそのまま拾えば「苻堅は拓跋については制圧するつもりがなかった」っぽい印象にもなります。いやどうだろ、「もう滅んじゃったからこそ、拓跋の血統を重んじる」なのかしら。慕容や前涼に較べれば従属してたと思うし、あと正直苻堅が雲中を運営できる気って正直しないんですよね。良くも悪くも山地の王的なイメージがある。


ともあれ、思った以上に北魏建国以前のことしか記事がありませんでした。もっと宮中でどんな活躍したのかとかも知りたかったんですが。何せわたし、小説劉裕で無駄にこのひとの存在感でかくしてるんですよね。だって好きなんだもの。

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